表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第二章 未来は僕の手の中に
35/40

第二章 11 蟲毒4

 そいつが現れたのは俺にとって好都合だと思った。だが、これは決して好都合でも何でもなかった。

 ガルルルルルル・・・・・・。

 低く唸る獣の鳴き声。だが、四足歩行ではない。二足歩行だ。獣化していたのだ。

 俺は気配を消して元から鋭かった目付きを更に鋭くしてタイミングを伺っていた。

 そいつは、今回の結界での監禁を行った張本人だから。

 そいつは近接戦闘がおそらく、得意ではないから。

 だから、気が緩んだ瞬間に一瞬で殺そうと考えていた。

 普通に考えると正しい。間違ってはいない。

 ただ、そいつが、悪辣だっただけで。




 一回目。

「俺の手でお前らを殺してやろう」

 俺はそいつが現れた時、マズイと判断した。直観的にこいつが今回の張本人だと確信した。だから、姿を現した時、新たな結界を作ろうとしていたそいつの体に爪を立てて毒を流し込んだ。

「フン。今回は失敗か。だが、良い。次だ」

 そいつは、意味深な言葉を残して消えた。

「チッ」

 俺は違和感を覚えた。だから、次から全力で掛かって一瞬で殺し切ることに決めた。




 二回目。

 一時間後に現れた。そいつの動きは少し、洗練されていた。

 この短時間での成長としてはおかしいほどの速さだ。

 だから、

「嫌な予感が当たった」

 俺は、今度は一瞬で殺した。だが、はっきりしたことがある。

「誰か、結界を破ってくれる人がいないと、早く情報を共有しないと、マズイことになる」

 俺は確信した。だから、俺が守っている仲間に少しずつで良いから、結界を頑張って破るように指示を出した。




 三回目、四回目、五回目・・・・・・・・・・・・・・・、五十回目。

 少しずつだが、確実に強くなって来ていた。俺の全力に差し迫ろうかとしているほどに。

 俺は、いつも初手で決着を着けるようにしていた。それは、そいつが学習しているからだ。そのため、初手で仕留めることができなくなった時が一番マズい。俺の手札が無くなるからだ。

 だから、もしもの時に備えて、俺は思考を止めていなかった。

「かなり、強くはなって来ているが、そろそろ、お前の情報も欲しい。故に、次で決める」

 そいつは俺と戦うこともせずに宣言して俺に殺された。




「俺は、ただでは転ばんぞ」

 おそらく、最後になるであろう戦いに向けて、俺は着々と準備していた。




 僕は生まれてから、ずっと、命の保障が欲しかった。だから、いざという時に雷の如く速く動いて逃げていた。なのに!

「こんなふうには使いたくなかった」

 僕はそいつの首を手刀で斬った。

 もう、50回目だ。

「よくよく、やってくれたね、エレク」

「よしてくれ。僕がこうして、思い切りできているのも、サツキ君のおかげなんだから」

「まあ、そうだね」

 サツキ君はそう言うと空間を曲げた。僕の視界の先、歪んだ空間にはたくさんの仲間がいた。

「まあ、外に出られないのは仕方ないさ。サツキ君が気にすることじゃあない。だから、新たに仲間を探してるんだしね。行こうか」

「ああ」




 五十一回目。

 とうとう来てしまった。俺は目の前の光景を見て思わず肩をガックリと落とした。そいつは三人いた。

「やはりと言えば、やはりなんだが、やはりか」

 俺は大方予想が当たっていたことに内心苛立ちが積もったが、同時に安堵もしていた。

「やはりと言えば、やはりなんだが、やはりか」

 さっきのやはりは、そいつが複数いること。そして、今回のやはりは、複数いるってことは、ホントに監禁されているグループが他にもあるってこと。

 この希望は凄く力になる。

 俺は一番近かったそいつに爪を立てて刺すと毒を流し込んだ。一人目のそいつは即死した。だが、その瞬間に残りの二人が新たな結界の面をスライドさせて俺を結界との間に挟んだ。

「「この遺体は回収させてもらう。さらば」」

 俺はこの瞬間、今までで一番の絶望を感じた。俺のデータを取られたら、この先に待つのは死しか無くなる。否、死しかないと分かっていて、そいつのレベルアップにギリギリまで付き合わされる。そうして、俺の全てを奪われてからの死しか待っていない。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」

 視界の端には戦闘が得意ではないのに向かって行こうとしている仲間がいる。

 やめてくれ。

 お前らが死なないように俺は選択肢を狭めたんだ。だから、やめてくれ。

 俺は、動けずに仲間が死にに行くのを何もできずに見るしかない。

 俺はこの時、何もできないもどかしさ、辛さ、焦燥、憤慨を初めて知った。

「何もできないのが、こんなにも辛いことだとは思わなかった」

 俺はせめて、目を背けまいと仲間の死を見守ろうとした時、空間が歪んだ。

 その空間の歪みはそいつらによるものでは無かった。大きな空間の歪みだった。

 そいつらも慌てていた。

 その大きな空間の歪みから雷の如く速い一閃が、目で追うことのできない光がそいつらの首を一瞬で斬った。

「結界が揺れた形跡があったから、来てみたら、丁度良かった」

 金髪ロングの男は俺たちを見て心から安心した顔で胸を撫で下ろしながら言った。

 俺は凄く、凄く凄く心の底から安心した。

 だが、

「「「貴様は厄介だ。俺の計画の進歩が遅くなる。唯でさえ、新しく人を集めれていないと言うのに」」」

 大きく空間が歪み大量のそいつが現れた。金髪ロングの男を殺すために。

 だが、その瞬間に俺たちの足元の空間が歪んだ。金髪ロングの男を除いて。

 俺は無理やり体を前屈みにして手を付いて空間の歪に入らなかった。

「おい、君!」

「いくら、お前が強くてもこの数は無理だ。奴らは死ぬのを躊躇わない!だから、来い!」

 金髪ロングは俺が何か伝えようとしているのを感じて一瞬で近くに来てくれた。

「名前は?」

「エレクだ」

「そうか、エレク。俺はショワだ。何秒、息を止められる?」

「この状態だと、一分ほどだ」

「十分、否、十二分だ。奴らのギリギリを走ってくれ」

「何をする気だ?」

「こんな状況のためにずっと準備してたんだ。俺を乗せろ」

「・・・分かった」

 俺の指示に従い、エレクは俺を負ぶって目にも止まらぬ速さで走ってくれた。

 だから、俺も準備して来た仕掛けを躊躇なく使った。

 腕に軽く傷を付けて血を流した。あとは、その血を気化させて空気中に蔓延させるだけ。それだけで、次々とそいつらは死んで行く。




 最初の内はそれで、良かった。だが、エレクが限界を迎えた。

 一分半は持ち堪えてくれた。

「チッ!もう、限界か。来たところに戻ってろ。俺が危なそうだったら無理やり戻せ」

 エレクは空間の歪みに落ちた。

「っとに、追加投入は無しだろう。って言うか、俺一人になったから、もう、襲う原因無くね?」

「「「フン。笑わせる。貴様がギリギリになるまで、行う。こんな隠し玉を持っていたんだ。当たり前だろう?」」」

「はあ。なんとしてでも、データが欲しいか。俺の腕の血、なんだろうなあ」

 俺の視界は少しボヤが掛かっていた。当たり前だ。血を流し過ぎた。それに、

「もっと、蔓延させるためにも、もっと、血を流さないと」

 エレクの力を借りて近距離で毒を吸わしていたため、少ない血でも良かったが、エレクが一度、離脱したため、話しが変わって来るのだ。更に、

「結界の範囲を広げるとか、反則だろ」

 空気の入れ替えついでに、結界の範囲を広げられているのだ。これが、俺たちを、かなり、苦しめていた大きな原因だった。

「まあ、ホントに危なくなったら、先に助けてくれるだろう」

 俺は血にオーラを纏わせた。

「かなり、操作が難しくなるだろうけど。やるだけ、やって見るか」

 俺は血の塊を一人にぶつけて貫いた。

「蝕め。そして、蝕め」

 死んだそいつの血が抜けてその血がそいつらに向かって飛んだ。芋づる式にどんどんと殺して行った。

 だが、血とは違う理由で視界が、かなり、ぼやけて来た。即興で、そして、集中力が、かなり、掛かる他者への感染は俺の体を確実に蝕みギリギリの状態にした。

「マズイ。意識がある内に一桁台にしないと、エレクが戻って来た時に大変だ」

 俺は最後の力を振り絞って次々と増えるそいつらを殺して行った。そうして、殺し続ける中、いよいよ、ホントに意識が途切れそうになった時、空間が歪んだ。

「よく、頑張った。交代交代で頑張ろう」

「ハッ。頼りないな」

「救護班が結束してる。なるべく早く治してくれ」

 だが、俺たちの結束を嘲笑うように声高々とそいつらは語った。

「「「ハッ。ようやく、来たか。お前に最悪を見せてやろう。お前のせいで、データ量が減ってしまう故な」」」

 先ほどよりも多い量が現れた。

「なあ、ショワ君。とりあえず、逃げるか?」

「だな」

 俺たちが逃げ込むための空間が歪むのと、そいつらが作る結界の面がスライドして向かって来るのは同時だった。

「っ!?」

 時間との勝負。どちらが、先に逃げることができるか。この勝負はーーーーーーーー

 俺たちの負けだった。

 だが、俺たちを逃がさなかった結界が破壊された。

「いやあ、危なかった。ねえ、ゼウス」

「フン。カナデ。歌え」

「あいあいさー!」

 カナデと呼ばれた女は弦楽器を抱え、服の襟にマイクを付けていた。そして、俺たちが思わず耳を塞ぐ気持ち悪い不協和音のメロディーを奏でた。その歌声は逆に意識を奪われるほど、綺麗で透き通っていた。

 俺とエレクが意識を失いかけた時、ゼウスに話し掛けていた男が瞬間移動をしてやって来て俺たちにブレスレットを掛けた。見れば、今、助けに来てくれた者たちは全員、体のどこかに、同じようなアクセサリーを掛けていた。

 俺たちはアクセサリーを掛けると、不協和音が聞えなくなり、綺麗な歌声だけが聞えた。体が急速に治癒されて行くのを感じながら、耳を傾けた。

 気が付くと、そいつらは一人残らず、体を崩壊させていた。

 そして、遂には、援軍は一人も来なかった。

「なんて、集団なんだ・・・」

「全くだ、エレク」

 俺は頼もしい集団を見つめていたら、自然と眠ってしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ