第二章 12 蟲毒5
「はあ」
俺のため息に目の前で膝間づくシヘンとデコイは一瞬体をピクッと動き、ごくりと息を呑んだ。
「何故、気付かれた?」
俺は外の様子を結界の面に移して座りながら眺めていた。そこには、フロンティアの王、カラワラがいた。
「警戒を怠ったか?」
俺はデコイを睨み付けた。若き才能の溢れる者たちを結界に閉じ込めて監禁するに辺り、助けを呼ばれないようにデコイにシックスセンスを使わせていたからだ。
「否、十分に。ただ、いくら、ユグドラシル、カラワラから離れていたとは言え、俺ができた精一杯は数秒のシックスセンスの使用停止、それも、デストロイ様の力を借りてです。決して、全力を尽くせなかったわけではありません」
「シヘン。俺のストックはどれほどある?」
「千人ほどです」
「そうか」
ここ数日、集団を徐々に大きくしているゼウスたちの影響で自身のレベルアップは思ったよりも進まず、悪戦苦闘をしていた。このままでは、カラワラを殺し、この星を滅ぼすよりも先に、ゼウスたちに殺されそうだ。
「新規は見込めない。カラワラの裏をかくことは難しい上に、ハイリスク。やはり、第二段階に進むしかないか。シヘン」
「ハッ。何をするおつもりで?」
「半分を多重結界のために使え。残りは、デコイ。お前の出番だ」
「なあ、この結界。どれほどあると、思う?」
「分からんな。先が見えん。どれほど破ってもキリがない。俺たちを外に出さないことだけに特化しているのも、これだけ数があれば厄介だ」
「みたいだね。僕のコピーでも、ゼウスの順応で一枚一枚、結界を破るのはしんどいからね」
「フン。所詮は、俺のコピーなんだ。俺の順応の方が遥かに性能が高い。お前が一枚を破る時間で俺は十枚以上は破っている」
「ははは。ってことだから、早く作ってくれない?、コキュートス」
「僕たちだって早く作りたいさ。でも、ハガネの体をもっと知らなきゃ、最高の武器は作れないんだ」
「俺だって、こんなの、早く終わらしたいさ。もう、お腹に入らない」
ハガネは机の上に置かれているいろんな料理の目の前にして、椅子の背もたれに大きく重心を駆けて膨らんだお腹を見ていた。そのお腹も鉱石でできているため、凄く不思議だ。
「とは、言っても。最高ではなくても、サポート品が欲しいには欲しいな。さすがの、僕も疲れて来たよ」
「敢えて」
俺が小声で呟いたため、三人は俺に視線を向けた。
俺の目の前では、カナデが今も綺麗な透き通る歌声を響かせていて、皆を落ち着かせていた。だから、俺の声が聞こえにくかったのだ。
「敢えて、結界を破るのを中断して、自己鍛錬に時間を使うか?」
三人が信じられないという目で俺を見て来た。実際にそう言おうとしれいたのか、開いた口が塞がっていなかった。
「聞け。確かに、今までみたいに、他の仲間たちを途中途中で回収できるかもしれんが、そろそろ、向こうも状況を動かすかもしれん」
「それでも、助けに行くべきだろう。僕たちにはその力があるんだから」
「その気持ちは俺もある。だが、敵が一人じゃなかったら?戦闘が得意な奴がいて、そいつにも、学習したデータを与えていたとすれば?」
「何が言いたい?」
「俺たちがこんな調子で結界を壊し続けて、疲れて、休憩をして、心と体を落ち着かせている時に現れたら?そんな奴がぞろぞろと出て来たら?」
三人は下を向いてそれぞれに考え出した。
「まあ、全て、可能性の話であって、そこまで、深く考える必要は全くないんだがな。だが、こんなことをしでかした、こんなことができた、デストロイに何の策もないとは思えん」
三人は尚も顔を下に向けたままだったため、俺は一呼吸置いてから少しお道化た調子で言った。
「希望はある。おそらく、この実験はもっと、フロンティアからサンプルを用意することを前提に進めていたものだろう。これは、余りにも弱い、デストロイから想像できるがな。俺が言いたいことは、つまり」
俺は酒を一口含んでから言った。
「フロンティアに、俺たちのことがちゃんと伝わっている」
「うーん。ホームズはワトソンのために時間を使わないといけないからな。それに」
俺は目の前の広大な空き地に思わず首を捻った。
作物がすっかりと無くなっていたのだ。この広大な自然の中でポツンとして無くなっているのはこれまでに、いくつか見つけていたのだが、デストロイに繋がる決定的な手掛かりは特に無かった。おそらく、デストロイの被害者によるものだろうと推測をしているのだが」
「まあ、ホームズとて、すぐに来ないとオーラの残滓から逆探知はできないだろうが。せめて、このサインだけは途切れないことを願わないとな」
「ワトソン。我慢でありんすよ」
私は目を瞑り、瞑想をしているホームズに抱き着こうと、足を大きく一歩踏み出そうとした時、ネキが私を後ろから抱きしめて止めた。
私は思わず唇を尖らせてネキを睨んだ。
「どうして、睨まれるのか・・・。ウミの元に戻っておくんなし」
「ごめんね、ネキ。ワトソンがどうしてもって、言うからさ」
ネキはママを少しジト目で睨んでから、座り直して私を太ももの上に乗せた。
「でも、ここは、凄ーく落ち着くからさ」
「うんっ!」
私がホームズが頑張っているのを分かっていて、ここに来た二番目の理由がこれだ。
あっ、一番はもちろん、ホームズと触れ合うこと。
今、リビングでは、ネキの領域が敷かれているのだ。この領域の中だと、心が落ち着き、自然と体の力が抜けてリラックスできるのだ。
だから、ワトソンはネキのシックスセンスは凄く好き。
「まあ、ですが、わっちたちが五月蠅くしていても、ホームズは気付かないと思うでありんすよ」
「じゃあ」
「ダメでありんすよ。ホームズのことを思うなら、今はダメでありんす」
「むうー」
ネキは私の頭を撫でながら優しく止めた。
「でも、こうして、ホームズを見てるとなんか、凄い」
私の視界に映るホームズの纏うオーラは徐々に洗練されていて、それは、日に日に感じていることだけど、ホームズが強くなっている原因は私が耐え切れなかったことだから、何が凄いって一言でハッキリ言えないけど
「凄い」
私はネキのおっぱいの重圧を頭に感じた。ネキは私の頬を握ると笑った。
「顔が固くなってたよ、ワトソン」
ママは私、じゃなくて、ネキの大きなおっぱいに視線を向けながら私を抱っこして引き寄せた。ネキは少し、寂しそうにして、私を見ていた。
だから、私はママの腕から逃げてネキの元に戻った。
「おっぱいは嫌いじゃない」
私はママの胸に指を指して再びネキのおっぱいを頭で感じた。
「むう。良いもんね」
ママは唇を尖らせて私を見ると少し悪い顔をしてオーラを纏いながらホームズに近づいた。
「あっ」
私は思わず声を出した。
そして、ネキから放れようとしたが、ネキは放してくれなかった。
「ズルい」
「へへえ」
ママは難なくホームズを持ち上げ太ももの上に乗せた。
「ウミのシックスセンスはズルいでありんすね」
ホームズはママに持ち上げられたことなど、全く、気にしていなかった。
だってママは、ホームズが感じるノイズを失くしたのだから。
異変が起きたのは、俺たちが順番に睡眠を取っていた時だ。
俺がサキューバスと交代でいよいよ眠ろうとした時にたくさんの、魂を燃やしたデストロイが現れた。
「マズイ」
デストロイが何かをしようという、気の起こりを感じた俺は急いで、上から三番目の両手をグーにして突き合わせた。
俺を中心に仲間を勢いよく引き寄せたのだ。
だが、遅かった。徐々に結界が一人ずつに敷かれようとしていたのだ。
「ゼウス」
サキューバスはデストロイを殺しに行った。だから、俺は仲間たちを守ることを優先することにした。
「変速」
俺は俺の動くスピードを最大限にして、一人一人個別に結界で敷かれて分けられるのを急いで止めに入った。だが、全てを救い切ることができなかった。
「「「時間との勝負だ。無理やり情報を盗み取るぞ。覚悟して置け」」」
たくさんのデストロイは邪悪な笑みを顔に浮かべて高々に嗤った。




