25 ヴァンダールの皇帝
古びた石畳に、雨が打ち付ける。街ゆく人々の顔が沈んでいるのは雨故か。
否、ここはヴァンダール帝国。建国当初から、この国は変わっていない。変わる筈が無いのである。何を隠そう、この国の皇帝は────。
フード付きのマントを纏った、大小四人が人混みに紛れて歩いている。如何にも怪しさ満点の通報物だが、誰も気に留めない。
「なんだか…皆目を合わせようとしませんね。互いに避け合ってるような…」
「うむ。これが我輩の故郷だ。…まっこと、変わらんな」
「どうやったらこんな冷め切った国で、こんな暑苦しい男が…」
「聞こえてるぞ。レジーナ。まぁ、我輩は自慢ではないが戦果を上げてたからな!お陰で国の腐敗にも気付いたわけだが」
帝国が国民をこうも疲弊させているのには強制兵役以外にも理由があった。戦果率報酬制を導入している事である。服務下における戦果に比例して報酬が上がるのは勿論、様々な特権を与えられるのだ。だが、基本的に余程の運と実力が無い限り成果を叩き出し続けるのは不可能。評価が落ちれば身分も変わるが、変化のサイクルが激しいことで煽りを受ける者がいる。
戦士の妻、そして子供だ。ふんぞり返って見下していたかと思ったら、次の日には底辺国民に成り下がり、虐げられていた者は上に立てば報復を行う。そのような環境で良好な関係を築くのは不可能と言って差し支え無い。いつしか「そもそも関わらない事」に行きついた結果がこの有様という訳だ。
常に戦果を出し続けたブラストンは、父亡き後も母に幸福な生活をもたらし続けた。家庭内では頼れる息子として…近隣住民からは特権を得ても見下さない好青年として親しまれていた。ブラストンが家を出たのは、母の死後のことである。
四人は、宿を二部屋取るとノインのいる方に集合した。雨に濡れたマントを干し、簡単に荷物を整頓して集まるのにそう時間は掛からない。皆が集まるとノインが会議を開始する。
「さて、此処からの予定だが…ハッキリいってノープランだ。皇帝を懲らしめるという目標意外何も決まっていない。今からそれを考えよう」
「そうだな。ある程度の内情を知っている我輩から、一つ案を。帝国の兵は、大きく分けて2種類の仕事に別れている────」
国内で働く者と、獣域に赴く者。国内で働く方は、不壊城の警護や生産活動・工事施行に従事している。一方、獣域で働く者は至ってシンプル…仕事内容は「深淵の大穴」の探索だ。深淵の大穴とは、獣域南東部に存在する大きな縦穴の事である。 少しずつ側面を削って道を作り、徐々に下へと降りて行くのだが、途中に幾つもの横穴が存在する。これらは、中で絡まり合い迷宮のような構造を成している。兵達の主な仕事はこの場所の探索である。大穴の迷宮の中では、「深淵装備」と呼ばれる道具が手に入る事があるのだ。大穴に蔓延する特殊な魔力に何十年、何百年もの間晒された装備品は、魔道具のように特殊な能力を有した物に変質する。しかし、アイテム探しには大きな危険が付き纏うのだ。
「大穴っていうくらいだから、落下とかですか?」
「いいや、もっと危険だ。忘れたか?大穴は獣域にある。つまり、大穴の中にもモンスターがわんさか居るって事だ」
特殊な魔力に当てられたモンスターは、他の地域に生息する個体とは異なる能力、外見に変貌する。姿は醜く歪み、より好戦的且つ凶悪な力を携えて兵達を襲うせいで大穴は位置的には中部であるが難易度は上部に分類されているのであった。
「…兵達の仕事については大体理解した。それで、作戦というのは?」
「実はだな、深淵からアイテムが見つかった場合絶対に兵はそれに触れてはならないんだ。必ず皇帝が初めに触れるという厳格な規則が敷かれている。触れると死の危険がある装備品もあるからという事だが、まぁ目的はその逆だろうな。最初に触れた者にのみ力を与える武器…それをみすみす一兵卒に与えたくないからだろうよ」
「しかし、もし最初に触れた者が呪われる武器だったら?」
「それに関しては問題ない。皇帝に呪いは効かないんだ。不思議とな…」
「ふむ。呪いが効かない体質とは興味深い。余程体が丈夫なのか?是非とも解剖してみたいものだ」
「体が強いなんて次元の話じゃない。噂によると、皇帝は100年以上も代替わりしてないという話もある。まぁどこまで本当かは怪しいもんだがな!で、作戦だが…要は皇帝が大穴に来た時を狙って成敗しようってのはどうだ?」
「城にいる時に襲撃をかけるのはダメなのか?」
「残念ながら、城には深淵装備を与えられた強力な側近がウヨウヨいやがる。」
戦闘能力の高いスキルに加えて、唯ならぬ効果を付与された深淵装備を持つ集団。かつて、ブラストンもそこに配属された。一度は所属した身として、ありのままの評価をブラストンは述べる。
「一対一なら勝てる。だが、三人くらい集まった時点でもう勝ち目はゼロだと思った方が良い。それは…ノイン。例えお前でもだ。」
十人以上居るならば、必然的に一対多数の戦闘は避けられないだろう。
「なるほど。それで大穴に居る時を狙う、と。だが、そうぽんぽんと見つかるものなのか?深淵装備とやらは。稀にしか出てこないならば、それこそ文字通り大穴狙いになってしまうぞ」
「ふん!我輩がそんな杜撰な男に見えるのか?安心しろ、そこも含めての策だ。逆に考えろ。深淵装備が出れば奴は大穴にいくのなら、先に用意しておけば良いんだ」
「それは…俺も考えたが、しかし肝心の物が無い。深淵装備も適当にでっちあげたとて兵に看破されるのでは?」
悍ましく、禍々しい。放つ魔力も異質な深淵装備の贋作など、簡単には用意できないと心配するノイン。彼は、彼等は一つだけ見落としていた。
「そこで…これだ。」
ブラストンが取り出したのは、見た事の無い彼らでもそれが何か分かってしまう、そんな代物。つまりは深淵装備に名を連ねる腕輪であった。
「特に名は無いが、使用すると激しい痛みの代わりに魔力の総量を上げてくれる。皇帝から渡されたもののほとんど使わんかった道具だ」
「なんか…悪趣味なデザインの腕輪ですね。」
「深淵装備とは基本こんな感じなんだろうな。長期間外に晒されていた割に保存状態は良好だが」
ブラストンがかつて与えられた腕輪を、夜の間に先回りして置いておく。探索が進めば連絡が入り、皇帝は城を出て獣域の大穴に向かうためそこを襲撃するという事で決定した。レジーナの提案で表面のデザインを少し変え、万が一にも偽装だとバレない様に細工を施した。
────深夜、深淵の大穴。定期的に兵が巡回を行っているようで、ランタンの灯が時折移動していた。少し離れた岩陰には、ミコナとアストレア…そしてブラストンの姿が。ノインとレジーナは宿に残り皇帝襲撃の準備を整えているため、此処には居ない。裏を返せば、腕輪をバレずに置いて帰るのに、ミコナとアストレア、道案内のブラストンが居れば十分と言う事でもある。新たな能力を獲得したミコナは、誰か一人対象を設定しその人物と視覚を共有できるようになった。今までは大雑把な移動先を決めて転移するのみだったが、これからは共有によって自身が見ている場所にピンポイントでゲートを開く事が可能。
「良い感じの場所についたら、私がゲートを繋げます。アストレアちゃんは腕輪を置いたらそのままゲートで帰って来てね!」
こくりと頷くアストレア。ミコナが視覚共有を発動し、アストレアは深淵の大穴へと侵入した。ブラストンの情報通り、大穴の上だけでなく内部にも監視兵が配属されている。そして、大穴の中は人だけでは無い。当然、夜行性のモンスターも迷宮内を跋扈している。
「しかし…鎧の嬢ちゃんは本当に一人で大丈夫なのか?いや、嬢ちゃんでもないのか?よく分からんが。大穴には階層ごとにヌシみたいな奴がいるんだ、暗殺専門の戦士じゃあアイツらと正面からやり合うのはちとキツそうだがな」
「ふふ…ブラストンさんはまだあの子の強さ、知らないですもんね!視覚共有するので、一緒に応援しましょ」
「お…おぉ。これは凄いな。このレベルのスキルをいくつも持ってるとは、恐れ入る…どれどれ、アストレアのお手並み拝見といくか」
点々と光が灯されているものの、殆ど見えない暗闇の中を突き進むアストレア。霊体化等のスキルを器用に活用し、一気に下の層まで入り込む。探索が進んでいる場所付近まで降りると、霊体化を解除し次に探索されそうな場所を探し始めた。
十字路を通り過ぎると、ふと後ろから低い唸り声がする。目はなく、鋭く尖った歯を持つ蛇…に足が生えたモンスター。足は無数にあり、アストレアが人間であれば嫌悪感を抱かずには居られなかっただろう。前半身を持ち上げ飛びかかるモンスターを、すれ違い様に切り付ける。何本もの足が地に落ち、うまく動けずのたうちまわりながら強酸を噴出した。
「こいつは一度戦った事あるが…この酸はダメだ。深淵装備でもなんでも一発で溶けちまう。大丈夫なのか…?」
遠くで心配するブラストンの事など露知らず、瞬間移動で距離をとり酸の射程範囲外へ出た。攻撃が止むまで待つという手もあるが、魔力剣を展開し遠距離から手早く仕留める作戦で押し進むようだ。一本一本は大した威力では無いが、鎧も纏わぬモンスターにはそれで十分。数の暴力で、敵が息絶えるまで剣を飛ばし続ける。結果、絶命までは三十本程で事足りた。
「ほぉ。剣を生成して飛ばすとは…まさかスキルが…!?」
「剣を飛ばすのってそんなに珍しいですか?モンスターの魔石から能力を借り受けられるんです!アストレアちゃんは。すごいでしょ?」
「モンスターの力をそのまま使っているのか!ふむ、ふむ。なるほどな」
腑に落ちた様子のブラストン。話し込んでいる間にも、アストレアの方は次なる敵と対峙していた。ゴーレムのような体躯だが、関節が紫色のよく分からない液体で繋がっている。関節が伸び縮みするたび、ぐじゅりと気持ちの悪い音が洞窟内に響く。
大きさはアストレアの二倍ほどで、洞窟の天井に頭を擦り付けないよう、屈み気味な所が少し小物感を漂わせている。
ゆえに、二人は気付かない。このゴーレムは所謂階層のヌシである事に────。
主人たるノインに似たのか、先手必勝と言わんばかりにゴーレムを切り付ける。岩の部分は硬く、剣が刃こぼれしてしまう。アストレアが剣を再生成している間に、ゴーレムが腕をムチのようにしならせ反撃。届かないと思われたその腕が、アストレアの胴を捉えた。特別頑丈であるため大して損傷はしていない事を確認すると、攻撃が当たった理由の分析を始める。その答えは液状関節にあった。
本来関節とは曲げるための部分。だが、液状の関節は伸ばす事にも長けているようで本来の倍にも及ぶリーチを獲得していたのである。さらに、今アストレアが食らったのは鈍器のような右腕だが、もしもこれが鋭利な形状の左手だったなら?
彼女の装甲ならば一撃位は耐えただろうが、人間ならば5回は死にかねない。運良く生き延びただけに見えたブラストンはミコナに再度注意する。
「これは…まずいんじゃないか?今すぐにでも回収してやった方が…」
「心配性ですねぇ、ブラストンさんは。アストレアちゃんを信じてあげて下さい」
アストレアに関しては一日の長があるミコナ。ピンチかのように見えた被弾は、彼女の想像通り次なる攻撃への布石と化す。一回の攻防で完全に間合いを把握したアストレアは、自身の本分が暗殺者である事を踏まえ姿を眩ました。主のように、正面から突っ込むのではなく、背後に回り込み液体関節に剣を差し込む。異変を感じ、両腕を伸縮させて払い除けようとするが、既にデータを取得しているアストレアに命中することはなかった。断続的に姿を現しては関節に剣を刺してまわる。これ以上何処に刺すのかという程に至れど、ゴーレムはしぶとくも生きているようだ。というか、少し動きが鈍くなった程度で死ぬ気配は見受けられない。アストレアは、少し離れた所に立ち、ゴーレムを暫し眺めた後、くるりと背を見せ洞窟の奥へと歩いて行ってしまった。ゴーレムが後を追いかけようとした瞬間、関節に刺さっていた剣が見えない力によって一斉により深く押し込まれる。それにより、関節の可動域が極限まで封じられ、バランスを崩して倒れ込んでしまった。大きな地響きが鳴り響き、ゴーレムは衝撃で手足を損壊。アストレアの勝利である。
「ほお…中々やりおる…!!よもや、手数の多さで関節を極めるとはな!」
「ね?ノインさんに似て、冷静に勝ち方を探すタイプなんです。親に似るんですねぇ」
無事、最適な場所にブラストンの腕輪を置いた三人は宿へと帰還しノインとレジーナに成果を連絡した。いつもなら普段は霊体化しているのに、今日はちゃんと実体化している。ノインがアストレアを褒めると満足そうに消えて行ったので、それが目的だったのかもしれない。
自身の仕事がひと段落付くと、ノインは再び皆を集めて会議を始めた。
「計画通り腕輪の配置に成功した。次は皇帝襲撃フェーズに移行したい。ただ、待つ場所はここじゃない。次の宿は…まぁ。着いてからのお楽しみだ」
翌朝。ノインにつられて、三人はとことこと歩く。
「…ノイン?この先は宿どころか、街すらないぞ」
「大丈夫だ。ちょっと、転移したいんだが頼めるか?」
「はい!行き先は何処に?」
「獣域だ」
レジーナの顔が引き攣る。野外宿泊とは縁の無い彼女にとっては、一種のカルチャーショックであろう。ミコナとブラストンは慣れたもので、眉ひとつ動かさない。そんな二人の顔を見て抵抗する気も起きなかったのか、渋々受け入れたようだった。
「まぁ、仕方ない。一度位は経験しておくか。」
最初で最後の野外宿泊となることを願って、レジーナも転移ゲートに足を踏み入れる。今回も転移先はアストレアとの視覚共有によって定めたため、ドンピシャの位置に直接飛ぶ事が出来た。川が近くにあり、雨風を凌げる岩陰がある。帝国の獣域門から大穴までのルート付近であるため、標的を見逃す事もない。食料を調達したり、これまでの経歴について語り合ったりしていると、早くも空が赤く焼け始めていた。
「…野営というのも、案外悪くないものだな。川のせせらぎ、葉の擦れる音。目を閉じていると今にも…眠り…」
「皆さん!皇帝の乗ってそうな、豪華な馬車が来ます!」
「くっ…人が気分よく寝ようとしている時に…!!行くぞ、ノイン!」
「あ、あぁ」
ようやく野営に慣れ、楽しみ初めていた矢先に現れる皇帝。睡眠を殆ど取らない彼女にとってこの時間の昼寝は珍しく、それだけ深いリラックス状態に誘われていた。レジーナの安眠を妨げた罪は重い。
「では…作戦通りに!吾輩が空から奇襲をかける。ノインは出てきた所に畳み掛けてくれ!幾ら妙な噂があるとは言え、奴も人の子。吾輩達が手を合わせれば必ず勝てる!」
「転移座標指定…いつでも飛べます!」
「…行くか。」
「今回の深淵装備は腕輪型です。階層主のアビスゴーレムが自壊したようで、簡単に見つける事が出来ました。」
「…自壊だと?」
「はっ!早朝、兵が当該階層を探索中にここ数日の悩みの種であったゴーレムが死んでいるのを発見した次第です。夜間、見張りについていた者も不審な音はあった者の、駆け付けた頃には誰も居らずモンスター同士の争い、または自壊の線が濃いかと…」
「階層主が自壊するとは考えにくい。それと…見張りをしていた兵は研究室送りにせよ」
「…は。」
黒く、大きな馬車の中に鎮座する皇帝。真っ黒で獰猛そうでいながら繊細さを感じさせる意匠の鎧に身を包んでいる。地獄から響いてくるかのような声は、聴くものを不安と恐怖に誘う不吉な音色。体の周りには、朧げに瘴気が漂っている。
「皇帝陛下!!じょ、上空より、魔力反応が……!!」
配下の伝令を聞き終える間もなく、特大の衝撃が馬車を襲う。遥か上空から落つる筋肉爆弾…もといブラストンの襲撃だ。接触の瞬間全力の衝撃波を放つ事で馬車は全壊、部下の殆どが行動不能になったようだ。残骸の中から、皇帝が立ち上がる。
「久方振りだな。皇帝…ファルトゥス・カーン!!帝国に背いたあの日、言ったはずだ。
必ず貴様の悪行を正してやると。待たせたな、今日がその時だ!」
「良い啖呵だ。今日初めて会う皇帝に襲い掛かるのも不思議な話だが、乗り掛かった船だ。俺も混ぜてもらうぞ」
ノインの体から爆炎が溢れ出し、目にも止まらぬスピードで全身を激しく打つ。腹部への強烈なフックショットで吹き飛んだ皇帝を拳から放出した魔力で地面に撃ち落ちす。首を掴み、絶え間なく全力の衝撃波を浴びせ続け、最後に大きな溜めからの打ち上げアッパーを叩き込んだ。そのまま皇帝は微動だにせず、早くも勝利の可能性が皆の脳をよぎり始めた頃。
「…ブラストン。よくぞ戻ったな。貴様の帰りを心待ちにして居たぞ。あぁ、懐かしい。実に、懐かしい。また腕を上げたようだな。」
立ち上がり、平然と語り出す皇帝。顔と腹部の鎧に亀裂が入り、砕けた隙間からは禍々しい魔力が顔を覗かせていた。
「その体は…一体!?」
「驚く程の事では無い。これは呪いだ」
「呪いだと…?どういう事だ!?」
「そういきり立つな。私はファルトゥス・カーン。帝国の始まり、原初の刻より生ける者也。」
帝国の始まり。正確には不明だが、数百年以上も昔の事である。まこと長寿なモンスターならばまだしも、人間にとっては途方もなく長い時間だ。呪いという言葉に引っ掛かったノインは、構えを解いて話を続ける。
「死ねない呪いにかかっているのか?」
「柔軟な男だな。ステラから聞いた通り厄介な奴らしい。死ねない…と言うと語弊があるな。これは自らこの身にかけた呪いだ。まだまだ死ぬわけには行かない故、な」
ステラとの密なやりとりを匂わせる発言にノインの眉がピクリと動く。
「そう身構えるな。奴からお前達を殺すよう頼まれてはいるが、そう短絡的な話でも無いと思っている。少し話をしようか」
「誰が貴様なぞと!我輩を舐めるな!!」
除け者にされ、激昂したブラストンがとびかかるが、先ほどの無抵抗振りからは想像もつかない膂力で腕を捻り上げた。ブラストンが呻きながら膝をつく。どうやら命乞いの類では無いらしい。
皇帝、ファルトゥスの語り出した内容は、決して物語などではなく純然たる事実。皇帝の過去は、世界の真実の一端でもあり────。




