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ウィルッチ②

 俺は俺の肩をつかんだダゴルを見上げた。


「いや、物資の運び込みをしたら、ダゴルさんたちも中に入ってくれる?」


「打ち合わせはしないのか?」


「しないよ。時間ないし」


 ここでのんびり話をしていたらせっかく森を抜けて時間を短縮した意味がない。俺は日没までの約1時間で、終わらせるつもりだからね。


 ダゴルが俺を見て「そうか、わかった」とうなずくと荷物を全て運び込む。馬も集会所に入れてから、俺はダゴルを見た。


「ダゴルさん、悪いんだけど、これから見ることは忘れてくれるようにみんなに頼んで欲しいんだ」


「それはお前の魔法を見せるってことだな」


「うん、今から集会所の1階部分を僕の魔法で囲むから、ダゴルさんたちは2階からスケルトンたちが上がって来ないように攻撃してくれる?」


「わかった、任せろ」


 ダゴルがうなずいて集会所に入ると、オルナが出てきた。


「ラピス、これ一応飲んでおいて」


「うん、ありがとう、オルナ姉ちゃん」


 俺はそのマジックポーションを飲む。ぐいぐいと喉を通って行くと、胸の真ん中から力が湧いてきて、それからぐるぐると体を巡る。


 小さな頃から30まで諦めずにコツコツ魔法の練習もしていた。兵士の頃は土魔法だと思い込んでいたせいでツチボコしか出来なかったけど、おかげで魔力量はかなり多いようでまだ余裕はあった。


 でも油断は禁物だよね?


 オルナが集会所の中に入ったのを確認して「誰も出て来ないでね」と声をかけながら俺は地面に手をつく。広く地面の中から鉄を集めていき、それを板状にするイメージを作る。


 集会所の周りにぐるりと鉄の壁を作るのだ。とりあえず目指す厚みは5センチ。


「立ち上がれ!」


 ギュンと魔力を込めると、集会所の周りにゴゴゴッと鉄の壁が立ち上がった。


「おい、これって?」


「ありえないわ」


「鉄でやすよね? これ?」


 壁の向こうからコンコンと壁を叩くマケトたちの声が聞こえる。


「じゃあ、僕は親玉を倒しに行くから……」


 うん? そういえば……。


「それでさ、親玉はどこ?」


 俺が声をかけるとダゴルが2階から顔を出して「だから言ったろ?」と言う。


「ごめんなさい」


 するとダゴルは隣にいた村長に「それで親玉はあの森か?」と聞きながら俺たちが来た南西とは違う北側の森を指さす。


 ダゴルが指さした森はウィルッチの周りの森の中では1番密度が濃そうだ。


「そうですじゃ、日が登ってきたら少数を残してスケルトンたちは周囲の森に引いて行ったのじゃが、メタリックなスケルトンたちはあの森ですじゃ」


「だとよ」


「わかった。ありがとね、ダゴルさん」


「あぁ、ラピス。無理はするなよ」


「それは無理」


 俺が「ニシシ」と笑うとダゴルが「まったく」と笑う。


「さっさと行ってサクッと終わらしてこい」


「はーい」


 俺は歩きながら飛ばした砂鉄を引き寄せて集めて、小さな砂鉄玉を大量に作るとそれを周囲に浮かせながら北の森に足を踏み入れた。


 薄暗い森の中ではスケルトンが待ち構えていた。


 でもすぐに打ち出した矢尻型の砂鉄玉はスケルトンの盾に弾かれた。もちろん、移動しながら連続で打ち出して、盾を壊して、骨を削り、コアを破壊する。


 やはりゴブリンのようにはいかないね。


 コアを破壊されたスケルトンがカタカタと音を立てながら崩れ落ちて骨の山を作ると、その上を飛び上がって越えてきたスケルトンが俺に向けて錆びた剣を振り下ろす。


 俺は地面を磁力で弾いて後ろに飛んだ。


 俺のいた場所の地面に剣が突き刺さったスケルトンを矢尻型の砂鉄玉が襲う。コアを撃ち抜かれたスケルトンはパラパラと崩れて地面の上に積み上がった。


 すると木の影からガシャガシャと骨を鳴らしたスケルトンがワラワラと出てきた。


「やっぱり多いな」


 俺は木を回り込んだりしながら角度を変えてスケルトンたちに螺旋の磁力で加速させた矢尻型の砂鉄玉とスケルトンが持っていた錆びた剣を打ち込んでいく。


 盾を破壊しながら、スケルトンを倒すたびに投げることが出来る錆びた剣が多くなるので、だんだんと楽になってきた。


 だけど森の奥へと歩み入って行くたびにスケルトンの密度も増して行く。


 そして、木の影から出てきたスケルトンたちがガタガタとカタカタと歯を鳴らすとそいつらが出てきた。


 メタリックな黒い体をした2体のアイアンスケルトンが躍り出るように出てきて、右手に持ったショートソードで左手に持ったラウンドシールドを叩く。


「待ってたよ。まずは磁力魔法のえじきになってね」


 そう言って笑って、俺は地面に手をついた。


「縛りつけろ!」


 ギュンと地面に魔力を込めて、磁力でアイアンスケルトンを地面に向かって引っ張る。


 引っ張られたアイアンスケルトンは膝をつき、剣と盾を投げ捨てて手をついて、そして、うつ伏せに倒れた。


 ガシャガシャと言うことも出来ずに、ギイギイと軋んだそいつのコアに向けてスケルトンの錆びた剣を打ち出すと、アイアンスケルトンはコアを破壊されて動かなくなった。


 よし、やったか……。


 2体のアイアンスケルトンを倒し終えて俺は笑うけど、周囲にいたスケルトンたちは動じた様子がない。


 すると、シルバーに輝くそいつが、現れた……。


 えっと、嘘だよね?


 ガシャガシャと歩いてきたシルバースケルトンは周りに3体のアイアンスケルトンを従えている。


 いやいや、それは反則じゃないの?


 この数はまとめて縛れるのかな?


 すぐに錆びた剣を打ち出して、次々にシルバースケルトンたちを錆びた剣が襲ったが、シルバースケルトンたちはそれを軽々と剣で撃ち落とし、盾で弾く。


 さすがに硬てぇ。


 錆びた剣の方が折られたり、曲がったりして、地面に落ちる。シルバースケルトンがガチガチと歯を鳴らした瞬間に、四方からスケルトンが飛びながら襲いかかって来た。


 俺はそれをしゃがみ込みながら引き寄せた錆びた剣で弾き飛ばす。四方に跳ね返された転がったスケルトンに追い討ちで矢尻型の砂鉄玉を撃ち込む。


 そこで今度はアイアンスケルトンが飛び込んできた。


「ありがとう」


 俺はニヤリと笑い。


「行け!」


 俺は磁力魔法で俺に飛びかかってきたアイアンスケルトン自体を吹っ飛ばして、シルバースケルトンの周りに控えていたアイアンスケルトンにぶち当てる。


 だけど、飛んで行ったアイアンスケルトンは控えていたアイアンスケルトンにコアを切り倒されて、空中で瓦解するように崩れた。


 でも、それも想定済みだよ。


 瓦解したアイアンスケルトンの影から飛んで行った錆びた剣が迎え撃ったアイアンスケルトンのコアも壊した。


 俺は地面に手をつく。


「縛りつけろ!」


 残ったシルバースケルトン1体とアイアンスケルトン1体を地面に引っ張ったが、崩れ落ちるように地面に縛りつけられたのはアイアンスケルトンだけで、シルバースケルトンは何事もなくそこに立っていて、俺を見ながらアゴをガチガチとさせて笑った。

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