表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/26

第18話 オーロとイオリ、それぞれの考え


(何とか最後の転移者……イオリに近付くことが出来たな……多少は怪しまれたかもしれないが……)



 オーロはつい先程まで空き家だった埃が積もる部屋で考えに浸っている。


(イオリはアイザックの手紙を読んだだろうか……?)



 親友であるアイザックが生前に遺してくれた手紙。それは新たに転移してくる者がテラデアのことを知るための手紙……という建前ではあるが、オーロが怪しまれずに転移者に近付くための小細工でもある。


(しかしイオリが精霊と契約する前に出会うことができて良かった……。すれ違った時はヒヤヒヤしたが……)


 オーロは新たな転移者がテラデアに現れる前に祠で待ち伏せする予定だったが、不覚にも気を失ってしまい出会いのタイミングを逃してしまった。オーロは定期的に気を失ってしまう。正確には、気を失うと言うよりは行動不能に陥ってしまう。その状態になると、意識はあって周りの状況は把握できるが、身体が動かせなくなってしまうのだ。


(行動不能になる間隔が……、だいぶ短くなってきているな……)


 オーロとて馬鹿ではない。自分が行動不能になることは織り込んでいた。しかし、今までよりずっと早いタイミングでその時が来てしまったのだ。



(しかしアイザックの奴……手紙に何を書いたのやら……。あいつは天才だが馬鹿でもあるからな……興奮すると何を言っているかさっぱり分からなかった……どうせ研究の事ばかり書いているのだろうが……)


 オーロは無二の友を思い出し、1人で笑ってしまう……。とても懐かしく、とても楽しかった思い出だ。オーロの長い人生の中で、楽しかった時間は多くはない。



(早いうちに、これも渡しておかないとな……)


 オーロは頭陀袋から1つのアクセサリーを取り出した。それはペンダントに加工された御守りだ。ペンダントトップには、金属なのか、石なのか、骨なのか……薄紫色の素材が嵌め込まれている。オーロが持つ武器【呪啖牙(じゅたんが)】と同じ素材だ。


(イオリは最後の希望だ……精霊と契約させる訳にはいかん……)





◆◆◆◆◆◆◆




 オーロが空き家だった部屋で考え事をしていた時、イオリはアイザックの手紙を読み終えて呆然としていた。


 ツッコミどころが多くて脳が疲弊したから……?

 内容が難しかったから……? 

 いきなり『ゼノ』という敵が明かされて、展開が急だったから……?


 理由はいくつかある。しかし、イオリが呆然とした最大の理由は、『アイザックはテラデアで精いっぱい生きた』ということが、手紙から伝わってきたからだった。


 テラデアに転移してから今日で5日目だ。この5日間は怒涛のような急展開で、女神さまが言っていたテラデア病魔のことや、テラデアのために自分のやるべきことを考える余裕がなかった。しかし、アイザックからの手紙を読んで、現実に引き戻されたような気分になっていた。


 アイザックは、イオリと同じように地球での人生に見切りをつけて転移してきた。そして、テラデアで精いっぱい生きたのだ。


(俺は惰性で生きていた自分に見切りをつけて、転移を決断した……。『病魔に冒された世界』と聞いて、治せるものなら治したい! ……そう思ったのだ。その日暮らしをする為じゃない……。俺に出来ること……俺にしか出来ないことを探したい……。俺はアイザックのような天才ではない……だけど女神さまに選ばれたんだ。それにはきっと理由がある筈だ……)



 手紙を読み終えてから時間が経つと、呆然としていたイオリの脳も冷静さを取り戻した。そして書かれていた内容を整理することにした。紙やノートが無いので脳内での処理である。


『アイザックは転移者である』

『オーロは信用できる』

『テラデアの精霊や人口は壊滅的に減ってしまっている』

『それはゼノの仕業である』

『オーロはゼノを追っているから手伝ってくれ』


(手紙を要約すると、こんな感じかな……?)


 そして手紙を読んだことで新たに湧いてきた疑問を整理していく。


『精霊は転移者でも契約できるのか? どうやって契約したのか?』

『ゼノとは何なのか? 生き物なのか? それとも精霊のようなものなのか? 俺でも倒せるのか?』

『アーティファクトとは何か?』

『ラティオテラの研究所に行ってみたいが、簡単に行けるのか?』

 そして『オーロも転移者なのか?』だ。


(オーロに詳しく聞いてみよう……。やっぱり紙とかノートが欲しいな……)




◆◆◆◆◆◆◆




 イオリとオーロはヴィシュに促されて白弓一家の共有部屋へ赴いた。テーブルにはいつもより豪華な料理が並んでいる。


 白弓一家のメンバーには『中庭に面した空き家を、新たにイオリが借りた』『イオリのことを知っているオーロがそこに住む』『オーロは見た目は怖いが、本当は怖くない』『オーロも食料を一家に納める』など、事前にヴィシュからオーロについては説明済みだ。

 一家のメンバーも、特にデメリットは無いので、了承してくれていたらしい……が、それはオーロの姿を見る前の話である。


 イオリに続いてオーロが部屋に入ると、それまで談笑していた部屋は水を打ったように静かになった。全員の視線がオーロに釘付けになり、誰も言葉を発しない。最年少のソースとお子様クルルはサーシャにしがみ付き、バールは口をポカンと開き、ライとレフの兄弟は震え、ヒューイは下を向き、リーダーのバックは目を泳がせている。そしてヴィシュが苦笑いし、ミオンはすまし顔だ……。イオリが予想していた通りのリアクションである。


(やっぱり……こうなるようなぁ……)


 イオリの隣で仁王立ちしているオーロに目を向けると、目を見開いている……。ただでさえ怖いのに、やめて欲しいものだ……と視線の先を見ると、そこには同じくオーロを見つめているボケ爺がいる。周りのメンバーは気付いていない。


(ん………? 何でボケ爺を見てるんだ?)


 イオリが戸惑っていると、ヴィシュがその場を仕切り始めた。『この通り! 見た目は怖いけど本当に大丈夫だから……普段はこの部屋は使わないから安心してくれ! 今日は挨拶だから!』ヴィシュは場を持ち直そうと、いつもより大きな声で話を進めている。一家のメンバーも、そんなヴィシュの声にハッとして我に返った。


「あ……ああ、よろしく頼む」


 リーダーのバックが右手を差し出すと、オーロは笑顔で握り返す。


「こちらこそ、よろしく頼む。急に押しかけて悪かった。迷惑はかけないので安心してくれ……」

「それにしてもミーブとは豪勢だな。俺は遠慮するから存分に楽しむといい」


 オーロがバックに対して下手に出たことで、ようやく雰囲気が和らいできた。今日はボケ爺が狩ったミーブという高級な鶏肉料理だそうだ。巨体のオーロが遠慮したことでバールやソースはホッとしている。一家は緊張しながらも豪華な晩餐を開始した。お互いに自己紹介を交わしている。



(ふぅ……何とかなった…かな? コミュ力お化けのヴィシュに感謝だ……)



 一通りの自己紹介を終えると、イオリとオーロは先に部屋に戻ることにした。大人の対応というやつだ。2人が共有部屋を出ると、部屋の中の話し声のトーンが上がる。子供の対応というやつだ……。


 イオリとオーロはお互いに苦笑して中庭の椅子に腰掛ける。すると、オーロが真面目な顔になってイオリにペンダントらしき物を差し出した。


「これは御守りだ。転移者をテラデアの病気から守る。首にかけておけ、アイザックのお手製だから効果は折り紙つきだ……」


 男にアクセサリーを贈られるのは何とも複雑な気持ちになるが、御守りならば断る理由もない。それに異世界の病気になんて(かか)りたくない。イオリは有り難くいただくことにした。


「有り難く使わせてもらうよ………そういえば、ボケ爺を見つめてたけど、知り合い?」


「いや……似ていただけだ……」




 2人はそれだけ話すと、お互いの部屋に戻った。





初めて評価をいただき、天にも登る気持ちです。

感謝です!

是非とも評価や感想をお願いいたします。


引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ