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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第一章 強く生きたい
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第一章 03 魂を繋げる女たち

「眠ったか」


 ゼウスはツリトとカシャが眠ったのを確認するとゆっくりと夜空を眺めた。


「天狗の未来予知が変わっている。一体何が起きようとしているのだ」


 天狗。河童に代々と伝わるお面を嵌めた人のことを指す。今の天狗はカシャの母であるカーである。天狗は対象を決めて明るい未来を見る。つまり、明るい未来ではなかった場合は未来を見ることはできない。最近、見ていなかったとは言え、ツリとリットが死ぬことになったのは余りにも不自然だった。


「この世界の外から未来を変えている輩がいる。一層気を付けねば」



 カンッ



 地面の小石をに底の長い下駄を音を立てて着地した女が現れた。長い銀髪の髪は簪で結い、豪華な着物を身に纏った紫色の瞳をした可愛らしい顔をした女性だ。


「今回のことは悪かったでありんす。明日、わっちのところにツリトを連れて来てなんし」

「貴様は・・・」


 どうして対応をしなかった?


 ゼウスは喉元まで声が出掛けて、何とか自制した。女性はゼウスが言いたいことを察した。


「わっちたちが対応しなかったのは、オーラ量的に大した超獣ではないと判断したからでありんす。わっちたちの判断が誤りでありんした。ですから、ツリトをワルキューレの村に連れて来ておくんなんし」

「排除運動が起こると思っているなら、このゼウスが必ず止める」

「そんなことは気にしてではござりんせん。わっちは、ただ、ツリトに申し訳ないと思いんして」

「そうか。なら、二人を連れて行け。このゼウスを不満に思っているワルキューレたちは少なからずいるだろう?」

「わっちたちは気にしてござりんせん。ワルキューレの力は、シックスセンスはそう言われても仕方のないものでありんすから」

「ネキ。おそらく、ツリトはワルキューレの力には興味を示さんぞ」

「・・・そうでありんすか。ですが、わっちたちは、わっちは、ツリトが望むならいつでも受け入れる準備はできてるでありんす」


 ネキは地面から生えたゼウスの手の上で寝ている二人を片手でそれぞれ持ち上げて胸に抱いた。


「そうか。今回のことは悪かった」

「ですから・・・」

「このゼウスの責任だ。このゼウスが判断を誤ったからだ。もし、判断分子がワルキューレの村に近づくことがあれば、全員、捕まえる」

「わっちは、わっちたちはゼウスが悪いとは全く思ってはありんせん。ゼウス。どんなに強くても人の自由は縛ることなどできないでありんすよ。それに、ワルキューレが殺したい者たちを殺す女と言われても仕方のないことでありんす」


 ネキは瞬間移動をしてエリアフォーインのワルキューレの村に帰った。




「んあ?」


 ツリトが目を覚めた時、柔らかいおっぱいが目の前にあった。ツリトは思わず視線を釘付けにされた。


「んん」


 カシャが目を覚ました。カシャは上半身を起こして目を擦ると隣のツリトを見た。ツリトはネギのおっぱいに視線を向けているのがだんだんと分かって来た。だから、視界がクリアになった時、カシャは体を横にしてツリトの両目を塞いだ。


「どこ、見てるの!」


 ツリトはカシャの声を聞いて冷静になるとここがどこかを確かめようと思った。だから、ネキから放れようと抱擁されている腕を潜り抜けようとした。


「ぬん」


 ネキが目を覚ました。まだ、目を擦っているが上半身を起こしてツリトも抱いていた。ツリトは必死にネキの体を押して放れようとした。


 カシャに殺される。


「んん。暴れないでなんし。・・・んん、一緒に温泉に入っておくんなし」


 ネキは下着姿のまま瞬間移動をしてツリトとカシャを温泉に連れて行った。




「で、誰?」


 ネキがツリトを中々放さず、カシャが必死にツリトを取り返して腕をがっしりと押さえて抱き着いて落ち着くとツリトは向かい側に座るネキに質問をした。


「ネキでありんす」

「ゼウスは?」

「わっちがツリトを育てるでありんす」

「ツリトはカシャと一緒に暮らすの!」

「ふふふ」


 ネキは口に手を当てて上品に笑った。カシャはツリトの顔を覗き込んだ。


「ツリトはカシャと住みたいよね!、ね、ね!」

「お、おう」


 ネキ。もう、カシャのことを理解してるなあ。


「冗談でありんす。ですが、ホントにわっちはツリトと一緒に暮らしても構わないと思ってるでありんすよ。カシャちゃん、カシャちゃんも一緒でも構わないでありんす」

「ツリトはカシャと一緒に・・・」


 カシャはツリトが言っていた言葉を思い出した。



『僕ね、僕ね、悲しい奴って言うふうにね、見られたのが凄く嫌だったんだ』



 だから、カシャは言葉に詰まってツリトを恐る恐る見た。ツリトは顔を俯かせて少し震えていた。


「はっきりと言うでありんす。ゼウスとわっち、どっちと一緒に住みたいでありんすか?」


 ツリトはジッと水面をに移る顔を見た。目が泳いでいるのを見た。改めて母と父がこの世にいないことを実感したのだ。


「不安にさせてしまったでありんすね」


 ネキは軽く微笑むと立ち上がってツリトの前に移動した。そしてツリトの頬を両手で摘まんだ。


「笑うなんし。領域展開」


 ネキの頭には光る天使の輪っかが浮いて乗っていた。そして、ツリト、カシャ、ネキだけを囲んだ小さな半球の中にいた。三人の心は素直になり、溶かされて行った。だから、ツリトの目からは大量の涙が流れてカシャはその涙を見て悲しくなって涙が流れた。ネキは二人の涙を見て心がキュッと締め付けられて思わず一筋だけ涙を流した。そして、二人を一緒に抱きしめた。


「寂しかった、悲しかった、辛かった、泣きたかったでありんすね。主さん、ツリト、感情を解放しておくんなし」

「僕ね、僕ね。負の連鎖にはなりたくなかったんだ。僕が皆の目の前で泣くと皆が心配して寄り添ってしまうから。可哀想な奴って見られるのが凄く嫌だったんだ。だから、ずっとずっと我慢して、ホントは誰にも見せたくなんかないんだ。この感情は僕だけのもので僕にしかないものだから。僕ね、僕ね、使命感だけで動いてたんだ。でも、まだ、終わってないから泣けなくて、ずっとこの感情に蓋をして来たのに。僕の感情の蓋を開けないでくれよ。頼むから、頼むからさあ。ねえ。ねえ。ねえ!・・・頼むよ」

「ホントに、ゼウスはやはり、心のケアが下手でありんすね。主さんたち、暫く、わっちのところで住みなんし」

「ツリト」


 カシャはツリトの心を溶かすことができなかったのが凄く悔しくて、悲しくて、辛くて、それでいて、今のツリトに何も話せなくて落ち込んで、だが、二度とツリトに感情に蓋をさせないと決意した。




「で、この子がツリト君なのね」


 机を囲んで朝食後の温かいお茶を飲んでいた。ツリトはカシャとネキの間に座っていて机を挟んで向かい側に一組の家族が座っていた。今、ネキがツリトの紹介を終えたところだった。


「そうかそうか。じゃあ、自己紹介をしようか。俺の名前はソーだ」

「私はナンス。ワルキューレよ。で、この子がワルキューレ一族の中でもかなり強くなると言われていて、名前を」

「ナス!」

「って言うの」


 ツリトとカシャは同じぐらいの大きさのナスを見た。ナスは目を丸くしてツリトを見ると軽く微笑んで父のソーを見た。


「俺がワルキューレの力を利用して強くなった結果さ。俺は鬼からワルキューレの力を使って竜人、超人の力を身に着けたのさ。そして、ナスは俺の血を受け継いでるから鬼と竜人、超人の力を保有し、そして、女だから、ワルキューレの力をも得ている。だから、かなり強くなると言われているんだ」


 ツリトとカシャは開いた口が塞がらなかった。後天的に竜人と超人の力を身に着けると言うのははっきり言って自殺行為に等しいからだ。それは、お互い両親から止められている。だから、自殺行為を成し遂げたワルキューレの力と言うものが気になったのだ。


「ちゃんと話して上げておくんなし」

「はっはっはっはっは。教えてあげよう、ツリト君、カシャちゃん。それぞれの特徴を語ろう。まずは、鬼だが、鬼は鬼花を食うと誰でもなれる。ただし、多大な苦痛を伴い最悪の場合死ぬからあまりお勧めはできないけどね。その苦痛を乗り越えると超パワーを得ることができるんだ。鬼神は鬼花を生まれてから一つ食べて角を二本生やして、千里眼を獲得した人のことを指すんだ。ああ、角はパワーを蓄えるために生えるんだ。だから、一本生えるだけでも大変なんだよ」


 ソーは赤色の髪に生えている二本の金色の角に触れた。少し照れくさそうにしていた。


「次に超人だ。まず、超人の特徴を語ろう。超人の体は言ってしまえば肉体が超弾力なだけだ」


 ソーは机の上に置いてあったサクランボを一つ、手に取ると右手の人差し指だけで挟んだ。そして、左手の人差し指で軽く押すと放した。すると、サクランボが十メートルほど真上に弾かれた。


「マジか!?」「うわっ!?」


 ソーはサクランボを歯でキャッチすると噛んで種を吐き出した。


「この超弾力の体を手にれるために人間は最初何をしたか?答えはゴムを体と融合させた。だが、これには一つ問題があって、骨まで柔らかくなってしまう。だから、人間は跳び貝に目を付けた。跳び貝は身はオーラを纏わないと噛み切れないほどの弾力があり、貝殻はかなり固く強度があるからね。これにより、今日の超人の基礎ができた。では、今の超人になるために何をしたか?答えはネズミだ。オーラを纏わずにかなりのスピードで逃げ回るネズミがフロンティアにはよくいるだろう?あのネズミは筋密度が生物の中でずば抜けて高かったんだ。超人はそのネズミを融合することにより筋肉の弾力性を上げて超弾力を手に入れたんだ」

「でも、ソーは・・・」

「そう。ツリト君の言う通り、鬼の筋力も持っている。えぐいって奴さ。ついでに言うと竜人の力もね」


 ソーは微笑むと右手に黒色の竜鱗を纏った。


「そして、最後に竜人。竜人はコモドドラゴンに近接戦闘が得意な生物を食わせ続けたと言われている。中でも特徴的なのは龍人とは違って竜人は一種類の生物をたくさん食わせたことにある。肉体を強化するシックスセンスの持ち主の生物をね。そのおかげで、肉体の強度がかなり高いんだ。その中でも強度がかなり高い竜を神竜と言うんだ」

「うん。それぞれの凄さはちゃんと分かってる。でも、鬼、竜人、超人、この三種類の力を使うことを可能にしたワルキューレって何なのさ?」


 ツリトはソーに尋ねた。すると、隣に座っていたネキがカシャの気がソーに向いているのを良いことにツリトを持ち上げて太ももの上に乗せた。そして、水掻きの大きい手でツリトの胸を叩いた。



「ワルキューレとは魂を繋げる女たちのことを言うでありんす」


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