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指名クエスト③

 ルガドル商会はメイン通りに面した良い立地にドカンと店を構えているのかと思っていたけど、場所はメイン通りから北に一本入った裏通りで、店構え自体もそんなに大きくなかった。


 というか、たぶん作業場や倉庫の方が広いんだろうね。


 敷地に対して店舗スペースが小さい。


 俺はガラガラと引き戸を開けて店の中に入って息をのんだ。昼間とはいえ店内が驚くほどに明るい。


 そして、魔法道具がメインの商会なのだから当たり前なのかもしれないが、かなりの面積を使って所狭しと置かれた魔法道具が色鮮やかで綺麗だった。


 俺が持っている騎士団から支給された金属だけで出来ていて飾り彫もないシンプルな物とは大違いだ。


 店員の女の子に声をかけて、ルガドルを呼んでもらい。俺たちはそのスペースで魔法道具を見る。


「すごいな」


「そうよね。王都でもイスティさんの魔法道具は人気なのよ」


「僕はあまり魔法道具は持ってないけど、人気なのもわかる気がするよ」


「そうなんだ。それでラピスはどんな魔法道具を持っているの?」


「種火と湧水は持ってるよ」


 俺が答えるとプルもウェインも「えっ?」と驚いた。


「おい、2つしか持ってないのか?」


「うん、そうだよ」


「まさかとは思うが、光の魔法道具も持っていないのか?」


「ないよ、宿屋には備え付けられているし、外なら焚き火で充分だし」


「家ではどうしていたのだ?」


「うん、山小屋ではランプを使ってたよ」


 母さんと暮らしていた王都の家には小さな光の魔法道具が備え付けられていたが、昔母さんと良く行った爺ちゃん山小屋ではランプを使っていた。爺ちゃんは古い人だったからね。火種も火打ち石だったし、水は山からの湧き水で魔法道具が1つもなかった。


 今の俺は爺ちゃんと山で暮らしていて、爺ちゃんが死んだから山から降りてきた設定だからね。こっちの説明が良いだろうね。


 ウェインが目を見開きながら「ランプ……」と呟く。


 まあ、ここまで魔法道具が発展している世の中でランプなんて古い物を使っているのは、きっとうちの爺ちゃんぐらいだったかもね。


「ラピスってかなり山奥で暮らしてたんだね」


 俺は「うん」と答えると、ウェインが「なるほどな」とうなずく。


「通りでラピスはデタラメなわけだ」


「やめて、ウェイン。ラピスがかわいそうだよ」


 プルはそうかばってくれて……。


「この前まで山奥で暮らしてたんだから、ありえないぐらいにあべこべなのも仕方ないよ」


 うん、これはかばってないね。


 俺が「あはは」と笑うと、ウェインが苦笑いを浮かべた。


「冒険者としての腕前は悪くないが、魔法の運用がデタラメで基本をまるで知らない。それにそんな馬鹿げた魔力量なのに魔法使いとして鍛えて来なかったのはどう考えてももったいない」


「そう、どう考えてもラピスはおかしいね」


「いやいや、2人して言い過ぎじゃない?」


「言い過ぎじゃない」


「そうだよ」


 俺が『おいおい』と思っていたら「お待たせしてしまってすみません」とルガドルが来た。


「いえ、大丈夫だよ。魔法道具を見せてもらっていたから」


「そうでしたか、なにか気に入った物がありましたか?」


「ごめんなさい。まだ見始めたばかりだったから、また今度来たときにゆっくり見るね」


「はい、ぜひ」


 そう言ったルガドルに「では奥にどうぞ」と連れられて俺たちは店の奥にある応接間に通された。


 応接間にはイスティがすでに待っていて、笑顔で出迎えてくれていた。


「3人ともいらっしゃい。今日は来てくれてありがとうございます」


「うん、イスティ姉ちゃん。お招きいただきありがとう」


 俺が言うとイスティはニッコリと笑った。そして、俺たちに向かえのソファを勧めるので、俺たちは並んでそこに座る。


 やはり大店の商会の応接間だけあってきれいな革張りのソファは座り心地も良い。


「それで頼みたい素材ってのはどんな物?」


「そうですね。その前に、ラピス君の魔法を見せてもらえないかしら?」


 イスティがそう言いながらテーブルに体を乗り出すので、俺は少し身を引いた。


「えっと、それは秘密だから」


「なぜなのですか? 少し、少しだけでも見せてもらえませんか?」


 テーブルに手をついて美女が目をキラキラさせながらぐいぐい来るので、なんとなく見た目と中身が合ってない気がする。


 まあ、俺が言えたことじゃないけどね。


「イスティ、やめないか。冒険者は基本的に手の内は明かさないものだといつも言っているだろ?」


「でもでも、ルガだって気になるって言っていたじゃないですか?」


「確かに言ったが、ラピス君が困っているからな。その辺にしとけよ」


 ルガドルが呆れ顔になったが、俺は思わず「プフッ」と笑ってしまった。


 だってイスティはあんまりにも想像していた魔法道具師と違うからね。


「笑うなんてひどいじゃない?」


「えっと、ごめん。じゃあ、お詫びに少しだけ見せるから誰にも言わないって約束してくれる?」


 俺がそういうとその場にいた全員が驚いた。そして、代表してルガドルが「ラピス君、良いのですか?」と俺に聞く。


「良いよ。隠してもそのうちにバレるし、それにイスティさんも依頼をするにあたって、僕の魔法を知っておきたかったんでしょ?」


 俺が首をかしげると、イスティは「ラピス君は話のわかる子ですね」と笑ったが、ルガドルは「イスティはただ知りたいだけだと思いますよ」と困り顔になった。

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