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ルサヴェガスの騎士③

「ラピス、お前も来るに決まってんだろ?」


「えっ?」


 俺が驚くとプルも「そうだね」と笑う。


「俺たちだけ働かせるつもりなのか?」


「いや、僕だって働くよ。来年から士官学校に行くつもりだからたくさんお金が必要だし、フォレスティアの魔物が少なくなれば、隣のテュザァーン辺境伯領の魔物を狩りまくるつもりだし」


「士官学校?」


「うん、ラインに行くときに下級士官からスタートして分隊長ぐらいになっておかないと上官次第でいきなり死ねそうだし、魔法の基礎とかを習いたいからね」


 俺がそう言うとプルが「そう」とうなずいて、すぐに「却下」と言った。


「はぁ?」


「ラピス、私の分隊に入って。魔法の基礎は私とウェインが教えるから」


「そうだな。俺とプルは中隊長や大隊長から煙たがられているからお前がにらんだ通りまた今回みたいにエルフを狩る者たちのサポートに送られる。そこでお前も働けば良いだろ?」


「うん? ちょっと待ってよ。2人って分隊なの? なんで2人? 普通は4人だよね?」


 俺が言うとプルがうなだれて、ウェインは「察しろ」と言った。


「いやいや、察する能力なんて僕にはないから」


 俺が言うとウェインは「はぁ」とため息を吐いて「そうだったな」とうなずく。


「プルは王妃様たちから嫌われているからな、誰も分隊に入りたがらない」


「おいおい、そんなことで大丈夫なの、王国騎士団?」


「本当はダメなのだが、みんな貴族だから自分と自分の家が大事なのだろうな。それにプルの部下ではよっぽどじゃない限り出世は見込めない」


 ウェインがそう言うので、俺とティアは「丁重にお断りします」と頭を下げた。


「なぜだ?」


「『なぜだ』じゃないよね?」


「そうよ」


 俺とティアがうなずき合って「出世出来ないとか無理」と言う。


「ラピスにはそこそこ出世して、さっさと魔物の群れを押し返して帰って来てもらわないと困るもん」


「そうだよ、プルを亡き者にして出世を企む大隊長とかに特攻を命じられたらどうするの?」


「いやいや……」


 ウェインはそう言って止まった。すると、プルが「残念ながらありえるね」と苦笑いを浮かべる。


「だがな、ラピス、お前は友達のプルを見殺しにするのか?」


 そう言ったウェインがニヤニヤと笑い、プルはわざとらしくうなだれる。


「その言い方はズルくない?」


 俺が言うとウェインが「ラピス」と言い、ティアが「ラピス」と言い、プルが小さく「ラピス」と言った。


 あぁ、もう。


「わかったよ、仕方ないな」


 俺が言うとティアが「ダメ!」と言った。


「だって……」


「ティア、大丈夫だ。3人なら特攻とか命じられても生き残れると思う」


「だけど……それだと私がラピスと会えないもん」


 うん?


「ラピスが王都にいないと休みのたびに会えないじゃない……」


 今度はティアがうなだれると、プルが顔を上げた。


「それだったら大丈夫よ。私たちは辺境での任務が終わるたびに一度王都に戻るからそのときに会える」


「本当に?」


「本当よ。その度にラピスから辺境での土産話を聞いたら良いわ」


 ティアが「それなら」と小さくうなずく。するとウィスが「決まったようじゃのぅ」と言って「ガハハ」と笑ったことで俺の王国騎士団入りとプルの部下になることが決まった。


 やることは魔物を退治することだからあんまり変わらないだろうし、まあいいか。


 俺がそんなふうに思っていたら、ウィスが顎をさする。


「では、カルメアたちの首輪を外し終わったら、早々にラピスとティアの婚姻を済ませねばならんのぉ」


 俺が「えっ?」と驚くとウィスが笑う。


「なにを驚いておる。王国騎士団に入るためには士官学校を出るか、貴族でないとダメじゃ。だから、まずはラピス・ルサヴェガスになってもらわねばならん」


「まあ、そう言うことになるのかぁ」


 俺が頭をかくとティアが「むふぅ」と言って腕に抱きつく。


「その前にカルメアたちの首輪を外さねばならんのぉ」


「エランさんは協力してくれるかなぁ?」


「どうじゃろうな、エレナ様なら協力してくれるじゃろうが、エランは微妙じゃな」


「そっか」


「どちらにしても、頼むしか道はないじゃろ?」


「うん」


 そうだね。現状ではエランに頼む他ない。だけど、エルフがカルメアにされて来たことを考えると難しい気もするね。


「カルメアたちの素性は隠した方が良いかもしれんのぅ」


 ウィスはそう言ったが、俺は首を横に振る。


「いや、きちんと話してお願いするよ」


 俺がそう言うとルイラから離れたカルメアも「そうね。私もそれが良いと思うわ」と続く。


「じゃが、それでは協力してもらえぬかも知れぬぞ」


「それでも、そのせいでエルフたちがウィス様やラピスを信用できなくなるのは困るもの」


 カルメアはそう言って「私は覚悟出来ているわ」と小さくうなずく。


「それは、あれか?」


「そう、私の村みたいな悲劇を生みたくないの」


「なるほどのぅ、わかったのじゃ」


 ウィスが渋い顔をしながらうなずく。


「大方決まったかのぉ、まずはエランに協力を頼んで首輪を外す。それで良いな?」


「うん、じゃあ、エルフへの連絡はよろしくね。僕は鍵を開けてくれる人に頼んでくるから」


「そうか、じゃが、首輪の鍵は複雑だと聞く。本当に鍵を使わずに外せる者がおるのか?」


「うん」


 俺はうなずいた。なんでフィニが外せるのかは知らないけど、イスティとルガドルの話だと外せると確信があるようだった。


 まあ、その辺はきっと詮索しない方が良いね。人には誰だって人に言えない秘密があるから。

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