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5 夜道の暗殺者

昨日よりも少し早く探索を終え、換金を済ませた俺達は初めて一緒に酒場に行く事にした。せっかく最近儲かってるんだから美味しい物食べましょうよ、というのはミコナの提案である。特に店の情報も持っていないため、ギルド支部付近の繁盛してそうな所に立ち寄った。

「あまり酒場なんて来た事無いから何を頼めば良いかわからんな…」

「美味しそうって思ったやつを頼めば良いんじゃ無いですか?」

「それもそうか…じゃ俺はこのリメスシープの香草焼きにしよう。飲み物は水で」

「みずぅ!?酒場に来て水を飲むんですかノインさんは!困った人です…もしかして飲めない感じですか?」

「飲めない事は無いが…さほど美味しいと思わないからな。そういうミコナは酒を飲むのか?」

「いえ?飲まないです」

なんだそら。自分も飲まないくせに煽るとは。まぁしかし、ミコナは酔うとうるさそうだから飲まない方が楽なのかも知れない。

 暫くすると料理が届いたので食べながら今日の事について話した。

「ところで、ミコナ。少し気になったんだが」

「スリーサイズですか?教えないですよ」

「…酔ってるのかお前は。気にならない事も無いがそれよりも。ゴーレムの話だ」

「!?気にならない事も無いんですか!ノインさん意外とえっちなんですね…」

残念ながら俺も健全な男子だ。表に出さないだけで人並みに興味あってもおかしくはない。

「…続けるぞ。今日の探索で確信した。恐らくあのゴーレムは、誰かが配置したに違いない。」

「誰かって、誰ですか?見つけたらお金になるのに」

「誰かはわからんが、ゴーレムが自主的に行き止まりの部屋で活動停止するとは考えにくい。そもそもおかしい点は最初からあったんだ。」

昔は不動ゴーレムなど発見された事なく、最近になって壁の中から見つかるようになった。岩の壁の中に埋もれている物だから随分昔から埋まっていたのだろうと思ったが、それなら昔から発見されていなければおかしい。壁の中で自然に発生し、成長すれば活動を始めるモンスターだと仮定しても、どれも同じ大きさなため自然の産物と言うには無理がある。誰かが錬成したとしか考えようがないのだ。説明を聞いたミコナは目を閉じてじっくりと考えている。

「…なるほど。確かに人為的と言われればそうなのかもしれないですね。目的はなんなんでしょう?」

「そこまではわからないが、ギルドじゃ無いのは確かだ。むしろ調査しようとしている立場だからな」

「でも、見つけたらお金になる事は変わり無いですし、私達は気にせず探し続けたら良いんじゃ無いでしょうか!それこそ発掘する事でギルドの調査も進むでしょうし」

ミコナの言うことも尤もだ。しかし危惧するべき点がもう一つある。

「しかし、もしこの状況をよく思わない奴がいたら?隠しているゴーレムを掘り出されて快く思わない奴がきっとどこかに居るはずだ。夜道に後ろから刺されないとも限らないぞ」

俺はまだしも、ミコナは自衛できる能力が無いに等しい。スライムの中に隠れてもスライムが攻撃されればどうしようもない。厄介ごとに巻き込まれる前に離れるのが良いだろう。稼ぎ場なら他にもある。

「そうですね…楽観視して死んじゃったら元も子もありませんし…明日からまた新しい狩場を探しましょうか」

「あぁ、それが良さそうだ」

「そうと決まればお金があるうちに食べないとですね!ねぇこれ半分ずつにして食べましょうよノインさん!」

切り替えの速さは一級品かもしれない。ある意味探索家に向いた気質のようだ。その後ヒートアップしたミコナに付き合っていたせいで腹がはち切れそうになったが、たまにはこんな日があっても良いのかもしれない。

 その後ミコナと別れた俺は帰路に着く。しかし今日はいつもと違う事態が発生した。恐らく尾行されている。いつからだろうか。このままスキルを使って撒いても良いが、やはり憂いは断つべきだろう。人気の少ない袋小路に誘い出して詰めるか。そう言えば対人はほぼ初めてだな。

 人通りの少ない道を通り、さらに行き止まりの道に入って数秒。案の定尾行していた奴が釣れた。

「あんたここの住人か?」

見失ったターゲットに物陰から声をかけられ固まっている。が、しかし。

「気付いてたのか?思ってたより勘が鋭いようだな。だが…」

男はすぐさまナイフを構えた。黒いマントに顔の見えないフード。声色から男だと言うことだけわかる。尾行ではなく暗殺狙いだったか。こちらが何かものをいう間もなく襲って来る。至近距離まで接近、首や顔を執拗に狙いナイフを繰り出す敵。当然躊躇はない、相当殺し慣れているようだ。スキルで身体能力を強化しなんとか受けれているが、このまま防戦一方では勝ち目がない。相手のスキルが分からない以上、こちらから仕掛けるのは得策ではないかもしれないがやるしかないだろう。

出力を可能な限り上げてナイフを弾く。衝撃でできた敵の隙、間髪入れずに渾身の一撃を叩き込む。しかし剣は標的を捉えることなく虚しく空を切った。

「…!?」

突如後方に引き寄せられるような様子で一気に距離が開く。見れば、相手の肩から何か黒い触手のようなものが生えていた。いや、生えるという表現が正しいのかは分からない。なにしろソレは不定形で、黒い空気を触手状に押し固めたような見た目をしている。明らかに奴のスキルだろう。魔力で意のままに動く手足を作り出す能力と言ったところか。

「スキルと人間性はある程度似通うらしいが、そのスキルを見たところあんたは陰湿なタチなんだろうな」

「ふん…安い煽りだ それで言うならお前は力任せな荒々しい能力の割に頭脳派と見える。その通説、あてにならん様だな」

などと揚げ足を取って来る辺り、やはり陰湿な性格のようだ。お喋りもそこそこに、今度はこちらから相手の懐に潜り込む。全力状態は魔力消費もでかい、早期決着が望ましい。一撃目の横薙ぎ払いを空中に飛びかわされる。そのまま体を一回転させ空中にいる相手に切り上げるように攻撃を繰り出した。しかし、奴の黒い触手に剣の軌道を逸らされた。それほど硬くはないが、上手く剣の側面に力を加えいなされているのだ。

「…相当戦い慣れしてるようだな。闇討ち専門かと思ったが…」

何度か同様の応酬を繰り広げて一つ気付いた。奴の反射神経は相当なものだが、それよりもあの触手。人体よりも格段に素早く操作できるようだ。通常、攻撃に気が付いても体が間に合わず避けられない一撃でも上手く弾けるのはそれが理由だろう。言い換えれば、気付かれた瞬間にその攻撃は外されるということだ。これだけ見ると勝ち目が無いように思うが、そんな事はない。あまり街中では使いたく無かったが背に腹は変えられん。剣がだめなら炎で焼き払うまでだ。互いの睨み合いは終わり、静寂は破られた。痺れを切らし相手がこちらに突っ込んで来る。ナイフを逆手に持った状態から喉仏を切り上げようと縦に得物を振るう。それをかわし今度は横から剣を振るう。

「何度同じ事を繰り返す?このヴェロクス・マヌスがある限りただの武器はかすりすらせんのがわからんのか!」

「ただの武器じゃ無かったら当たるってことか!?」

剣と触手が触れる瞬間。予め貯めた魔力を放出し爆炎を敵方向に出した。

「ぐっ…!!どう言うことだ!?身体強化がスキルじゃないのか…!?」

「俺のスキルはレッドバーサーカー。名前にレッドって入ってるからには火が出せても不思議じゃないだろ?」

攻撃に合わせて振るわれた触手も爆炎で吹き飛んだ。再度生やそうとしているがもう間に合わない。殺さない程度に斬撃を見舞い、ようやく決着が付いた。

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