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グリシュア②

 カティウム山は鉱山で開拓された裾あたりは土が剥き出しになっていたが、山の上の方はまだ青々と木々が生えていた。


 俺はグリシュアの村を出て山道に入り、その場に手をついた『コンデンセイション』で集中力を高めたあとで、広く地面から砂鉄を引き上げる。


 グッと引き上げると予想以上に多くの砂鉄が地面から出てきた。


 良い感じだね。


 そして、そこからはウェインの真似をして砂鉄を薄く広げながら周囲の探索を行なった。ゴツゴツとした山肌の凹凸を確認しながら先に飛ばして行くと、森に入った。


 森の中も探り、すぐにブラックベアらしき反応を見つけたが、そこでやめずにさらに奥へと探索するとそいつらはいた。


 穴を出たり入ったりしているのはたぶんビックアント、もちろん普通ならブラックベアの敵ではないのだが、その数が異常だ。巣から出て来ているだけでこの数では、巣の中の数はちょっとじゃなくやばい。


「嘘だよな?」


 背中に冷たいものが走って俺はそう呟いた。


 1匹1匹は弱い、たぶん『コンデンセイション』をかけて精度を上げた状態の砂鉄玉ならすごく小さな玉でも倒せると思う。だけど、なにせ数が多い。


 手を出してビックアントが興奮状態になって襲って来たらタダでは済まない。仮に板を使って逃げればなんとか自分だけは逃げられるかもしれないけど、グリシュアの村は壊滅だ。


「どうする?」


 むなしい声が意味もなく口から出た。


 そして、どうしても『ウェインとプルが居てくれたなら』と思ってしまう。2人が一緒なら相談も出来たし、きっと楽勝だったと思う。


 俺より2人は優秀だからね。


 そう思って俺は「フフッ」と笑いながら顔を歪めた。


「何か打開策はないのか?」


 巣穴を火責め?


 穴の入り口を全て塞いで火を投げ込めば、ビックアントの体をおおっている油に火が付いて燃え広がると思うが……あいつらは穴が掘れるから無駄だ。それこそ一気にものすごい数のビックアントが巣穴から出てくれば、大惨事になる。


 火がダメなら水か?


 近くの川から水を引いて巣穴に流し込む。いやいや、これも結果は変わらない。全部が窒息してくれたらラッキーだけど、一気に入ってきた水に流されて他の入り口から押し出されたビックアントが興奮状態でグリシュア村を襲うだろう。


 俺の魔法で地道に倒す?


 これは目に見えているな、仲間をやられて目を赤くしたビックアントが間違いなく押し寄せてくる。


 うーん。


 そう思ったあとで少し巣穴の中も調べてみたが、ちょっとじゃない量だった。やっぱりあまりにも多すぎる。どちらにしてもまずはグリシュア村のみんなを逃さないと……。


 俺がそう思ったときに、ビックアントがガチガチと歯を鳴らし始めた。それは1匹から始まったが、1匹、また1匹と次々に連鎖していく。


 なんだ?


 俺がそう思ったとき、ブラックベアが近づいてきたビックアントを倒したのだとわかった。


 おいおい、頼むよ……。


 もう躊躇している時間はなかった。


 俺はグッと地面からさらに大量の砂鉄を引き上げて、すべての砂鉄を玉にする。


 そして、探索に使っていた砂鉄も全て玉にしてから宙に浮かした玉を地面に引き寄せて、手前から手当たり次第にビックアントの数を減らして行った。


 ブラックベアとビックアントの群れとの戦いも始まった。


 ブラックベアも善戦しているが、数が多すぎるので辛そうだ。なので、そちらの手助けをする意味で近くにある穴から順番に砂鉄で作り出した鉄の板で塞ぐ。


 するとグッと体の底の方が揺らいだ。やっぱり魔力消費が激しいようだ。


「やばいね……」

 

 初めてのことに少し動揺したが、そのあとも玉でビックアントの数を減らしながら、穴が開くたびに砂鉄で作った鉄の板で穴を塞ぐ。


 正直言ってイタチごっこだ。


 仕方ないので、塞いだ穴の中で玉をぶつけ合って火を起こした。バチっとついた火花が近くに転がっていたビックアントの死体に燃え移ると、次々に引火して行く。


 ギィギィと叫びながら逃げようとするビックアントたちも次々に玉で倒して、薪になってもらうと火は巣の中に広がっていった。


 あとはブラックベアの目の前に空いている穴以外をすべて塞ぎ、ブラックベアには責任をとってもらうことにした。


 だけど、嬉々としたブラックベアが順調に穴から出てくるビックアントをなぎ倒していくので、とりあえずは雑魚はブラックベアに任せる。


 たぶん自らの巣を追われたうっぷんも溜まってたんだね。


 そして、また新たに空いた穴から奴らがガシャガシャと音を立てながら出てきた。


 感知してたから出てくることはわかっていたけど、やっぱり実際に見ると嫌だね。上位種は。


 メタリックなアイアンアントが30匹はいるので少し苦笑いを浮かべながら、俺はそいつらを穴から出てきた順番に空へと打ち上げる。


 地面にすべてを縛りつけるのは無理なので、次々に磁力で空へと打ち上げて、天高く撃ち上げてから出てきた穴を目掛けてすべて引き寄せた。


 ドォン! ドォン!


 次々に降り注いだアイアンアントがクレーターを作ると、やっぱりそのクレーターから銀と金のアントがはい出てくる。


 シルバーアントが7匹とゴールドアントが2匹。思ってたより多い。俺が苦笑いを浮かべると黒光するアントがゆっくりと出てきた。

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