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TSURITO-繋げる未来  作者: カバの牢獄
第一章 強く生きたい
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第一章 20 勝手な先祖

 シヘンがツリトに銃口を向けた時には、ツリトは内臓を既に治癒し終えていた。だから、シヘンがトリガーを引こうとした時にはツリトは完全に体を治癒していた。


 ツリトの治癒に速さの異常さはどこから来ているか?答えは明々白々ゼウスだ。ツリトは週の三回をゼウスと修行をしている。ゼウスとの修行において、内臓がグチャグチャになる、体の一部が切断される、体に穴が空くなどは日常茶飯事だ。ツリトが十歳の頃、魂と言う領域に到達した時から、ずっと、何度も何度もこれぐらいの攻撃ならば経験しているのだ。


 このゼウスとの当たり前の修行が、周りから見たら異常な修行がツリトを大きく成長させているのだ。


 だから、シヘンがトリガーを引こうとした時、ツリトは瞬間移動でシヘンの銃口の前にいた。




 シヘンがツリトにエージソンシリーズインフィニティーアルファーの『神速のライフル』を構えた時、勝ったと思った。慢心でも何でもない。ツリトはボロボロで口からも大量の血を零していたのだから。だから、トリガーを引こうとした時、全身に衝撃が走った。


 魂が揺れていただろう⁉︎意識を保てるはずない。増しては、何だ!その異常な治癒スピードは⁉︎


 シヘンはツリトの心臓、魂を撃つために咄嗟に銃口を広げた。だが、その瞬間に両腕を切断された。


 マズい!


 シヘンはすぐに両腕を治癒したかった。だが、それよりも二つ目の斬撃が問題だった。二つ目の斬撃が首元を斬ろうと迫って来ていた。


 シヘンには先手兎人に付与していたように超再生のシックスセンスがある。だが、その超再生を以ってしてもツリトの斬撃よりも速い再生ができるとは思わなかった。斬られながら治すことは不可能と判断した。


 先手兎人がやっていたように魂にオーラを保存して後からオーラを纏えなくとも超再生で治癒すると言うやり方も考えた。だが、それも実質不可能なのだ。理由は簡単だ。脳が全身に命令を出すからだ。もちろん、脊髄反射なら行けるのでは?と考えた。もっと言えば、魂が代行すれば良いのでは?とも考えた。だが、首から上が無くなった時、脳からの信号が受信できなくなった時、完璧なイメージができなくなってしまうのだ。先にイメージして魂に覚えさせれば良いと考えが浮かぶかもしれないが、この極短時間ですることは絶対できない。


 だから、シヘンは覚悟を決めた。



 デストロイ様のために死ぬのだから本望だ!



 シヘンは思わず笑みを浮かべた。嬉しかった。魂を燃やした。魂の熟知を進めた。原子の、分子の、オーラの認識度を上げた。


 だから、首を斬られながら治すことを可能として、腕も繋げて再生した。そして、同時に『神速のライフル』のトリガーを引くことも可能とした。


 間違いなくツリトの胸に当たる。練度の上がったオーラのため、スピードは先ほどよりも規格外。命を引き換えにした攻撃は間違いなくツリトを道連れにするはずだった。『神速のライフル』から放たれたオーラは足元から上がって来た斬撃、視覚外からの斬撃によって斬られた。


「は?」


 シヘンはツリトの信じられないほど、速い斬撃に驚きを隠せなかった。




 ツリトがシヘンの首を斬ろうとしていた時、ツリトの視界はスローモーションに映っていた。


 この現象はゼウスとの特訓時にもたまに現れた。ゼウス曰く、タキサイキア現象と言うらしい。死の危機に瀕した時に、脳の処理速度が爆発的に上がってスローモーションに見えるようになる現象とのことだ。これは、誰にでも起こるらしい。死に際で走馬灯を見て生きるために手掛かりを得るとまことしやかに囁かれている奴もこれだ。つまりは、僕の集中力は爆発的に上がっている。そして、僕はこの状態に入った時は決まって、魂の熟知が進み、原子の、分子の、オーラの認識度が上がるんだ。だから、トリガーが引かれる瞬間、僕はシヘンの両腕を切断した斬撃を動かして、銃口から放たれたオーラを斬った。


「さて、最も悲惨な死を選んだね。だから、僕が最後の仕上げとして、シヘン、お前の尻子玉を喰ってやる」

「フン。俺の魂の熟知は時間が経つにつれて、進行する。死に際が一番美しい」

「ああ、そう。まあ、精々頑張りなよ」


 シヘンは瞬間移動をして、上空に移動すると竜鱗を纏った。


「俺は、今、最高に強い」


 シヘンは邪竜をたくさん作った。そして、邪竜の血を入れて自分の複製した魂を何度も差し出した。だが、邪龍は入れなかった。否、入れれなかった。理由は、龍はたくさんの生物を食べている。たくさんの魂と触れ合い鍛えられている。その影響が肉体にも、血にも来ているのだ。それは、同様に竜もそうなのだが、龍は弱点を無くしつつ鍛えていて、竜はある一点に対して魂が強くなり、肉体や血を強化しているのだ。増しては、邪龍。先ほどのような鬼龍の血を入れるとなると、魂の形を変えられるシヘンと言えど、死んでしまうのだ。


 だから、シヘンが今、纏っているのは超竜の鱗だ。


 シヘンは『神速のライフル』を銃身を特別長くして大きくした。ツリトにその間、攻められるかと思ったが、ツリトはオーラ量を増やして質上げ、そして、変質をしているのを見て安心した。


 シヘンはオーラにバネのような性質が加わった。それは、超竜がたくさんの弾力性のあるものを食べたからだ。その中には超人がその効果を高めるために食べている跳び貝も含まれている。オーラに弾力性が加わったのは竜だったから、コモドドラゴンの性質があったからと言える。


 シヘンは銃身の中を通るオーラを極限まで縮めた。エージソンシリーズインフィニティーアルファー掛ける弾力性。このシヘンの最高の一撃がシヘンが掘った穴の中で待っているツリトに放たれた。


 そのオーラ砲はツリトの斬撃により斬られた。そして、その斬撃はスピードを上げながらシヘンの魂を斬った。


 純白の光の一閃を放ちながら。




 ツリトはシヘンが超竜の鱗を纏った時、冷静だった。そして、笑っていた。


「見ててくれ。母さん、父さん。僕が最高に強い瞬間をね。強く生きている瞬間を魅せてあげる」


 ツリトは母、ツリのシックスセンスでオーラ量を増やした。そして、父、リットのシックスセンスでオーラの質上げをした。そして、剣を握って原子を全て他者完結型にして変質したオーラを纏った。剣を消すとひたすら集中して練度を上げて他者完結型の認識に集中した。


 シヘンがトリガーを引いてから真っ向から斬撃を放った。純白の光の一閃を放ちながら。


「『悟り』認識度を百パーセントだ」


 純白の斬撃は黒いオーラ砲を斬り、そのまま、勢いを更につけて、シヘンの魂を斬った。その黒と白のコントラストはとても美しかった。


 『悟り』。魂を完璧に熟知すること、三つの原子の内一つだけでも消費効率百パーセント消費することを指す。この時、普段、纏っている黒色のオーラに相対するじようにして、オーラが純白に光る。そして、威力が三点九乗に上がる。


 シヘンはその攻撃を食らって魂を斬られたのだ。




 ツリトがシヘンの尻子玉を回収しに行こうとした時、空間が歪んだ。『神速のライフル』が歪んだ空間に落ちようとしていた。ツリトは純白に光る一閃の斬撃を飛ばして『神速のライフル』を斬り歪んだ空間も斬った。だが、いくつもの別の空間がすぐに生まれて、一つの空間以外は強い衝撃波が放たれて真っ二つに斬られた『神速のライフル』はその一つの空間に入って行った。


「チッ。逃げられた。ああ、クソッ!」


 ツリトはシヘンの尻に斬撃を飛ばして尻子玉を取り出した。そして、空気砲のような斬撃で汚れを落とした。


「じゃあ、喰わしてももらうぞ、シヘン」


 ツリトがシヘンの尻子玉を喰って、ようやく、母と父の無念を晴らすことができたと思った。


 気がつくと一筋涙を流していた。だが、感傷に浸る暇は今は無かった。


「ゼウス!」


 ツリトは大声で叫んだ。ゼウスも瞬間移動をしてツリトの前に移動をした。


「終わらせよう」

「ああ」


 二人は歪んだ空間の向こう側に瞬間移動をした。




「使い物にならぬな。所詮、自分の体を大事にしていた奴よの。これなら、デコイの方が幾分マシぞ」


 デストロイはわざわざ地上に姿を現して、秘密兵器まで表に出したのにも関わらず、何の成果も得なかったシヘンに苛立ちを隠せなかった。異空間の壁を思い切り殴るほどには憤怒していた。


「『神速のライフル』の中で一番の性能のものを渡したと言うのに。貴様は何も分かっていない。この銃の真価を。遠距離ほど恐ろしくなるこの特性と言う奴を。超獣の使い方が下手過ぎる。超獣もいずれは俺の依り代に変わる予定だったのに」


 デストロイは真っ二つに斬られた『神速のライフル』を見ると余計に恨み、憤怒が湧き出て来ていた。

「しかし、ここは潮時よの。別の異空間に移動をするぞ、お前たち」


 無視だ。


「いつものことだが、特段ウザいな。研究施設を移すぞ、エージソンたち」

「「「まだ、設計図を書いてる途中でしょうが!」」」

「はあ」


 心の底からため息を吐いた。何百年、一緒にいても未だにこの男たちの思考回路は掴めない。同じ顔、背丈をした男たちを見て、デストロイは従わせることを諦めた。


「なら、死ね」


 デストロイが手袋を嵌めた手を叩こうとした時、目の前に悪魔が二人現れた。一瞬、本気で思った。特にゼウスと河童の組み合わせ。カラワラの、ホームズの面影のある少年、ツリトを見ると体の全身が震えた。



 デストロイは生きることを諦めた。



「まだ、アルマゲドンには早い」


 だから、エージソンの発明品の破壊を優先した。ゼウスとツリトの間に衝撃を飛ばしてエージソンシリーズの武器を粉々に木端微塵に破壊した。だから、ツリトの純白の光の一閃の斬撃で魂を斬られて命が潰えた。


 ツリトは同じ斬撃をその後も無数に飛ばし続けて同じ人間を何度も何度も殺した。そして、最後の一人を殺した時、思わず呟いた。


「気持ち悪い」


 肉体的な気持ち悪さは何度も経験をして来ているが、ここまで、心理的に気持ち悪さを感じたことは初めてだった。シヘンの魂を融合するものより、気持ち悪かった。


「何だ、このクローンは。ゼウス。他の異空間の存在を感じる?」

「感じん。逃げられたな」


 ツリトもゼウスも正確には、デストロイ、エージソンが他にも異空間を作っていることも、エージソンのクローンたちが数えきれないほどいることも知らない。そして、ここにいたデストロイは殺している。ただ、気持ちよく勝ったという感覚が無かった。


「ああ、クソッ。闇が深い」

「そうだな。だが、ツリト。分からないものを考えたとて、仕方ない」

「うん」

「一つ、聞いて良いか?」

「うん」

「己の内に何か感じることがあったか?」


 すると、ツリトの雰囲気が少し変わった。


『悪いね。ゼウス。この子は才能がある。僕が出していた条件、一つでも『悟り』を開くと言うのを変える。三つ全てにする。勝手だけど、ごめんね』

「フン。俺は構わん。だが、ウミや、カナデ、ネキは分からんぞ」

『にしし。野郎どもが大丈夫なら構わないよ。それに、僕の生まれ変わりに総決算させるよ』

「酷い奴だな」

『にしし。でも、僕の生まれ変わりがワトソンの生まれ変わりの最初の目覚めに上手い対処ができたら、全て上手く行くだろうからね』

「何が言いたい?」

『最初の難関を乗り越えることができたなら、僕はワトソン一筋だったけど、僕の生まれ変わりならハーレムを築けるんじゃないか?って思ってるんだ』

「その心は?」

『僕はワトソンを守るために適応を頑張って鍛えたけど、僕の、ワトソンの生まれ変わりは最初から魂の熟知がほぼ、完璧な状態だ。つまり、僕の生まれ変わりは必ずしもワトソンの生まれ変わりにずっと構う必要はないんだ。もし、僕が生まれた時からその状態だったら、間違いなくハーレムを築いていた自信があるからね』

「フン。この冗談のような話が、ホームズには実際に起こると確信できているのだろう?」

『まあ、ちゃんと、神龍との子が生まれたらね。だから、導いてね、ゼウス。この様子だと、デストロイとの決戦は近いよ。もしかしたら、神龍との子が生まれる前に一回、相見えるかもしれない。ゼウス、違うな、フロンティアの王。気張れよ。ツリトを上手く導くんだ』

「フン。このゼウスを誰と心得る。任せておけ」

『にしし。僕は話したいことは話したかな。満足したよ。ワトソンが怒ってるから、もう引っ込むよ』

「そうか。今、話したことはしっかりと伝える。後悔するなよ」

『おいっ!ゼウス。漢なら黙れよ!クソッ。じゃあね』

「フン」


 ツリトの雰囲気が元に戻った。


「聞こえていたか?」

「うん。とんでもない奴だね。ホントにデストロイを止めるためのマスターキーが使えないじゃないか」

「そうだな。だが、そのマスターキーを閉まわれていることを自覚したのは確かな進歩だ」

「そうだね。じゃあ、午後から祝勝会だね」

「ああ」

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