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ルサヴェガスの騎士①

 みんなで話をしたあとでルサヴェガス家の門番に言伝を頼んで、翌日の早朝に改めてルサヴェガス家の屋敷を訪れたのだが……。


「あのさ、なんでウェインとプルがいるの?」


「おはよう、ラピス」


「遅いじゃないか、ラピス。おはよう」


「おはよう、ってか、僕は2人にエルフを狩る者の処理を頼んだよね?」


 俺が首をかしげると「ここでの話し合いを終えてから行く」とウェインが言う。


「私たちもウィス爺と改めて話をしておいた方が良いと思って……」


「そうか、それもそうだね。それで? なんでルシアとカルメアの姉ちゃんもいるの?」


「おはよう、ラピス」


 カルメアが微笑むとルシアは「わっ、私も力になってやろうかと思ったのよ」と言った。


「えっと、なんで?」


「だって、カルメアはもう隠れなくて良くなったのでしょ?」


「そうだけどさ」


「あの2人もこっちの仲間になったのよね?」


 ルシアがウェインとプルを見ながらそう聞くので、俺が「まあ、そうだね」と答えると、カルメアが「それに、これから私がお世話になる貴族家にご挨拶も必要でしょ?」と首をかしげた。


「えっ?」


「ラピスは私をここに預けるつもりよね?」


「いやいや、カルメアの姉ちゃんにはまだその話してないよね?」


 俺が聞くとルシアが「ルイラが来たわよ。カルメアの話を聞きに」と言った。


「昨日の夜?」


「そうよ」


 おいおい。


 俺はそこで後ろを振り返る。


 絶対に見張られているね。これは……。


 門前でそんなことをしていたら「お前らはいつまで遊んでいるのだ?」とルイラが出てきた。


「ルイラ姉ちゃん、おはよう。出迎えが遅いよ」


「おい!」


 とルイラが怒ってから、俺たちは応接間に通された。


 応接間にはいつものようにすでにウィスが座っていて「ラピス、おはよう」と挨拶してくれてから首をかしげた。


「なんで、トリアスとイーナ様がいるんじゃ?」


「うん、仲間になった」


「なんじゃと?」


「だから、仲間になった」


「耳は遠くなっておらんわ!」


 ウィスが怒鳴ったので、俺は「ウィス様は報告を受けてるんじゃないの?」と聞いた。


「なんのことじゃ?」


「誰かに僕の監視をさせてるよね?」


「うっ」


 ウィスが少し身を引いて「いつ気づいたのじゃ?」と笑う。


「さっきだよ。だって、ルイラ姉ちゃんがルシアのところに行くの早すぎるよ。だから監視している人を怒らないでね。ウィス様のミスだから」


「そうか、わかった」


 ウィスが笑ってうなずくので、俺は「どうせ」と続ける。


「監視していたのはギール兄ちゃんでしょ?」


「なっ?!」


 ウィスが目を見開く。そして、部屋の外に「入ってまいれ」と声を掛けた。部屋に渋々と言った様子で入ってきたギールが「なぜわかったんだ?」と言う。


「だって、このまえのオーク騒ぎ以外、あれから一度も会ってないし、礼を欠くような人じゃないと思うし、それに、ギール兄ちゃんの魔法はきっと戦闘には向かない魔法なんじゃないかと思ったんだ」


「なぜだ?」


「オークの時も集団で戦ってたでしょ? だけどうまく背後を取ったりしてたから気配を消したりするのが得意な魔法なのかなって」


 俺がそう言うとウィスが「ガハハ」と笑い、ギールは「わかるか、普通」と頭をかいた。


「俺の魔法は霧、気配を隠すのだけが取り柄の魔法だよ」


「霧魔法なの?! すごいね。戦闘に向かないなんて言ってごめん。めちゃくちゃ戦闘に向いた魔法だね」


「はぁ?! なに言ってんだ? 俺のはルイラさんの炎と違って戦闘には向かないぞ」


「いやいや、なに言ってんの? 確か剣にまとわせて太刀筋を見えなくしたり、相手の視界を奪うやり方もあったはずだよ」


 俺がそう言いながらプルを見るとプルはうなずく。


「昔、王国騎士団の副団長に『幻影』の二つ名を持った霧魔法の使い手が居たそうですよ」


 するとギールが「なっ!?」と固まって、ルイラが呆れ顔をしながら「だから普段から言っているだろ?」と笑った。


「やはり魔法は使い方ひとつだ。ラピスを見てれば、それがよくわかる。ギールはもっといろいろな使い方を試すべきだな」


「だけど、あんな無茶苦茶な魔法の使い方は出来ないですよ」


 ギールがそう答えるとプルが「王都の書庫に霧魔法の詠唱と魔法陣があったと思いますよ」と言う。


「もう一度、学び直せ」


 ルイラがそう言うと「わかりました」とギールが頭をかいて、肩を落としながら部屋を出て行った。


 ギールはこれからだよね? カルメアたちがルサヴェガス家に入れば良い刺激になるし、これから強くなるよ。


 俺がそんな風に思いながらギールを見送るとウィスが「それでトリアスとイーナ様は本当にわかっておるのか?」と首をかしげた。


「騎士団の命に背けば、お主らは懲罰を受けることになるのじゃぞ」


「わかっているさ。だけど、騎士団からの命令はあくまでもエルフを狩る者たちを襲う者の捕縛だし、この先は襲う者がいないんだ、俺たちがなにをしても問題ないさ」


「そうかのぅ。ペルペトゥスの魔女がしゃしゃり出て来なければ良いが……」


 ウィスが渋い顔をしたので、俺は「それなんだけどさ」と聞く。


「なんで侯爵夫人がエルフにこだわるの?」


 俺の問いかけにウィスは室内にいる者を見回したあとで「いずれはわかることじゃな」と呟いた。


「奴の狙いが不老不死を与えてくれると言い伝えられておる世界樹の実だからじゃ」


 ウィスの口から世界樹の実の話が出てくると思ってなかったから、俺はドキリとしたけど勤めて冷静を装った。

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