学園祭をやるってよ:後編
時は流れて、締め日前日。
「……勝間先生、例の小説書けました。」
担当であり、担任の勝間先生に小説を出した。
「ありがとう。……急でごめんね。一週間で書き上げろ、なんて。」
「いや、全然大丈夫ですよ。……寧ろ、楽しく書けましたし。」
そう言うと、勝間先生は安堵な表情を見せた。
その日の午後には、添削が終わった。
「……なかなか良い出来よ。初めてとは思えないわね。」
そう言ってくれた。
勝間先生は、最初の添削は渋めの発言が多いらしいと聞いたのだが、そうでもなかったな。
「で、一応添削部分を直せば完成よ。」
と、原稿用紙を渡してきた。
本当に、赤ペンの部分が少ない。
夏梅を含め、他の人は結構赤い字がびっしり書かれていたな。
「明日に、もう一度出しますね。」
そう言うと、勝間先生は頷いた。
▪▪▪
「どうだったー?」
勝間先生が去ったあと、夏梅が話しかけた。
「あまり添削されなかったよ。」
夏梅は「嘘だろ」と言わんばかりな表情を見せた。
ほらよ、と原稿用紙を見せた。
「………これ、本当に初めてなの?」
勝間先生と同じ反応だった。
「良いなぁ~。僕もその才能が欲しいよぉ。」
「でも、『人は努力すれば開花する』って言葉がある。悲観しないでやれば良いじゃないか。」
「……図星だなぁー。」
そう言って、夏梅は笑った。
「僕も頑張るよ。」
それから何とか、主軸参加のみんなは自作小説を書ききった。
これから、学園祭の日までに本として綴られるらしい。
地元の印刷屋と提携していて、今年も頼むみたいだ。
▪▪▪
学園祭当日を迎えた。
朝からすげぇ賑わってるなぁ。
俺は、自作小説の展示会場の案内プラカードを持ちながら、敷地内を練り歩く。
「よぉ!遼太!」
親父さんの声がした。
「親父さん!」
「小説、面白かったぞ。」
それを聞いて、嬉しくなった。
その後も、続々と『面白かった』の声を聞いた。
評価ランキングも同時にやったのだが、4位だった。
1位は、夏梅の小説だった。
……別に、悔しいとは思わなかった。
寧ろ、安堵した。
突発的に書いた俺の作品より、皆の悩みに悩んで書いた作品が評価されて良かったと思っているから。
来年度も、俺は小説を書いて出してみよう。