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報告とお願い①

 キテオと冒険者ギルドで話をしたあとで、ルガドル商会に来た。いつも通り店舗の方に回ると店じまいの作業をしていた女の子がすぐに俺に気がついてルガドルを呼びに行ってくれた。


 そして、戻ってきた女の子が「少々お待ちください」と微笑む。


「こんな時間にごめんね」


 俺がそう言って待たせてもらうとルガドルが来た。


「ラピス君、お待たせしてしまってすみません」


「いえ、こっちこそ、こんな時間にごめんね」


 俺はそう言ってから布袋に入ったファイヤーラットの魔石150個を渡す。


「申し訳ないんだけど、とりあえず150個。残り350個は後からグリシュアの村人たちが持ってくるから」


 ルガドルは「えっ?」と言った。そして「なにかあったのですか?」と聞く。


「ちょっとカティウム山にビックアントの大きな巣が出来ていてね」


「ビックアントの大きな巣……それで?」


「うん、1000匹以上の巣だったからさ、悪いんだけど、まずはそちらを対応させてもらったんだ」


「1000匹!? というとチタンアントもいたのですか?」


「うん、居たよ」


 俺がうなずくとルガドルは俺の両腕をつかんで「それはどこに?」と聞く。


「うん、重かったから冒険者ギルドに置いてきた」


「それはうちに売ってもらえませんか?」


 俺は「どうだろう?」と首をかしげる。


「その辺はキテオさんに交渉してくれない? もう冒険者ギルドに置いて来ちゃったし、僕は『構わないって言っている』って言って良いからさ」


 俺がそう答えるとルガドルは「わかりました」とうなずいた。


 そして「少しすみません」と断りを入れて俺の腕から手を離すと裏に向かって「誰か手の空いている者はいるか?」と声をかける。


 ルガドルの呼びかけに「はーい」と答えた男の子はすぐに飛んできた。それから説明にうなずいた男の子が出て行くのを確認してルガドルは再び俺を見る。


「すみませんでした。なにせ、チタンは貴重なので」


 俺が「そうなんだ」とうなずくと、ルガドルは俺の背負っているリュックを見た。


 うん、飛び出しているからね。


「ラピス君、そのリュックから飛び出しているのは?」


「うん、チタンアントの足、メソルさんに武器を作ってもらおうと思って、2本だけ売らないで持ってきたんだ」


「そうですか」


 ルガドルが腕を組んで、それから俺の顔を覗き込む。


「あの、ちなみに冒険者ギルドが売ってくれなかったときにそれを1本分けてもらうことは出来ないですよね?」


「うーん」


 まあ、弾だけなら1本あれば十分だし……。


 俺がルガドルを見るとルガドルは黙ってこちらをうかがっていた。ここでこちらの答えを急かしたり、条件をつけるような言葉を続けたりしないのが憎いね。


「良いよ」


「なっ?! 本当に良いのですか?」


「うん、預けとくからさ、冒険者ギルドから買い取れたら返してね」


 俺はそう言ってリュックをその場に降ろしてから足を1本引っ張り出すとルガドルに渡す。ルガドルは何故か呆れた顔をして俺を見て、渡された足を見た。


「冒険者ギルドが出した査定に色をつけて買い取りますね」


「わかったよ」


 俺がうなずくとルガドルもうなずいて、とりあえずチタンアントの足はカウンターに置いた。


「それで、残りのファイヤーラットの魔石の方はどうなったのですか?」


「うん、グリシュア村の人たちにしばらくビックアントの解体と回収をしてもらって、それからファイヤーラットの狩りに出てもらう予定だから少し待ってくれる?」


「それは構いませんが、なぜグリシュア村の人たちがこちらに運んで来るのですか?」


 ルガドルが首をかしげるので、俺は「ちょっとね」と答えた。


「困ってたからそれを助ける代わりに、ファイヤーラットの魔石集めは村の人たちに頼んだって感じかな」


 俺がそう答えるとルガドルは「なるほど、今回のビックアント絡みですね」とうなずくので、俺は「うん、それでね」と続けた。


「500個より多い分は買い取ってあげてくれない?」


 俺がそう言うとルガドルは「わかりました」とうなずく。


「ラピス君は、ファイヤーラットの魔石をグリシュア村の産業にするつもりなのですね?」


「うん、あの魔法道具は売れるでしょ?」


「売れると思います」


 ルガドルがニヤリと笑うと「そちらの話は私が村長と話をつけますので」と言った。


「そう、だけど出来たら儲けさせてあげてね」


「わかってますよ。商売はウィンウィンでなければ長続きはしない。共存共栄ですよ」


 まあ、その辺りはルガドルと村長に任せたら良いから俺は「うん」とうなずく。


「それでさ、イスティさんの暖をとる魔法道具を2つ分けてくれない?」


「良いですけど、2つで良いのですか?」


「とりあえず、すぐに欲しいのは2つ」


 俺がそう言うとルガドルは「わかりました」と魔法道具を用意してくれた。スキットルみたいな形の魔法道具の表面には綺麗な彫刻が施されていた。


 カッコいいけど高そうだね。


 お会計はルガドルの言い値をそのまま払おうとしたら苦笑いされて少しまけてくれた。


「ラピス君は少し交渉も覚えないとダメですね」


 ルガドルがそう言うので、俺は「うん、そのうちね」と曖昧に笑っておく。


 悪いけど、俺はそういうのは苦手だからね。

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