待ち伏せ
それから、僕はモヤモヤした気持ちのまま勉強に集中出来ず放課後になった。
「りゅーくん! 一緒に帰ろう?」
校門前で今朝会った見知らぬ美人から、そう声を掛けられた。
「えぇっと、香織さんだっけ? 僕と一緒に帰る理由はないと思うんだけど」
「カオリンだよ、なんで今日のりゅーくんはそんな態度なのかな?
約束破って学校で話しかけたのは悪かったけれど・・・りゅーくん冷たいよ」
「そんな事言われても・・・と言うか僕の家を知ってるの?」
「そうだね。何度かお邪魔しているよ」
いつの間に・・・龍二とそんな関係になってたんだ。
「香織さん? 今日は一緒に帰りたくないな」
「えぇー。しょうがないな。今日は我慢するよ。約束破っちゃったしね・・・
駅までだったらいいかな?」
それくらいなら良いか
帰宅部の僕は、いつも1人で帰ってたし
いや、先輩が居る頃は一緒に帰っていたな。
あの頃は良かった。先輩に会いたい。
「ま、今は1人だからいいけど」
「やった! こうやって一緒に歩くのも久しぶりだね!」
そう言ってとてもいい笑顔で微笑んでくれている。
「所で、龍二とはいつからの知り合いなんだ? 龍二からは今まで香織の事を聞いた事がないんだけど」
「高校1年の夏からだよ。りゅーくんから声かけてくれたんだよ?」
その頃はもう、僕は先輩と付き合ってたから、周りの色恋沙汰に興味がなくなってた時期だな・・・。
まぁ、先輩は美人で勉強も出来てたからやっかみがすごかったが。
「そうなんだ、僕達は似たような時期からの付き合いなんだね」
「あの時は本当に
自殺しようかと思うくらいあの時は追い詰められてたから・・・
りゅーくんに声かけて貰えて、支えてくれて助かったんだよ」
と、やや深刻な調子で香織が言ってる。
(君みたいな美人が死ぬとか世界の損失だろ)
「君みたいな美人が死ぬとか世界の損失だろ」
あ、つい本音が・・・
「あ、そうそう、そんなセリフだったよ。
りゅーくん覚えているじゃない?
その続きって覚えてる?」
あいつそんな事言ったのか・・・
んー、その後いいそうな事は
「死ぬくらいなら、俺と一緒にいてくれ、ずっと幸せにするから。 とか?」
「あってるあってる! なんだ、やっぱり、りゅーくんはりゅーくんだね安心したなー」
僕のセリフじゃないから安心されても困るが・・・
というか龍二はもう死んでいるんだ
それを伝えても香織は生きていけるんだろうか?
「落ち着いて聞いて欲しいんだけど
・・・仮にだけれど、もしも・・・龍二はもう居ないから
カオリンには1人で生きて欲しいって言ったら、どうする?」
「りゅーくんが居なかったら生きてる意味ないじゃない!!
りゅーくんは此処に居るよ!!!! なんでそんな事を言うの!? 冗談でもいわないで!!」
甲高い叫び声を立てつつ
所謂、ハイライトを無い瞳とでも言うのだろうか・・・
すごく淀んだ目で僕を見てくる。
この女はヤバい。対応を誤るとすぐに首吊りをしそうな危うさがある。
でも弟は死んだんだ、彼女を幸せにする事は出来そうにない