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武器③

「あのさ、ルガドルさん。これの魔石を替えるのをイスティさんに頼みたいんだけど」


「替えるのですか?」


「うん、ちょっとこのままじゃ危ないからね」


 俺がそう言うとイスティは肩をビクッと寄せて俺を見て、ルガドルの方はゆっくりと顔をイスティに向けながら笑う。


「イスティ、これは危ないのか?」


「いや、危なくないと思うよ」


「本当だろうな?」


 ルガドルがそう言って、それから俺に「危ないのですか?」と聞いた。


「うん、この前の板と同じでチタンマルマジロの魔石が使われているから、この武器ごと僕の腕も吹っ飛びそうな気がする」


 俺がそう答えるとルガドルは「えっ?!」と驚いて、イスティが「ラピス君ならやれるよ」と言った。


「いや、絶対にやばいっす」


 メソルがすぐにそう答えるとイスティがキッとメソルをにらんだけど、イスティの頭をルガドルが鷲づかみにする。


「イスティ、約束したよな? もうやりすぎないって!」


「今回は前ほどやり過ぎてないよ」


「前ほどって少しはやり過ぎたってことか?」


「だって、武器だし多少は威力も必要でしょ?」


「だってじゃない! 何度も言っているだろ、使う本人が傷つくような武器では使い物にならない」


 ルガドルがそう怒ると、フィニが「あのぉ」と言った。


「イスティさんはどんな武器を作ったのですか?」


 そう聞かれたルガドルはイスティの頭から手を離して「1つは弓だ」と棚の方を見た。


「風の魔石に魔力を通すと風でアシストしてくれるはずだったのだが、アシストが強すぎてテストした騎士は右手の指3本と左手を失った」


 ルガドルが顔をしかめて、イスティが「威力はすごかったよ」と言うと、メソルは「そうっすね」とうなずく。


「飛んでいった矢で大地はえぐられ森は大きく無くなったっす。テスト中に森の中に人がいたら間違いなく死んでいたっすよ」


「騎士の方は失った手と指はハイポーションで治ったから良かったが、鍛え直しになってしばらく大変だったそうだ。2つ目は……」


 ルガドルがそう言ったので、俺はついつい「2つ目をやらせたの?」と聞いてしまった。それにルガドルは「面目ない」とうなだれる。


「姉さんが泣いて頼んで、兄さんは渋々折れたっす」


「そっか」


 イスティはなんだかんだ無駄に綺麗だからね。愛しているルガドルは泣きつかれたら嫌と言えないのだろう。うん、それは仕方ない気がする。


 俺が苦笑いを浮かべると、顔を上げたルガドルは気を取り直してフィニを見ながら続ける。


「2つ目は剣。火でアシストしてくれるはずだったのだが火力が強すぎて使用者の騎士は右半身を大火傷。すぐに手を離したので九死に一生を得たが、それから自分の魔力属性である火が怖いそうだ」


「手を離された剣は地面に突き刺さったあともしばらく燃えていたせいで本体は全て溶け落ちて、周りの地面も溶けてクレーターになったっす」


「はぁ?」


 おいおい、土が溶けるほどの熱ってどんだけだよ。


 俺がイスティを見るとイスティは「だって」と涙目になった。


「スノードラゴンを斬れるぐらいの剣とお願いされましたので……」


 イスティがうつむくとルガドルが続く。


「使い道がなく長いこと死蔵されていたファイヤーリザードの魔石を使ったそうです」


「えっと、ファイヤーリザードって確か、ファイヤードラゴンの小さいやつだよね?」


 俺が呆れ気味に聞くとメソルが「厳密には違うっすけど、まあ、あいつの事っす」と言うので、俺は「あはは」と笑う。


「でもさ、それだとチタンマルマジロはずいぶんとランクが下なんじゃないの?」


 俺が聞くとメソルは「そうっすよ」とうなずいて「何を言ってるんですか?」と笑う。


「当たり前っすよ。ラピスさんはあべこべっすからね、ラピスさんの魔力でファイヤーリザードと同程度の土属性の魔石なんて使った日には終わりっす」


「どういうこと?」


「魔法道具の魔石はあくまでもサポート、使用者の魔力の増幅させるだけっす」


「つまり魔力が弱ければ……」


「そうっす。例えばファイヤーリザードの魔石を取り付けても大した威力は出ないっす」


 うん? 


「でもさ、逆にものすごい威力の火を使う魔法使いとかいるよね?」


「いるっすね」


「あの人たちが燃えないのはなんで?」


「専門家じゃないんで詳しくはわからないっすけど」


 メソルはそう言って頭をかいてから続けた。


「あの人たちは呼吸をするみたいに魔法による身体のサポートを使っているらしいっすから、火の強い魔法を発動するときは自分に火属性の保護を付与しているんだと思うっすよ」


 ってことはイスティだけが悪いってわけでもじゃないね。俺もさっきの話の2人もイスティの魔法道具を使いこなせなかっただけだ。


「つまり僕が魔法で身体をサポートしていれば、問題がないってことだよね?」


「そうっすね。だけど、いきなりそんなの無理だし、このまえの板の魔法道具でラピスさんの状況はわかっているっすから、それに合わせて道具を作るのが俺たちの仕事っす」


 おいおい、男前ですか? メソル!


「ごめんね、イスティさん。チタンマルマジロの魔石はしばらく使わずにあの板と同じランク以下の魔石にしてくれない?」


「えっ?」


 イスティが驚いて、ルガドルが「ラピス君?」と首をかしげるので、俺はルガドルを見た。


「話を聞いていて思ったんだけど、一方的にイスティさんが悪いわけじゃないね。僕がもっと上手く魔法を使えれば問題のない話だし、あらかじめ上限さえ決めてしまえばイスティさんは優秀な魔法道具師だよ」


 ルガドルが「そうなのですが」と苦笑いを浮かべて、イスティが「ラピス君!」と胸の前に手を合わせながら言うので、俺はメソルを見る。


「どう? メソルさん」


「そうっすね。板と同じランクの魔石なら腕が吹っ飛ぶとかはないっすね」


「そうだよね?」


「それにどちらにしてもこの魔石を姉さんにはずしてもらわないとダメっすから、もう一度チャンスを上げても良いと思うっすよ」


「じゃあ、やってみようか?」


 俺がそう言うとメソルは「わかったっす」とうなずいて、イスティは喜び、フィニはワクワクした顔をして、ルガドルだけが頭を抱えた。


 うん、なんかごめんね。

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