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オーク脂②

 俺たちに倒されたオークが並ぶ。ウェインとプルにあっさりと首を落とされた4匹と、俺が倒したオークが1匹。


 すぐにオークの鼻を切り取り魔石を抜き取り、それからオーク脂を採取して、オーク脂は5匹で1樽と3分の2分まで溜まった。


 この分なら5樽溜めるのは楽勝だね。


 うーん。だけどやっぱりウェインとプルは強い。


 ルシアに2人が騎士団員と聞いて思い出したけど、たぶん2人は8歳で騎士団入りした天才魔法使いと10歳で騎士団入りした天才剣士なんだと思う。


 いや、俺だって俺たちのような一般的な冒険者とはいろんな意味でレベルが違うと思っていたんだよ。


 いやいや、本当に。


 だけど、今回は『コンデンセイション』を使って集中力を高めたおかげでウェインとプルの魔法の正体がなんなのかわかった。


 ウェインは風魔法で作った刃、プルは水魔法で作った刃でオークの首を斬り落としていた。


 普通では目に留まらないほどの速さで手から撃ち出された魔法の刃。


 正直言ってそんなものを相手をするのはごめんだ。


 だけど、俺はルシアを助けてエルフを狩る者たちと敵対すると決めたからね。もし、ルシアが言うようにウェインたちがあちら側についているというのなら戦わないといけないんだよね。


 俺は小さく「はぁ」とため息を吐き出した。


 そんなことは今から考えても仕方ないので今は置いておこう。うん。


 それから俺もああいう風にかっこいい刃でバシッとオークを倒したかったのだが、俺には無理なので15センチの大きさの矢尻型の砂鉄玉でオークの喉あたりを撃ち抜いて倒した。


 これも『コンデンセイション』のおかげで威力と精度が上がったので、俺も強くなったと思う。そのうちに砂鉄を固めた鉄の刃とかでサクッと倒したいね。


 今はまだ槍や矢尻のように尖らせて刺すことは出来るが、刃にするような精度はない。それでもまだ魔法をまともに使えるようになってそんなに経ってないし、詠唱も教わったばかりだからこれからだよね?


 うん、頑張ろう。


 そのあともウェインが風の探索魔法であと2つの群れを見つけてくれたので、3人でそれを狩った。


 俺も『コンデンセイション』を使えばオークの分厚い胸でも矢尻型の砂鉄玉で撃ち抜けたので、ゴブリンの錆びた武器がなくてもオークをかなり楽に倒せるようになった。


 樽は5樽全部にオーク脂が溜まったので、草原で待っていたルガドル商会の従業員の馬車まで戻る。


 草原の端に止まった馬車の御者台で従業員の男の人があくびをしながら待っていた。


「お兄ちゃん、待たせしてしまってごめんね」


 俺がそう声をかけると、男の人は「気にしなくて良いよ」と笑う。


「これも仕事だし、俺はぼぉーとしているのが好きなんだ」


「そっか、ありがとう」


 磁力魔法で馬車の荷台に樽を乗せると、従業員の男の人は「やっぱりすげぇな」と言う。


「俺にもその魔法があれば積み下ろしが楽なのに」


 確かに楽だね。もしかしてこれで稼ぐのもありなのか?


「じゃあ、ルガドルさんたちによろしくね」


「わかったよ」


 従業員を見送って俺たちは街に戻る。


 いつもみたいにイコブと少しおしゃべりしながら門を通り、冒険者ギルドへ。中に入ると驚くほど静かなので俺は眉を寄せた。


 うん? エルフを狩る者たちが誰もいないね。


 酒場をチラッと見てそれからカウンターまで来たが、いつもの女の子もどこか落ち着かない様子だ。


「すみません、今日はオークの魔石の買い取りと討伐の報酬をもらいたいんだけど」


「はい、わかりました」


 女の子が少しビクビクしているので、俺は「どうかしたの?」と聞く。


「いえ、なんでも……ありません」


 おいおい、そんな言い方だと『なにかありましたよ』って言っているような物だよ。


 だけど今は話してもらえそうもないので、とりあえず布袋に入ったオークの魔石と鼻をカウンターに置いた。


「えっ? こんなに……」


「うん、それなんだけどさ、キテオさんにかなり街の近くまでオークが来てるって伝えてもらえる?」


 俺がそう言うとウェインが「一度大規模な討伐も視野に入れた方が良いと伝えてくれ」と続いた。


 確かにこのままだと街の人たちにも被害が出そうだもんね。門にいるイコブたちならゴブリンが来ても問題ないかもしれないけど、オークは強敵だ。かなりの被害が出ると思う。


 これはウィスの方にも報告しといた方が良いのかもね。


 俺がそう思っていたら女の子は「わかりました」とうなずいて「では査定しますので少々お待ちください」と査定に入った。


 俺たちは立っていても仕方がないので酒場スペースの椅子に座って待つことにした。


 いつもならガヤガヤと騒いでいるエルフを狩る者たちが1人もいないのが気になるが、焦っても仕方がない。


 ルシアがさっそく動いたのかもしれないけど……1人でほんとに大丈夫なのかなぁ。


 そんなことを思いながら俺が周りを見て「今日はエルフを狩る者たちいないんだね」と呟くとウェインが「そうだな」とうなずく。


「エルフの探索の方はオークが多すぎて進んでないようだったが、少し動きがあったのかもしれないな」


 ウェインの言葉に俺も顔をしかめたが、一緒のタイミングでプルも顔をしかめた。


 やっぱりプルも良く思ってないのかもね。

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