僕は彼女を幸せにする事は出来ない
「りゅーくんだ! ママの再婚相手の子供ってりゅーくんだったんだね!」
「あぁ、香織。僕もびっくりしたよ」
僕は、坂谷 龍一高校3年だ。
今日は親父の再婚相手と食事会をする為にホテルのレストランへ来た。
そこで、今一番会いたくない相手と会うことになってしまった。
「やだなぁ。いつもの様にカオリンって呼んでよ!」
「ごめんね。カオリン。突然の事だったからさ」
彼女の名前は香織
僕の彼女と言う事になっている。
「なんだ? 二人は知り合いなのか?」
「あぁ、高校1年生の頃から、、、、って事になってる」
「?? ただの知り合いにしては妙に気安いが・・・」
僕の父親は坂谷 武龍
僕達が小学校高学年の頃に、
母親が失踪してしまい、今はシングルファザーだ。
失踪する時に手紙があり
すぐには戻れないかもしれない。
3年経っても戻らなければ離婚して欲しい。
もし新しく好きな人が出来たらその人と再婚しても構わないとの事だった。
母さんに何があったかは分からないけれど
親父はそのとおりにしていた。
離婚しているし、僕もそろそろ大学生になる。
言いたい事がないわけではないが
親父の人生だ。
再婚相手が変な人じゃなければ反対しないつもりだった。
「そうねぇ。香織ちゃんが、男の子とこんなに親しいのは初めて見るわ」
親父の再婚相手の織姫さんは
名前の通りとても美しくてお淑やかそうな人だった。
織姫さんの旦那さんは香織が幼い頃に病気で他界したらしい。
女手ひとつで香織を育ててきたが
親父とは仕事先で出会って付き合い始めたそうだ。
「そうなの。私達って高校1年生の頃から付き合ってるんだよ!
両親も結婚するなんてまるで運命だね!」
「あぁ、これで、いつでも一緒だね・・・」
「え!そうなのか・・・親子で好みが似る物なのか・・・」
「そ・・・そうね。びっくりしたけれど。まだ学生なんだから清いお付き合いをしてね?」
「大丈夫だよ。私達結婚するつもりだったし! もし心配なら結婚するまではピル飲むよ」
香織から爆弾が投下されて、場が凍りつく
「あ・・・いや。誤解の無いように言っておくと
僕達はまだそういった関係までは行ってません。
もしそういう関係になるとしても大学卒業をしてからと考えてます」
「そ、、、そうね。びっくりしたけれど。
ちゃんと相談してね?」
「あぁ・・・二人がこの場でちゃんと話してくれたから
納得はしたが・・・もしもの時は避妊はしろよ・・・」
「あぁ、勿論だよ。僕はカオリンを悲しませる事は無いよ」
「りゅーくん優しい♡」
あぁ、僕が香織を悲しませる事なんてない。
だけど、僕は彼女を幸せにする事は出来ない。
だって、香織は・・・
今も死んだ弟の彼女なんだから・・・。