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指名クエスト①

 練習場でプルから身体強化の魔法を教わって、練習をしたあとで、キテオに連れられて俺がカウンターに戻って来ても、相変わらずエルフを狩る者たちは酒場で酒を飲んで騒いでいた。


 俺たちの手合わせを見に来ないのも、まだ練習場にいて若い冒険者たちの訓練を見ているウェインとプルに絡みに行かないのもなんかおかしい。


 ウェインもプルも腕の立つ子供なんだから、自分たちの仲間を返り討ちにした子供なのではないかと怪しんで、俺のときみたいにカルメアが絡みに行ってもおかしくないのに……。


 そんな風に思った俺がエルフを狩る者たちが騒いでいる酒場を見ると、カルメアが俺にウインクして来るのでとりあえず「うぇ」と嫌そうな顔だけ返しておいた。


 やっぱりなんか不気味だね。


 俺がカウンターに入ったキテオの方に向き直ると、キテオが書類をカウンターに置く。


「今回のクエストはそれ?」


「あぁ、ルガドル商会の商会長がラピスに会いたいそうだ」


「えっ? 何のために?」


「わからんが、ウルフの件のお礼じゃないか?」


 キテオが首をかしげる。


「それって、キテオさんが言ってた大店の商会だよね?」


「そうだ、フォレスティアでは1番でかい商会だな」


 キテオがニッと笑うので俺はもちろん「無理」と答えた。


「お前、またか?」


「だってさ、礼を言うために呼び出すって嫌な予感しかしないよ」


「大丈夫だって、ちょっと顔出してお茶をしながら話をするだけで銀貨2枚だぞ」


 そう言いながら2本の指を立てているキテオを俺はにらみつけた。


 だってさ、ティアのお茶会のときもキテオはそんなこと言ってたよ。もちろんキテオには話せないけど、あの日だってひどい目にあった。


 ティアがいなかったら『何者なんだ?!』と言われながら拷問されてたかもしれないよ。


 それに……。


「僕はエルフ関連の仕事は受けないよ?」


「あぁ、わかってる。安心しろルガドル商会は奴隷を扱ってない」


「えっ? 奴隷を扱ってないのに大店ってすごいね」


「あのな、奴隷を扱っている商会なんてほんの一部でほとんどの商会はまともに商売をやっているんだぞ」


 そう言ったキテオに俺は「いいの?」と首をかしげる。


「キテオさん、その言い方だと奴隷を扱っている商会がまともじゃないって聞こえるよ」


 キテオが『あっ』と言う顔をしてエルフを狩る者たちを見て、それから頭を抱えた。


 うん、やつらのバックにいる商会はそれはそれはでかいだろうからね。


「それで、ルガドル商会は何をメインに扱っている商会なの?」


「そりゃあ、フォレスティアの名産と言ったら魔法道具だろ?」


「魔法道具!」


 おいおい、一気にお会いしたくなったよ。


「ってことはさ、扱っているのは魔法道具師イスティの魔法道具ってこと?」


「そうだ」


 俺の気持ちを察したキテオはカウンターに置いてある書類を俺の方にスッと押す。


「ほら、その辺の話も本人から聞いてきたら良いんじゃないか?」


 まあ、確かに魔法道具には興味がある。兵士の時は高くてとてもじゃないが買えなかったから店にも行ったことなかったけど、今は買えるから行ってみたい。


 だけどね、キテオがニタニタと笑うのが憎いので、俺は目を細めた。


「キテオさん、そんな意地悪するなら僕にも……」


 俺が言い終わる前に慌てたようにキテオが「おい、ラピス。待て、待て」とカウンターに身を乗り出して「俺が悪かった」と頭を下げた。


「いや、まだ何も言ってないよ」


「言わせねぇよ。いまお前が居なくなったらうちは終わる」


「それはさすがに大袈裟だよね?」


「大袈裟じゃねぇ、魔物の活性化でただでさえ人手が足りないのに、あいつらがうちの比較的高ランクな冒険者たちを駆り出しているからな」


 キテオが苦々しくエルフを狩る者たちを見た。


 なるほど、確かに今日のギルドには若い冒険者しかいないもんね。みんなエルフの捜索に駆り出されているのか?


「そういえば、ダゴルさんたちは?」


「あぁ、ダゴルとマケトたちはウィルッチに行く職人たちの護衛の手伝いだ」


「護衛の手伝い?」


「あぁ、商業ギルドから頼まれてな。復興の手伝いに行く職人たちの護衛に行ったんだ。まあそうは言っても周りの森はほとんど魔物がいないらしいから、どうせダゴルたちの事だ、村人たちに混ざりながら復興の手伝いをして来るんだろぜ」


「そうだね。そんな気がするよ」


 俺は思わず微笑んだ。


 村のみんなに紛れて作業している4人が想像出来たからね。


 でもダゴルたちがエルフの捜索に参加していなくて良かった。ダゴルたちとは敵対したくないからね。


 もちろん、フォレスティアの冒険者たちとも敵対したくないけど、いざとなったら俺はエレナたちの味方をする。それは仕方ないよね?


「それでこれはどうする?」


「そうだね、それじゃあ、銀貨2枚もらっておいしい紅茶でも飲みながらイスティの魔法道具の話を聞いて来るよ」


「そうか。じゃあ、午後からラピスがお伺いしますって先ぶれを出すが、いいな?」


「うん、お願い」


 という事で、今日の午後はルガドル商会に行くことになった。

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