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冒険者①

 ゴブリンの耳の回収と魔石の回収を全て済まして、錆びた武器もすべて回収もする。粉々になっている物でも鉄屑は鉄屑で利用価値がある。


 剣士のマケトと斥候のパコがゴブリンリーダーの革の鎧を脱がしている間に、俺と魔法使いのオルナがチーフの盾を拾って、重い物はマケトとパコが、あとの物を僕とオルナが背負う。


「本当にありがとう。お兄ちゃんたちが来てくれて助かったよ」


「まったくだ、来なかったらどうするつもりだったんだ?」


「うん? わかんない」


「おいおい、確実に夜になってただろ?」


「そうだね」


「そうだねって、大丈夫かよ」


「うん、たぶんなんとかなったんじゃない?」


 俺が笑うと俺と話をしていたマケトは呆れたが、パコが「きっとなんとかなっちゃうんでやすね」と言ってオルナが「森で一晩ぐらい、あの強さなら問題ないでしょ?」と笑った。


「でも、あんな量なのに1人で来たのか? 副マスターに頼まれたクエストって言ってたよな?」


「うん、キテオさんに騙されたよ。20匹ぐらいの巣って聞いてたのにさ」


「マジかよ」


 マケトは青くなって、オルナが頭をかいた。


「やっぱりクエストはまだ受けられないわね。想定の4倍近くのゴブリンなんて出たら私たちなら死んでるわ」


「あぁ、そうだな。そろそろクエスト受けても良いかと思ってたけど、あれ見たらなぁ」


「入り口の横は恐ろしいぐらいのゴブリンの山だったからね。どうやったらあんな風に倒せるのよ」


 マケトとオルナが俺を見る。


「あれは入り口の前に積み上がってたのをゴブリンリーダーが出てくるときに払い除けたんだよ」


「いや、そういうことじゃねぇ」


 マケトが呆れ顔になる。


「やっぱり、ストーンバレットでやすかい?」


 パコがそう聞いてきたが、ストーンバレットってのは土魔法で小さな石をたくさん飛ばす魔法だ。確かに近いので「うん、そんな感じ」と笑っておいた。


 基本的に冒険者は相手への詮索は厳禁だから、パコはそれで納得したように「そうでやすかい」と微笑む。


「でもさ、チーフとリーダーは剣と槍で倒してあったもんな。魔法も使えて、剣や槍の扱いも上手いとなると魔法剣士か、いいなぁ」


 マケトがそう言ってオルナが笑う。


「そもそも両方出来ないとソロなんて無理でしょ?」


「だよなぁ」


 おいおい、なんかマケトが羨望の眼差しで見てくるけど、それは誤解だからね。それになんか俺が楽勝で勝ったみたいな雰囲気になっているけど、マジでリーダー出た時は焦ったよ。


 3人のおかげでなんとか日暮れまでに門にたどり着いた。


 そして、冒険者ギルドに来ると、マケトたちが顔見知りに囲まれて、俺はその間にカウンターに向かう。夕方の混雑が終わったカウンターは落ち着いていて、俺は暇そうにしている昼間の女の子を見つけた。


「あのさ、キテオさん、呼んでくれる?」


「えっと、無事にクエスト終わったのですか?」


「うん、終わったけどさ。話が違うよ」


「えっ?!」


 俺がマケトが背負っている革鎧を指さすと女の子は目を見開いた。


「少々お待ちください」


 飛んで行った女の子がキテオを連れてくると、キテオは「すまなかった」と頭を下げた。


「うん、割り増しね。こんなクエスト下手したら死んでるし、あのお兄ちゃんたちに手間賃払う代わりに解体と運搬を頼んだから」


「うん?」


「なに?」


「いや、割り増しは当然だ。だけど、マケトたちに手伝ってもらったのは解体と運搬だけなのか?」


「そうだけど?」


 俺がうなずくとちょうどマケトたちが来たので、キテオがマケトたちにも確認する。そして、キテオがカッと目を見開く。


「ラピス、この街に住み着いてくれ、私が良い家も見つけよう。いや、家の娘が同じぐらいの歳でかわいいんだが、どうだ?」


 いやいや、娘を差し出してどうする? 奥さんに怒られるよ。


「いや、そういうの間に合ってるし」


 キテオが「そうか」と大袈裟にがっくり肩を落として、だけどすぐに顔だけあげた。


「でも、しばらく滞在するよな? まだ頼みたいクエストがあってな」


「まあ、受けても良いけど、今回みたいなのは無しにしてね。なんか多いなって思っててリーダー出てきたときは焦ったんだから」


「あぁ、わかった」


 キテオは力強くうなずいたけど正直信用できないね。まったく。


「じゃあ、買い取りと確認をお願い」


 とカウンターに僕たちが背負っていた物を全て置くと、マケトが「お願いします」と頭を下げた。


「マケト兄ちゃん? 手間賃はなるべく多く出すつもりだよ」


「いや、違う。査定のあいだの時間だけでかまわねぇから手合わせしてくれねぇか?」


「それは木刀で手合わせってこと?」


「あぁ、飛ばす魔法なしの木刀での手合わせを頼む」


「良いけどさ、僕は剣だけで戦うことは無いから期待外れかもよ」


「あぁ、それでもいい、頼む」


 再びマケトが頭を下げるので、俺は「わかったよ」とうなずく。


 正直強そうなやつがどの程度か知りたいっていうマケトの気持ちはよくわかるし、俺も試したいことがあった。ついでだから試してみよう。


「ありがとうな、ラピス」


「気にしなくていいよ、マケト兄ちゃん」


 ということで、キテオに確認を任せて俺たちは練習場に移動した。

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