『二度ある事は三度ある』みたいな話
休みの日になった。
今日は、夏梅にこの街の『商店街』へ連れてってもらう。
「そういや、夏梅の家は?」
道中、俺は聞いてみた。
「僕の家、かい?それはね、これから行く商店街にある小さな『診療所』をやっているんだ。」
『診療所』?聞きなれない言葉だ。
「医院とは特に区別は無いんだが、主に外来患者を扱っている病院さ。」
怪我人とか治療するとこみてぇだ。
そういや、治療するには免許が必要と聞いたのだが、彼は違う分野の学科だったはずだ。
家系を継がないのか聞いてみた。
「うちの兄さんが継ぐんさ。」
そうか、兄弟が居るんだな。
▪▪▪
商店街へ着いた。
この辺りじゃ、賑わっている方だな。
……あれ?向こう側でやけに騒がしい。
「なぁ!ぶつかっといて無視はおかしいだろう!」
どうやら、ちょっとグレた兄ちゃん同士でピリピリしていた。
視界に入らぬよう、二人でそーっと抜けようとしたが……。
取っ組み合いが始まった。
……流石に、これは止めないといけねぇと感じた。
ここ最近、『仲裁』の事を知ったからな。
「あんたら、ここで取っ組み合いは……」
「いや、遼太君……仲裁に入るのは!」
夏梅がそう言った瞬間。
「何じゃ!ワレェ!」
……巻き込まれたみてぇだ。
ピッキーン。何かの糸が切れた。
前世の血が騒ぐ。
「オメェら!いい加減にしねぇと……」
殴ろうとした瞬間、腹にパンチを喰らった。
目の前が暗くなる。
腹パン位で倒れない筈の俺が、どうして……
▪▪▪
目を開けた。
天井が見える。ベットに横たわって居るのか?
「あ、気がついた?」
夏梅が横からそう言った。
「……ここは?」
「僕の実家の診療所さ。腹パン一つで倒れたし、その後少し殴られ蹴られしちゃったから、連れてきたのさ。……気分、悪くない?」
そんなことになっていたのか。
まあ、前世が前世だから、多少は大丈夫だが。
「大丈夫だ。……で、アイツらは?」
「駐在さんがやって来て、収まったよ。」
「そうか。」
その後は、もう帰った。
授業が少ない日に、もう一回案内して貰うことにした。
▪▪▪
数日後。
また商店街へやって来た。
色々なお店を案内してくれた。
今度、またゆっくり来てみようかな。
その帰り道だった。
「……あ。」
前の騒動の片割れグループだ。
「あー!この前はよくも……」
……何か、因縁付けられている?
「オメェらが騒ぐから、いけねぇんだ。」
これは間違いなく正論だと思うのだが、彼らには通用しなかった。
あいつら、殴りかかってきた。
ピッキーン!また何かの糸が切れた。
「んだと、ゴラァ!」
「……待って、遼太君!」
夏梅が止めようとした瞬間。
腹にパンチが喰らった。
目の前がまたも暗くなる。
……最近知った言葉
『二度ある事は三度ある』
これの事、言っていたのか。
▪▪▪
目を開けた。
あれ、これ家の天井?
「……。」
夏梅が横に居た。
「あ、大丈夫?」
「おう。……運んでくれたのか?」
そう言うと、夏梅は頷いた。
「済まんな。また運んでくれて。」
「まあ、仕方無いよ。……でね、あの人達、遼太君を一発殴ったら気が済んだらしくて。」
「たく、どうしようも無い奴らだな。」
後日談。
俺の所に謝りに来たんだ。
……たく、こんな事するんなら、そうしなきゃ良いのにな。