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武器②

 カルメアとランチをして別れたあとで、俺はメソルの工房に来た。


 まだ使ってないけど、これは改良してもらわないとやばいからね。いつもみたいに入り口からのぞくとフィニが「ラピスさん、いらっしゃっい」と笑う。


「こんにちは、フィニ。メソルさん、居る?」


「居ますよ」


 フィニが「親方〜!」と呼ぶと、メソルがいつも通りに作業場からひょっこりと顔を出した。


「ラピスさん、どうしたっすか?」


「うん、これを改良してもらおうと思って」


 俺が例の武器を見せると、メソルは顔を引きつらせた。


「それは、姉さんに頼むっすよ。俺は怖くて触れたくないっす」


 おいおい。


「あのさ、メソルさんはそんな自分では触れたくないものを僕に渡したの?」


「いや、非常事態だったっすから」


「なんか、その非常事態って言葉はずいぶんと便利に使われているみたいだけどさ。非常事態なら何やっても良いわけじゃないからね」


 メソルが「あっ」と言って、それから「とりあえず、入るっすよ」と手招きしてきた。


 まったく。


 俺は招かれるままにメソルの作業場に入り、それからいつもの椅子に座る。そして、テーブルにあの武器を置くと向かえに座ったメソルはそれを見ながら頭をかいた。


「それで、どこを改良するんっすか?」


「まずは魔石でしょ?」


「それに異論はないっす。俺も替えて欲しいっす」


「あとは横からでも後ろからでもいいからさ、弾を入れる場所を作って欲しい」


 俺がそう言うとメソルは腕を組んで、それから頭をポリポリと書くと棚まで行って紙の束を持ってきた。


「一応いくつか、考えたっす。これが外装をスライドさせて横から入れるタイプっす。あとこっちは後ろにパカッと開く蓋をつけて後ろから入れるタイプ。それからこっちが上にスライドする蓋をつけて上から入れるタイプっす」


 俺は紙に一枚ずつ目を通した。


 うん、どれも良く考えられているし、素人目に見ても良く出来ていると思う。


「なんでこの機能、付けてくれなかったの?」


「俺だって付けるつもりだったっす。だけど『もう出来てるじゃない』って姉さんがそれを持って行ったっす」


 メソルがテーブルに置かれた武器を示すので、俺は「なるほど」とうなずく。


 そう言うことかぁ。


「今からやるとするならどれなら出来るの?」


「そうっすね。外装にも魔法陣が描かれているので、出来るとしたら後ろか……あとはグリップから……」


 メソルはそこまで言うと、顎に手を置きながらゴニョゴニョと言い始めた。


 こうなるともうメソルに話しかけても返事は返って来ないので、俺はその場でしばらく待つ。


 すると入り口から突然イスティが入ってきた。もちろん俺もメソルも驚いたが、どうやらこれはフィニの差し金らしく、イスティの後ろでフィニがえっへんと胸を張った。


「姉さん……」


「メソル、楽しそうなことをしてるわね」


「はい、だけど……その、姉さんは……」


「なるほど、なるほど」


 イスティが紙の束をみて大きく何度もうなずくと、メソルの顔色が悪くなった。


「あの、兄さんは?」


「うん」


 イスティがメソルの問いに適当に返事をしながらまだ紙を見ているので、俺は「あのさ」と声をかける。


「ルガドルさんは?」


 イスティはこちらを見て「うん?」と首をかしげて「今日はルガは忙しいので1人で来ました」と言いながら目を逸らした。


 これ絶対に内緒で来たな。


「姉さん、あとで兄さんに怒られても知らないっすよ」


「なっ、なんで私が怒られるの?」


「そのカバンの中身は工具っすよね?」


 メソルがイスティが持っているカバンを指さすとイスティはそのカバンを自分の背後に隠す。


「そうだけど、だからなに?」


「兄さんから勝手な魔法道具の製作は止められているじゃないっすか? これに魔石つけたときだって怒られたっすよね」


「かっ、勝手じゃないし、メソルもいるし……」


 イスティがそう言うとメソルが頭を抱えた。


「絶対にダメっすよ。なんだかんだ言っても兄さんは姉さんに甘いから俺がめっちゃ怒られるっす」


 そう言ったあとで顔を上げたメソルがキッとフィニをにらむ。


「なんで兄さんに内緒で呼んだりしたんっすか? フィニ!」


「だって『親方とラピスさんが楽しそうなことを始めたら呼んでね』ってイスティさんが……」


 涙目になったフィニがイスティを見るとイスティは「えへっ」と笑う。


 えへっ、じゃねぇだろ?


「とりあえずさ、ルガドルさんを呼ぼうか?」


 俺がそう言うと今度はイスティが青くなった。


「今日は本当に忙しそうだったから無理だと思いますよぉ」


「あのさ、その忙しいときに抜け出して来た時点でアウトなんじゃないの?」


 イスティが「あっ」と声をもらして固まったので俺はフィニに目配せした。


 フィニが小さくうなずいて飛び出して行くと、しばらくの沈黙のあとで、イスティが「私、用事を思い出しました」と言ったが時すでに遅し、飛び込んで来たルガドルが「ぜぇぜぇ」と肩で息をしてイスティをにらんだ。


「何してんだ、イスティ?!」


「だって……」


「だってじゃねぇ!」


 ルガドルが怒ると、イスティがしゅんと小さくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超威力重加速ガンは最終兵器として残して置くのも有りだと思う。 名前も見た目も分からないから勝手につけました。
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