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指名クエスト②

 キテオにルガドル商会の場所も教わったし、ウェインとの手合わせと身体強化の魔法の練習でかなり汗だくになっているから、いったん『金の鶏亭』に帰って、昼食前に銭湯にでも行こうかと思っていたら練習場から戻ってきたプルに行く手を遮られた。


 顔が近いな。


「ラピス、お昼は?」


「じゃあ、3人で食べに行こうか?」


 俺が聞くとプルは嬉しそうに「うん」とうなずく。


 ウェインも誘い『金の鶏亭』に帰って銭湯で汗を流してからピエルといつも行っている店に来た。


 もちろんピエルも来たがったが今日は『金の鶏亭』が忙しいらしくサリヤに「今日は諦めなさい」と捕まり無理だった。


 残念だけど、忙しいなら仕方ないよね。


 店の前まで来ると、店の外観を見たウェインが「へぇ」とうなずく。


「なかなか良い店だな」


「本当だね」


 2人はそんな感想を言った。


 あのさ、俺なんて小物だから初めて来た時はビビったのに、その落ち着き払った反応は何? 少しはビビってくれても良くないか?


 俺がなんとも言えない気持ちになりながら店の扉を開くと、すっかり店員の女の子たちにも顔を覚えられたので問題なくテーブルに通されて3人でメニューを見る。


 そして、しばらくにらめっこしていたプルが顔を上げた。


「ラピス、なにがおすすめ?」


「うーん、どれもおいしいけど、個人的にはキノコとナスのボロネーゼがおいしかった」


「ほお、では俺はそれにする」


 俺の意見に質問してきたプルではなくウェインが食い付いて、プルが「他には?」と聞いてくる。


「レッドサーモンのチーズクリームパスタはペンネがとろりとしたソースにからんでおいしかったよ」


「うん、私はそれにする」


 プルもそんな感じで決まったので、俺はさつまいもとベーコンとほうれん草が入ったグラタンにした。


 料理が来るとプルが「それもおいしそうだね」と俺の頼んだグラタンも食べたがったので、せっかくだからすべてを3等分してみんなで分けて食べることにした。


 うん、やっぱりどれもおいしいね。


 たわいもない話をしながら俺たちがすべてを食べ終わると店に入ってきたその人が「食事中に申し訳ない」と俺たちのテーブルに来た。


「あれ、この前のお兄ちゃん?」


「名乗りがまだでしたね。私はルガドル、ルガドル商会の商会長をしています。今日はクエストを受けてくれてありがとうございます」


「お兄ちゃんがルガドルさんだったのかぁ、こちらこそ指名クエストありがとうございます」


 俺が笑うとルガドルは微笑んで「この子たちはお友達ですか? この前の子とは違うみたいですけど」とウェインとプルを見て目を見開いた。


「うん、そうだよ。ウェインとプル」


 俺がウェインとプルを紹介するとルガドルは「ウェイン? プル?」と首をかしげる。


「やあ、ルガドルさん、久しぶりだな」


「うん、ほんとほんと」


 ウェインとプルがそう言うとルガドルが「そうですね」と微笑んだが、その微笑みは俺に向けた笑みより深い気がする。


「2人はルガドルさんと知り合いだったんだ」


「あぁ、王都で何回かルガドル商会からのクエストを受けたことがあるのだ」


「そうそう」


「へぇ、そうだったんだね」


 まあ、平の兵士だった俺は知らなくてもどう考えても2人の実力なら王都では名のある冒険者だもんね。冒険者に依頼を頼むような商人のあいだではきっと有名なんだろう。


 俺がそう思いながら3人を見ていたらプルが首をかしげた。


「そういえば、ルガドルさんはラピスにどんな用事なの?」


「はい、私ではなくイスティが新しい魔法道具を作るのに頼みたい素材があるので、今日は前回頼んだウルフのお礼と合わせてお招きさせて頂きました」


「なるほどね」


 プルがうなずくので、俺が「この前のウルフは2人が手伝ってくれたんだ」と言う。


「えっ? では……」


「いや、俺たちはあくまでも手伝いだ。レッドウルフを含む3匹はラピスが倒したのだからな」


 ルガドルが「そうでしたか」と胸を撫で下ろす。


 これからまた依頼するのに期待した能力じゃなかったら困るもんね。というか、そう考えるとウルフの討伐は試験みたいな物だったのか?


 俺がそんな風にうなずいていたらプルが身を乗り出しながらルガドルの顔を覗き込んだ。


「ルガドルさん、私たちもお邪魔していい?」


「もちろんですよ」


 ルガドルがすぐにそう答えたけど、なんか笑顔が引きつっている気がする。


 まあ、プルは近いからね。そりゃあ、いきなりあのかわいらしい顔に覗き込まれたら顔も引きつるよ。


 そこからルガドルが一緒に来ていた女の人を紹介した。


「はじめまして……ではないのですが、魔法道具師のイスティです。よろしくお願いします」


「えっと、ラピスです。こちらこそよろしくお願いします」


 イスティが頭を下げたので、俺もそれに続く。


 それにしても魔法道具師イスティがルガドルの奥様で、この前も一緒にいた女の人だったとは思わなくて驚いたね。


 とりあえず、その場は挨拶だけ交わして食事が終わっていた俺たちはおいとまさせて頂いた。そして、午後からは3人でルガドル商会にお邪魔することになった。

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