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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第二章 未来は僕の手の中に
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第二章 04 カラワラの本心

「ただいま」

 カラワラは家に帰って、帰る前から違和感を覚えていたが、顔を顰めた。ネキの銀髪の髪の毛がグチャグチャだった。目の前にはホームズが走ってやって来ていて、ワトソンはネキに押さえつけられていて頭をグリグリされていた。

「おかえり。もうちょっと待ってて」

 ウミはカラワラを視界に入れると笑って台所に戻った。火の魔晶石にオーラを流して炒めていた。

「おかえり、父さん。ちょっと僕と腕相撲しない?」

「ん?ああ、構わないよ」

 カラワラはホームズに手を引かれながら床に寝転んだ。ホームズも床に寝転んで肘を付いていた。床は鉱石でできていて、並大抵のことでは壊れない。

「どうしたんだ、急に?」

「いや、大したことじゃないんだけど、試してみたいことがあってさ。本気で来てよ、最初から」

「ああ。もちろんだ」

 どうしたんだ?俺に本気で勝つつもりなんだろうが・・・。適応と意識認識の拡大。これを利用するとすれば、力の向きを逆にする?否、そんなことをわざわざ試したいか?ネキからレアオーラのことを聞いたとすれば、単純に自分の全力を知りたい?少し捻くれた考え方をすれば、床を曲げて勝負する?

「さん、父さん、父さん!」

「ああ、悪い。少し考えてた。さあ、やろう」

 ホームズとカラワラは視線を合わせてオーラを纏った。カラワラはホームズの腕を怪我させない程度に本気を出そうとオーラを身体能力強化型の原子を多めにして纏った。ホームズは身体能力強化型と他者完結型のオーラを半々で纏っているようだった。

「もう、レアオーラを使い熟しているのか?」

「うん。でも、まだまだ、だけどね」

「十分に使い熟しているじゃないか。どうして、そんなに不満そうなんだ?」

「ワトソンが『悟り』を開いた」

「っ!?」

 カラワラは思わず、ネキを見た。ネキはワトソンの両頬をつねりながら視線に気付くと頷いた。

「マジか」

「マジ。でも、僕は気にしないことにしたんだ」

「気にしない?ホームズらしくないな。何があったんだ?」

「ちょっとね。まあ、始めようよ。レディー」

「「ファイト!」」

 ドンッ!

「有り得ない。どういう・・・」

 カラワラは普通に力負けをした。筋力はもちろん上。オーラも身体能力強化型のオーラを二割ほど纏って十分勝てる力量差だった。だから、最初、信じられなかった。だが、すぐに種は分かった。

「俺のオーラに干渉したのか?」

 ホームズは握っている手を強く握って笑った。

「正解。どう?良い感じでしょ?」

「ああ。ビックリした。まさか、ここまで、ホームズができるとは思わなんだ。今日知ったばかりのことを、良くぞここまで仕上げたな」

 カラワラはホームズの腕を勢いよく引きながら、おっさん座りをして、組んだ脚の隙間にホームズを乗せた。

「まあ、僕は常に最大値を出せるからね」

「そう言うことか。やるなあ」

 カラワラはホームズの髪の毛をクシャクシャにしてネキを口角をわざとに上げて見た。

「どうしたんだ、それ?ホームズとお揃いだな」

 すると、両頬をつねられているワトソンが自分から髪の毛をクシャクシャにした。カラワラは思わず目を丸くしてワトソンを見た。

「ホームズ!ネキの髪の毛を解いて!」

「もう、されているでありんす」

「ふふーん。ホームズ!」

 ワトソンはホームズに向かって一直線に飛んだ。そのまま、キスをしてホームズに抱き着いた。

「へへーん」

 すっかり上機嫌になった。

「クッ。ネキを弄るポイントが無くなった」

「カラワラ。わっちが割って入る隙がありんすか?」

「好きが生まれたら入れるんじゃないか?」

「今、違う意味で言いんしたね?」

「さて、何のことやら。だが、ホームズの思考形態が少し変わったか?前だったら、勝負事は、相手にも全力を出させて勝負しようとしてたはずなんだが・・・」

「ワトソンのことで少し劣等感を抱いていたでありんすから、力は使い方でありんすと言いんした」

「なるほど。確かにそれは大事だな。戦い方の幅が広がる。で、どうだ?進捗は?」

「進捗?」

「ホームズとワトソンの間に入れそうか?っ!?」

 ワトソンがカラワラの肌をつねった。不意打ちの攻撃に思わず痛がってしまった。カラワラは何もなかったかのように取り繕ってネキを見た。

「今ので分かりんしょう。無理でありんす。そもそも、ワトソンが『悟り』を開いた原因はわっちがホームズにキスしたからでありんすし」

「何!?やはり、ワトソンだな。最大の障壁は。ホームズ。ネキはどうだ?」

「ネキ?うーん。まあ、好きだよ」

「キィィィ!」

 ワトソンは力一杯にホームズを抱きしめた。

「もちろん、ワトソンの方がもっと好き」

 ワトソンはすぐにホームズにキスをした。その様子を見ていた二人は視線を合わせた。

「ワトソンはホームズにゾッコンでありんすが、ホームズもまた、ワトソンにゾッコンでありんすよ」

「みたいだな。だが、男の心などひょひょいのひょいですぐに変わるさ。変わらず誘惑し続けることができれば、きっと、今からでも間に合うはずだ。頑張れ、ネキ」

「諦めておくんなし。どうしても阻止したいのなら、誰か見つけるなんし」

「無理だ。フロンティアの王の子供と言うだけでもハードルが高いのにも関わらず、ホームズとワトソンがこの仲じゃあなあ」

「まあ、敷居が高すぎるのは間違いないでありんすね。一度、同世代の子たちの元に連れて行った時もワトソンがあの調子で碌な関係も築けなかったでありんすし」

「まあ、今はこの時期だ。もう少し経てば少しは変わるだろう」

「どうでありんしょう?ウミもそういう考え方でありんしたが、わっちはこのままでは危ない気がするでありんす」

「そうか、難しいなあ。視点を変えてみるか。ネキ、イケメンの情報を求む」

「わっちが知るはずがありんせん。それに、そっちの方がより茨で険しい道でありんす」

「だよなあ」

「別に良いんじゃない、ネキ、カラワラ」

 ウミがしゃがんでカラワラに後ろから抱きついた。頭の上に顎を乗せてネキを見た。

「ホームズがいれば、肉体的には問題ないだろうし。それに、ホームズが将来、フロンティアの王になるとすれば、必ずホームズの人間関係は広がる。ウミたちが思っているより、深刻じゃないんじゃないかな?」

「まあ、それは確かだが、生まれた子はバカ強いぞ。俺たちには想像できないほどに」

「まあ、そうだろうね。でも、そんなに気にする必要はないんじゃない。別に悪いことじゃないし。それに、大事なのは二人の気持ちだよ」

「ホームズはともかく、ワトソンはこのままだと、ホームズ一直線でありんす」

「うーん。まだ、二歳だよ。そんなに気にしなくて全然良いと思うな」

「じゃあ、それぞれのやり方で子育てするか。だが、ネキ。お前はホームズをちゃんと狙えよ」

「「は?」」

「当たり前だ。今の状況だと、ホームズとワトソンの間に入れるのはネキしかいないんだから。徐々にワトソンとホームズが一緒にいない時間を増やして行くためにも」

「それなんだけどさ、ウミは分からないんだよ。どうして、ホームズとワトソンの距離を遠ざけるためにネキを間に入れる必要があるの?」

「決まってるだろう。ネキに男馴れしてもらうためだ。どうだ?未だに独り身で良い感じになっている男もいない。増してや、俺とウミに甘えて見つける努力もしていない」

「ホームズは二歳の子供よ。男馴れなんてできないでしょ?」

「分からんぞ。成長して行くに連れてホームズも俺みたいに男らしくなるだろう」

「まあ、そうね。ネキ。ウミが探してあげようか?」

「結構でありんす。自分の将来の伴侶ぐらい自分で見つけるでありんす」

「それが、できていないから、違うな。そもそも、していないから、俺が介入しようとしているんだ」

 大人たち三人はカラワラの胸の中でホームズとワトソンがイチャイチャしているのにも関わらず、子育てのこと、ネキのパートナーのことを熱心に話した。だから、突然、ホームズが話し掛けて来たことに酷く驚いてしまった。

「ねえ、僕はちゃんと聞いてるからね。それと、僕の一番が揺らぐことは絶対ない」

「二番じゃダメでありんすか?」

「なっ!?そんな考え方があったか。確かに一番に拘る必要は無かったな。僕としたことが。今日、決めたばかりなのに、また、偏った見方をしてしまった。ん、どうした?」

「ホームズは一番に拘らないとダメ!」

 ワトソンはホームズにカラワラごと倒す勢いで頭突きして睨んだ。ホームズはワトソンの真剣な目に少し怖気つかされた。

「どんなことをやってでも一番を拘るの!」

「じゃあ、僕の心を一番に優先しても良いの?」

「ホームズの心を一番に、・・・今はダメ!だって、ネキともイチャイチャする気でしょ?」

 ワトソンはウミに持ち上げられてホームズと離された。

「ワトソン。ウミとはイチャイチャしてくれないの?」

「私はホームズが一番!・・・でも、ママともイチャイチャしたい」

「じゃあ、ホームズがネキとイチャイチャするのも良いんじゃない?」

「むう。その詰め方は卑怯」

「よしっ!ネキ。チャンスだ。ホームズの心を鷲掴みするんだ。絶好のタイミングだ」

「キィィィィィィ!」

 カラワラは腹の上で寝転んでいるホームズをネキに投げた。ネキはホームズを抱擁してキャッチした。

「まあ、それは、後。晩御飯を食べよ。ワトソン。今日は、ウミと一緒に食べようね」

「むう」

 ワトソンはウミに逆らわなかった。だが、口を大きく膨らませて少し暴れて抵抗はした。

「カラワラが面倒を見るでありんすか?」

「何故だ?今、距離を更に縮めないで、いつ、縮めるんだ?」

「父さん。必死だね。ずっと、心の声を聞いていたけど随分と本気だ。でもね、僕の一番は間違いなくワトソンだ。それは、絶対に揺るがない」

 カラワラとネキは驚いて思わず視線を合わせた。

「二番は?」

「母さん、ネキ、父さんの順番かな。でも、ネキのことはこれからグングンと好きになると思う。母さんよりも教えるのが上手だったから」

「そうか。チャンスがあるぞ、ネキ」

「そう、思えるでありんすか?わっちには全くないように思えるでありんす。それに、わっちの心は十分に満たされているでありんす」

「ずっと、居候になるつもりか?」

「居候にならせておくんなし。わっちは、今の生活が最高に幸せでありんす」

「そうか。だが、ネキはエルフの花を食べてしまったんだ。それに、この生活は永遠ではない。今の環境に甘えていると独りになった時、寂しいぞ」

「その時は、わっちも死ぬでありんす」

「できるのか?その死は幸せな死になるか?ネキが嫌う不幸な死にならないか?」

「っ!?嫌なことを付くでありんすね。ですから、魂の研究をしているでありんす」

「じゃあ、僕たちが死ぬ時に一緒に死ねば良いよ」

「ホームズ。そうでありんすね。その時は、魂を繋げさせておくんなし」

「うん。任せといてよ。じゃあ、早く席に着こう。母さんとワトソンが待ってる」

「だな」「ですね」

「ネキ。分かっているとは思うが、最終手段だからな。ちゃんと将来の伴侶を見つけろよ」

「今、できたでありんすよ。一緒に死んでくれる将来の伴侶が」

「頑固だな」

「カラワラの方こそでありんすよ。意思を変えていないでありんす」

「行くよ!」

 また、話し出したカラワラとネキにホームズは呆れて大声を出して会話を中断させた。

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