不思議な鏡
ただいま絶賛超短編小説を考え中です。
寝てて夜中に目が覚めた。
「不思議な鏡」
調べたらそういうゲームがあったんだねー。
でもそれとは全然関係ないので、読んでいって下さい。
(2023/4/23改稿)
考えれば怖いけど、考えないようにすれば大丈夫。R15じゃなくても大丈夫。
僕の実家は坂道の多い団地にある。昔ここら一帯は山だったと母が教えてくれた。
小学生の頃、休み時間に友達が声を落としてこう言った。
「あの家、ずっと空き家なんだけど、中の家具はそのままらしい。なんでだと思う?」
何も思いつかず、みな一様に固唾を呑む。友達は僕たちの顔を確かめながら間をおくと語尾を強めて答えを明かした。
「全員、失踪したからなんだって」
「おー」
「まじか」
一斉にどよめきが起こる。その反応を見て友達は満足げに口角を上げた。
あの家とは、団地の入口に建つ邸宅のことだ。団地が出来る前からあったという噂もあるが、それも友達が言い出したことだ。
友達の話し方がうまいので本当のように聞こえるが、怖い話が苦手な僕は信じないようにしている。
学校の帰り道、例の邸宅の前を通ると悪寒が走った。無意識に体が反応してしまう。これもみんな友達のせいだ。
邸宅の一階はシャッター、二階は全ての窓が灰色のカーテンで締め切られている。
庭は荒れ果て、伸び放題の草木で玄関が埋もれていた。
友達はどうやって中の情報を知ったというのか。いや、そんなことより日が暮れる前に帰ろう。
その後、友達はあの家に引っ越していた。内見していたのだ。
なぜあんな作り話をしたのかは分からない。しかし庭には花壇を作り、猫の額ほどの家庭菜園もできた。人が生活するようになると家の雰囲気も明るくなって恐怖心は薄れていった。
ある日、友達とあの家の前でばったり会った。誘われるまま部屋に上がると、部屋に入るなり角に置いてある姿見を指差してこう言った。
「その鏡、不思議なんだぜ。ちょっと覗いてみろよ」
言われるままに覗き込むが、自分の姿が映らない。ドアの横に立つ友達は手を振っているが自分がいない。驚いて振り向くと、
「俺も引っ越してくるまで映らなかったんだ」
明るい口調でそう言った。この鏡は内見した時から置いてあったという。僕の反応を見て友達は満足げに口角を上げた。話のネタができたからだ。僕という証人までつけて。
次の日からこの話をするときは証言する役目を負った。その度に友達は満足げに口角を上げた。その顔が今でも印象に残っている。
その少し後のことだ。友達は転校した。突然の話だった。別れの挨拶もないまま、朝礼で先生からその事が伝えられた。
十数年後、僕は成人になり結婚して第一子が生まれ、故郷に帰ってくることになった。久しぶりの我が家も両親と家族で住むには手狭だった。
「じゃあココ。今なら格安で入れるそうよ」
母はそう言って、タウン誌の中古物件情報のページを開いて指差した。それは友達が引っ越した家。転校してからずっと空き家になっていたらしい。
業者に連絡を取り、内見させてもらうと中はリノベーションされており、新築のようだった。
庭は雑草が伸びているが、草刈りをすれば問題ない。
二階に上がり友達の部屋に入った。あの日の記憶が呼び起こされる。
その鏡は整然とドアの方を向いてカバーを掛けられ置いてあった。
「その姿見、前からありますよね?」
僕の問いに業者は難色を示した。僕は値下げ交渉のつもりで問いただした。
ここは前に友達が住んでいた事。
僕の姿が映らなかった事。
友達がおかしなことを言っていた事。
業者は根負けしたようにうなだれると、重い口調で理由を明かしてくれた。
「この鏡、捨てても置いてあるんです。何度捨てても、この位置に戻ってくるんです」
ゾッとした。そしてすぐに部屋を出て母を説得した。この家はやめよう。
業者は更に価格を下げてきたので母は残念がっていたが、僕の頭の中では友達の話がリフレインされていた。
全員失踪したからなんだって。
俺も引っ越してくるまで映らなかったんだ。
全員失踪した
引っ越してくるまで映らなかった
失踪
引っ越すまで
映らなかった
つまり、引越して鏡に映ったら失踪するとでも? そんなバカなと思いつつ、ふと考えた。
鏡を覗いたときに手を振っていた彼の顔。
口角は上がっていただろうかと……
中古物件を購入する話は一旦白紙に戻り、今もあの家は空き家のままだ。
あの家に置かれた姿見にはカバーが掛けられていたのは、業者が苦肉の策として選んだものだ。
姿見は木製で長方形の一般的なものだ。別に血の跡が付いているとか鏡の精霊が問いに答えたりはしない。位置は変えられないし捨てられないが、住人は使えるんだし、問題はないだろう。
突然、風が吹いたようにカバーがめくれ上がり、鏡に映ったドアの横には少年が立っていた。
そこにあなたの姿は映っていますか。
今日も読んで頂きありがとうございました。
謎は謎めいた感じで終わりましたがいかがでしたでしょう。
(謎はなぞめかないで終わるように改稿しました)
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ではまた。