知らない女
連載開始します
僕は、坂谷 龍一高校2年だ。
夏休み明け、ほとんどの学生は
もっと夏休みが続けばいいのに。なんなら永遠に続けばいいのに
と思いながら登校をしていると思うが
僕は最近、大切な人との別れがあったため
気落ちした日々を送っていたが、
登校する事によって、久々に自分の環境が変わる事は嬉しかった。
「おはよー」
「おはよう」
「おっす。おはよう」
「おはよー。久しぶりー」
そんな挨拶が教室の中で交わされている。
「よっ。龍一!久しぶり」
「あぁ。久しぶりだな晴彦」
声を掛けてきたのは春日 晴彦
その名前の通り、明るい奴で気の置けない友達だ。
「そうだな。お前ずっとバイト入れてたし。
連絡もあんましてこなかったもんあ」
「夏休みの間に色々あってな。バイトしてる間はあんま考えなくて良かったから。ほぼ毎日バイト入れてたよ」
「なるほどなー。それじゃ結構稼げたんじゃね?」
「夏休みの間だけで言えば、専業の人と変わらないくらいは稼いだね」
普段はコンビニのアルバイトをしてたけど
掛け持ちでやった、引っ越しのアルバイトが時間に対して給与が良かったから効率良かったな。
体も鍛えられるし、いいバイトだと思う。
配送業と引っ越しを掛け持ちでやっている
お兄さんから聞いた所
若い時に本気で働けば一月30−50万円稼ぐ事も出来るんだとか。
「そんなにかよ。。。そんなに稼いでどうするんだ?」
「大学に行く時に合わせて一人暮らししたいと思っててね。
ある程度貯金しておこうかと」
「来年は受験勉強に集中しないとな。バイトするなら今のうちか」
「そうそう、そんな感じ」
HRが始まるまで
他愛のない会話を続けていると
見知らぬ女が声を掛けてきた。
「りゅーくん! 学校では声を掛けるなと言われてたけど。我慢出来なくて来ちゃった。
ごめんね!でも
夏休みになってからずっと、連絡くれないし。りゅーくんが悪いんだよ?寂しかったんだよ!」
いや、誰だこの美人? うちのクラスの娘じゃないようだけど。
「えっと、人違いじゃないですか?
僕は貴女の事を知りません」
「なにを言ってるのりゅーくん? 私だよカオリンだよ?」
「カオリンさんですか・・・いや、やっぱり知りません。僕があなたみたいな美人と知り合いだったら、忘れるわけがありませんし。
何かの間違いじゃないですか?」
「間違いなくりゅーくんだよ。私が見間違えるわけがない。学校だと知らない振りをするのかな?
声を掛けるな。と言うのはそういう事なの?」
何やら困惑しているようだが、知らないのに
僕がその りゅーくん? ですとは言えない。
「えっと、もうHR始まりますし。今は元のクラスに戻ってもらえませんか・・・周りもびっくりしてますし・・・」
「しょうがないなー。わかったよりゅーくん。また後でね」
「はい。もう会わないかもしれませんけれど・・・
ちなみにりゅーくんって本名はなんて言うんですか?」
「ん? 龍二君だよ。だからりゅーくん。じゃまた後でね!」
龍二!!
それは、死んだ僕の弟の名前だ・・・
どうやら知らない女は、弟の知り合いだったらしい。