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下調べ

 ウルフの痕跡を探しながら街道を歩いて、しばらくしたらゴブリンたちに出会った。


「グゲェゲェ」


 俺を見つけて笑ったゴブリンをいつも通りに砂鉄玉で撃退して、さらに逃げようとした奴らもすべて倒す。もちろん耳を切り取り、魔石を取り出して、錆びた武器も回収した。


 このゴブリンたちもまさかこんな子供にやられるとは思っていなかっただろうね。


 俺は倒れているゴブリンを見ながらそんなことを思ってまた歩き出した。


 そこからもたまに出会うゴブリンを倒しながら、ウルフの痕跡を探していたら、馬車が襲われたらしい場所に来た。


 折れた矢が転がり、木が少し焼け焦げて、地面も少し荒れていた。


「襲われたのはこの辺りみたいだな。ここから入ってみるか?」


 俺は魔の森に入った。


 日の光がキラキラと差し込んで来て、苔むした岩や根をさまざまな形に切り取りながら照らす。そんな森の中を周りにふわふわと砂鉄玉を浮かせながら歩いていたら、派手な戦闘音が聞こえた。


「誰か戦っているのか?」


 森の中では街道とは違い基本的に人の獲物には手出し無用なのだが、あんまりにも派手な戦闘音なので、俺は走って様子を見に行った。


 木がなぎ倒された一帯で、戦っていたのはティアと同じ歳ぐらいの女の子だった。


 2匹のオークに囲まれている。


 まずいね。


「ねぇ、君。助太刀するよ」


「うん、助かる」


 俺の呼びかけにその女の子がそう答えたので、布袋からゴブリンの錆びた剣を取り出して投げながら磁力で飛ばす。


 俺が飛ばした錆びた剣がオークの胸に突き刺さると、もう1匹のオークの首がコテリと落ちた。


 えっ? 


 まったくわからなかった。その子が右手を横に振ると、オークは「グモォ?」と鳴いて、その後で首が横にスライドしながらストンと落ちた。


 マジか……。


「助太刀はいらなかったね」


「そんなことないよ、ありがとう……えっと?」


「僕はラピス。君は?」


「うん、私はプル」


 その子がそう答えたところで「大丈夫か?」と男の子が寄ってきた。


「うん、ラピスに助けてもらったからね」


「そうか、ラピス、ありがとう。俺はウェインだ」


「いや、助太刀はいらなかったね。余計な真似してごめん」


「気にするな、プルのことを心配してくれたのだろう。ラピスはなにも恥じることはないぞ」


 ウェインはニヤリとサムズアップしたけど、似合いすぎるぞ、お前はイケメンか?


 それに高価な物ではないようだが身なりもやたらと綺麗だし、さっきの魔法もすごいからもしかしたらこの2人は名のある冒険者なのかもしれないな。


「ところでラピスはこんなところで何をしていたのだ?」


「うん、ウルフ討伐のクエストを受けたから、下調べに来たんだ」


「下調べ?」


「うん、王国内でははあまり出ないウルフが相手だし、クエストの話を聞いたのが昼過ぎだったからね。とりあえず今日は調べて、明日は朝から討伐しようかと思って」


「慣れない相手なのに討伐を受けたのか?」


 ウェインが眉を寄せるので、俺は「うん」と微笑む。


「ギルドの副マスターからの頼みだし、それに慣れてないからと断って街道で人が襲われたら嫌だろ?」


 ウェインは「なるほど」とうなずくとプルを見た。


「我らもラピスの手伝いをしよう。手伝ってもらったお返しだ」


「そうだね、私もそれが良いと思う」


「いいの?」


 俺が聞くと2人は「いいさ」と笑った。


 とりあえず倒したオークから鼻と切り取り、魔石を取り出す。そして、少し離れたところにも倒したオークは3体倒れていたので、こちらの解体も手伝う。


 こちらも大きな斧でスパッと斬られたように首を綺麗に斬り落とされていた。


 全部プルが倒したわけないし……おいおい、この2人本当に強すぎないか?


「それで、巣の場所はわかっているのか?」


「いや、それを探しに来たんだ」


「そうか、ではちょっと待っていろ」


 そう言ったウェインはプルを見る。


「プル、ちょっと探るから頼む」


「うん、任せて」


 プルがうなずくのを確認したウェインは目を閉じて手を広げた。


 フワッと風が吹く。それは優しく吹くそよ風のようだったが、ウェインを中心に輪が広がるように吹いた。


 風の探索魔法なのかな?


 俺がそう思ったときにウェインは「いた」と笑って目を開けた。


「大樹の根本に巣を作ったようだ、数は8、レッドウルフが1匹いる」


「うん、たぶんその群れだよ」


 俺が笑うとウェインは苦笑いを浮かべた。


「この規模の群れを1人で倒すつもりだったのか?」


「うん、そうだけど?」


 俺がうなずくとウェインは俺の格好を見た。


「でもラピスは魔法使いタイプだろ? ウルフは動きが速いし、賢いから魔法は当てにくいぞ」


「うん、でも僕はナイフも使えるし、大丈夫だと思うよ」


 俺が腰のナイフを見せるとウェインは「そうか」と笑って、それから「まあ、我らもいるから大丈夫か」と呟く。


「ウェイン、失礼だよ。ラピスに」


 プルが膨れたので、俺は「大丈夫だよ、プル」とうなずく。


「ウェインの方が僕より強いし、僕も慣れない相手だから2人が居てくれて頼もしいよ」


 うん、正直な話、ウルフはともかくレッドウルフに僕の魔法が通用するのかわからないからね。


「いや、今のは俺が失礼だったな。ラピス、すまない」


「気にしないで、本当に気にしてないから」


 ウェインに俺がそう言うとウェインは「埋め合わせに張り切るとしよう」と笑った。


 うん、ほどほどにしてね。俺がやることなくなりそうだからさ。


 俺たちはウェインの案内で森の中を進む。そして、ウェインの言う大樹の根本に来た。

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