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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第二章 未来は僕の手の中に
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第二章 01 ワトソンは丁重に

 僕が止めなければならなかった。




「ホームズ!」

 ワトソンは僕に抱き着いた。僕が兄でワトソンが妹の双子だ。最近、二歳になったばかりだ。

「どうした?」

「へへへえ」

 ワトソンは僕の頬に自分の頬を当ててスリスリした。僕は嬉しかったし、気持ち良かったから、ワトソンを力強く抱きしめてスリスリし返した。

「仲が良いね、カラワラ」

「そうだな。俺はそろそろ行くよ」

「そう。無理しないでね」

「ああ」

 父さんは僕とワトソンの頭を撫でると家を出て行った。

「ウミも混ぜて」

「うん、ママ!」

「ホームズ?」

 母さんは僕の反応が無かったことに首を傾げた。だから、僕は「良いよ」と言ってすぐに笑顔になった。僕は気付いていた。毎日、父さんは人を殺していることを。いつも、血の匂いがするから。

「やった」

 母さんは僕とワトソンを同時に抱きしめた。




「ホームズ。じゃあ、いつも通り、頑張ってね」

「うん」

「頑張れ!ホームズ!」

 母さんは炎の魔晶石から炎を生み出した。僕はオーラを纏って、炎に触れた。

「うん。炎の熱さには適応できてるね。じゃあ、次だね」

 僕は触れている炎を一塊に捉えた。そして、粘土をこねるようにして、形を変えた。

「うん。意識認識の拡大もできてる。やるねえ」

 母さんは僕の頭を撫でた。ワトソンは少し離れて見ていたため走ってやって来た。僕は慌てて炎をギュッと小さくして叩いて消した。ワトソンは僕にダイブして抱き着いた。思わず、僕は倒れた。

「コラ。いきなりそんな勢いで抱き着いたら危ないでしょっ!」

 母さんは上からワトソンを持ち上げて少し眉間に皴を寄せた。だから、僕は慌てて浮遊してワトソンの頭をポンポンと叩いた。ワトソンは目にいっぱいの涙を溜めていた。

「ご、ごめんね」

「大丈夫。気にしてないから」

「ホント?」

「うん。ホント」

「ホームズ。甘やかさない。ホームズだって焦ってたじゃないの!」

「ホントに気にしてないって」

 僕はワトソンを力づくで母さんから奪った。ワトソンは僕の胸に顔を埋めて力いっぱい抱き着いた。

「ホームズ。ずっと、ワトソンをそうやって庇ってるといつか、しんどくなっちゃうかもよ?」

「大丈夫。僕が嫌なことがあったら、優しく変えていくからさ」

「ホームズ!」

 ワトソンは僕の胸から顔を離すと僕にチュウをした。僕はいつも通り、それを受け入れた。

「ホームズ。修業を再開するよ。ワトソン。ちょっと離れててね」

 ワトソンは無視してホームズに再び何度もチュウをした。母さんは僕に睨みを利かした。だから、僕はワトソンと距離を取って頭を撫でた。

「少し、待ってて。僕が来て良いよって言うまで来たらダメだからね」

「うん!」

「これは、マズいわ。ウミの言うことは全然、聞かないのにホームズの言うことなら何でも聞く。この先、どうしたら良いのかしら。どこで、間違えっちゃったかなあ」

「母さん。何を言ってるのさ?」

「何にもない。じゃあ、ホームズ。一歩も動かないでオーラを伸ばして、ウミに触れて」

「うん」

 ワトソンは僕に言われた通り、距離を取っていたが、少しずつ、近づいていた。僕は焦らされつつも余裕で達成した。ワトソンは走って、再び、僕に抱き着こうとした。だが、今回は母さんが先回りしてワトソンを抱きしめた。

「むう」

 ワトソンは口いっぱいに空気を溜めて母さんを睨んだ。母さんはそれを見て容赦なくコチョコチョしてこそばゆくさせた。

「ごめんなさいは?」

「うぅ、ごめんなさい」

 ワトソンは母さんに降伏した。その後も、おんなじようなことを繰り返しながら僕の修業が行われた。




「ホームズ。ワトソンの面倒を見ててね。昼ご飯作るから」

「うん。任せといてよ」

「へへえ」

 ワトソンは僕の腕をしっかりと抱いて肩に頭を乗せてべったりとしていた。僕は外に遊びに行こうと母さんに背を向けた。

「あ、ちょっと待って。あんまり、遠くに行かないこと。それと、三十分ほどでちゃんと帰って来ること」

「「うん」」




「ねえねえ、ホームズ。私も炎に触れてみたい」

「ダメ。僕はまだ、完璧に僕以外に適応させることはできない」

「むう。そっか。じゃあ、今日もデッカイ魚が跳ねるまで待つしかないね」

「ごめん。ワトソン」

「どうして、謝るの?ホームズは何にも悪くないじゃん」

「そうだね。じゃあ、代わりにって言ったらちょっと違うかもだけど、僕がデッカイ魚を跳ねさせるよ」

「ホント?」

「うん。ホント」

 僕とワトソンは大きな湖の前にいた。辺りには僕たちとおんなじようにデッカイ魚が跳ねるのを待っている人がたくさんいた。僕はワトソンの手を握って引きながら湖の中に手を入れた。

「僕はこの水を思うがままに動かせる」

 僕は水の塊を適当に斜め下に飛ばした。すると、大きな魚が跳ねて水飛沫を上げた。僕とワトソンは湖の畔にいたこともあってずぶ濡れになった。ワトソンは楽しそうに笑っていたけど、僕は内心穏やかではなかった。

 母さんに怒られちゃう。

「ワトソン。ちょっと温泉入りに行こうか」

「うん」




「ねえ、早く入ろう!」

「うん。ちょっと待って」

 僕はまず、温泉の水面上に浮いている落ち葉やら虫やらを温泉を意識認識の拡大で温泉の水で包み込んで適当に放り投げると、次に温泉の水を使って服の匂いや汚れを落とした。そして、後は、時間が許す限り空中で旋回させて乾かしていた。

 めっちゃ、疲れた。

「よし、入ろう」

「やった」

 ワトソンは僕の腕を思い切り引っ張って大きく吹き込みジャンプして温泉に入った。僕もワトソンに合わせて一緒に温泉に入った。

「楽しいね」

「うん。だね」

 はあ。オーラ量でバレちゃうかなあ。

 僕の内心は母さんに怒られないかでドキドキだ。危険なことはしないって約束の元、ご飯までの間、外で遊ぶことを許されている。だから、本来なら、デッカイ魚を刺激することはやってはいけないのだ。それを、破ったのは僕だから、不安でいっぱいなのだ。

「ホームズ?」

「何?」

「元気ないね」

「そう?」

「うん」

 ワトソンは僕に体をくるっと向けるとチュウをした。ワトソンは満面の笑みを浮かべた。

「チュウ、したかっただけじゃん」

「へへえ、バレた?」

 ワトソンは僕の腰に脚を巻き付けてまだ、しようとした。僕はワトソンに何をされるか分からないドキドキのため、上空で旋回させて乾かしている服が落ちそうになった。だから、僕はワトソンに自ら抱き着いた。ワトソンは僕からのハグに嬉しくなったのかジッとして動かなかった。僕は何とか、服を乾かすことに集中することができた。




「「ただいま」」

「お、か、え、り!」

 やっぱり、バレてたか。

「どうしたの、ママ?」

「ワトソン。何してたの?」

「えっとね、デッカイ魚がいるところで魚が跳ねるところを見てたらずぶ濡れになっちゃって。だから、温泉に入ってた」

「ホームズ。何をしてるの!」

「ご、ごめんなさい」

 僕は怖くて下を向いたまま謝った。ワトソンは何で怒られているのか分かっていないようだった。だから、顎に人差し指を当てて僕と母さんを交互に見ていた。

「まあ、良いわ。ご飯を食べましょう」




「ホームズ。ちょっと来なさい」

 昼ごはんを食べ終えて母さんが僕を呼びだした。ワトソンはデザートに視線を釘付けにされていた。

「ウミが言いたいこと分かるよね?」

「うん。ワトソンのことだよね」

「そう。ウミはホームズだけなら、今日のこと程度なら、何も言わない。でも、ワトソンと一緒の時はあんまりしないで」

「うん」

 僕のシックスセンスは適応と意識認識の拡大。はっきり言って滅茶苦茶強いし、凄い。じゃあ、双子の妹、ワトソンのシックスセンスは何なのか?まだ、分かっていないのだ。つまり、僕と同等、あるいは、僕以上のシックスセンスを保有する可能性が高い。

 僕たちがワトソンのシックスセンスで恐れているのはその強すぎるシックスセンスのために、器を、肉体が崩壊しないか、乱発してしまって、誰かに怪我をさせないか、もっと、突っ込んで言えば、僕に怪我を負わしてしまわないか、などなどだ。だから、何が拍子で起きるのか分からないため、なるべく、ワトソンが不安になる状況を作らないようにしようと言うのが共通認識としてあったのだ。

 これは、僕が生後半年で母さんと父さんと話し合って確認したことだ。僕は、生まれてから、言葉と言う情報を認識したくて、自然と適応と意識認識の拡大のシックスセンスをしていた。だから、生後一ヵ月で話すことができたし、歩くこともできていた。

 これ程までに、強いシックスセンスを僕が保有している以上、ワトソンに警戒するな、と言うことは無理な話だった。

「よろしい。じゃあ、ホームズもデザートを食べておいで」

「うん」

 僕はワトソンの元に駆けて向かい、隣に座った。ワトソンは恥ずかしそうに顔を赤く染めるとそっぽを向いた。僕は、何で?って思いながら、デザートを見ると半分食べられていた。甘い芋に蜂蜜を掛けたものの芋を半分と蜂蜜全てだ。

 母さんもゆっくりと歩いて机に近づいて来ていた。僕はワトソンを庇うために無理やり口いっぱいに突っ込んだ。

「そんなに急がなくても良いのに」

「ああう、あえああっあんあ」

「喉に詰まっちゃうよ」

 ワトソンはホームズが庇ってくれて嬉しくて服の中に顔を埋める勢いで抱き着いた。

「でも、おかしいわねえ。いくら、ホームズと言えど、そんなにすぐに食べれるはずないのに」

 ワトソンの体がピクッと跳ねた。そして、完全にホームズの服の中に顔を埋めて微動だにしなかった。

「ホームズ。ちゃんと計算してたわ。だから、ウミのを半分あげる」

「あっあ」

「まだ、詰まってるじゃない」

 すると、ワトソンが顔を出して母さんを涎を垂らしながら見た。

「ワトソンのはないわよ。だって、ホームズの食べたじゃん」

「えっ!?じゃあ、何で、そんな意地悪したの!」

「ホントは喜ばしてあげようって思ってたんだけど、ワトソンがホームズのを食べちゃったからよ。あーあ。折角三等分する予定だったのに残念ね」

「むう!」

 ワトソンは大きく口を膨らませて抗議した。だが、その隙に、ホームズだけを瞬間移動をさせて太ももの上に置くと、台所に置いてあったもう一つを瞬間移動をさせて目の前にやった。

「じゃあ、ホームズ。二人で仲良く食べよっか」

「うん」

 ワトソンは顔を赤くしてピクピクと震えながら我慢した。


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