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神造のヨシツネ  作者: ワナリ
第12話:決戦ダンノウラ
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Act-09 神造兵器VS神造兵器


「なんなんだ、あれは⁉︎」


 自軍の旗艦が一瞬で破壊された。それを目の当たりにしたウシワカが叫びを上げる。


「平氏の……機甲武者なの?」


 そばにいたカイソンは、光弾を発した敵機のあまりの異様なフォルムに、ただただ唖然とするばかりだった。

 全長十メートルの手も足もない漆黒の機体。カイソンが機甲武者なのかと、訝しんだのも無理はなかった。


 だが何かを感じたベンケイは、迫る敵機に目を凝らすと、


「トキタダ⁉︎ ならあれは――神造兵器⁉︎」


 と、同じツクモ神である眷属の存在を感じると、その正体が『ヤタの鏡』を依り代とした神造の機甲武者であると見抜き、その事実に驚愕する。


「神造兵器って⁉︎ シャナオウと同じ――」


「ええ。あれも三種の神器の機甲武者よ」


 ウシワカの言葉にベンケイは、相手がシャナオウと同スペックの強敵である事を示唆する。


「来るよ、来るよー!」


 迫る平氏の神造兵器カラスに、サブローが慌てた声を上げる。まわりの兵たちも同様に、この状況にどう対処してよいか分からず、ただ立ち尽くすだけであった。


「ヨイチ、魔導弓を!」


「御意!」


 だがさすが副将である。ヒロモトは素早く迎撃を指示すると、それに応じたヨイチも機甲武者キュウベイを後方に反転させ、すぐに射撃体勢に入る。


「シュート!」


 ヨイチの気合一閃、キュウベイの魔導弓が放たれ、レールガンの様な矢がカラスに向け一直線に飛んでいく。


 それを迎え撃つカラスのコクピットでは、


「トキタダ!」


「まかせな!」


 という短い会話の後、


「ヤタの鏡を――なめんじゃないよ!」


 と叫びながらトキタダが九字を切ると、カラスの六枚の神鏡が機体前方に移動し、なんと六角形の大シールドを展開した。


 それにキュウベイの矢は、いとも簡単に弾き返される。

 急な迎撃だったため、ヨイチも十分な神気が練れていなかった不完全な矢とはいえ、魔導力の神器であるヤタの鏡を依り代としたカラスは、防御力も規格外であった。


「このまま源氏を叩くぞ!」


「おうさ!」


 トモモリとトキタダの意気も上がる。

 対して源氏軍は、なす術ない状況に皆、ただ愕然とする事しかできなかった。


 そんな中でただ一人、ウシワカだけはギラリと戦士の目を光らせると、


「ベンケイ、行こう!」


 と、まだ補給の終わらないシャナオウに向け、パートナーの手をとって駆け出していく。


「ウシワカ、まだシャナオウの霊気は――」


「そんな事、言ってられないよ!」


 動力の補給が不完全な状態での、再出撃を心配するカイソンに、ウシワカは振り返りそう叫ぶと、


「サブロー、ヨイチに伝えて! 私があれを止めるから、援護射撃をよろしくって!」


 すれ違いざま、サブローにヨイチへの支援要請を託すと、(あるじ)に反応してハッチを開くシャナオウのコクピットに、ベンケイと共に飛び込んでいく。


 人型形態でしゃがむシャナオウの両目が光り、立ち上がると同時に後退翼を展開し、垂直上昇していく。


「あれに砲弾は通用しないわ。セイバーで直接本体を斬り裂くのよ!」


「わかった!」


 ベンケイがすかさずカラスへの対応策を伝え、ウシワカもそれに応じてシャナオウにセイバーを引き抜かせる。


 これ以上、艦隊に近付かせる訳にはいかない。

 劣勢とはいえ平氏艦隊もまだ健在であり、前後に敵を抱えれば、状況は今度はこちらが不利になる。


「あれは――シャナオウか!」


 カラスの方でも、ウシワカの迎撃を確認すると、トモモリが再び神鏡による魔導砲を放ってくる。


 だが先程見た、あの圧倒的な光弾ではない。おそらくサウザンドソードやキュウベイの魔導弓と同じく、強力な魔導攻撃には相当の神気が必要であり、トモモリもそれを連続使用できる訳ではないようである。

 なので今度の魔導砲は、容易にかわす事ができた。


「今度はこっちの番だ!」


 ついに正面にきたカラスに、シャナオウが斬りかかる。

 それをカラスは、すんでのところで機体をひねり、両機は交錯する事なく通過していった。


「逃がすか!」


 ウシワカはすぐに機体を反転させると、カラスの背後を取る。

 そして、背面に移動した神鏡による魔導砲をかわしながら、ある事に気付いた。


 ――こいつは魔導力は強大だが、機体が大きすぎて小回りがきかない。


 だが推進力ではカラスの方が上であるため、その大味な軌道にシャナオウは、ただついていく事しかできない。


 要請通りにヨイチも、キュウベイの魔導弓で支援射撃を続けてくれている。

 その矢が飛んでくる度に、カラスは神鏡でまたシールドを展開し、シャナオウとキュウベイを相手に攻撃と防御を両立させている様に見えたが、


「――――! ウシワカ、あれは攻撃とシールドを同時には使えないわ!」


 カラスの神鏡の特性を見抜いたベンケイが声を上げる。

 なるほど六枚の神鏡は、キュウベイが魔導弓を放つとその方向にシールドとして展開し、それが終わると、追尾してくるシャナオウへの魔導攻撃のために後方へと、忙しく移動していた。


「よし!」


 ならばとウシワカの視線が全天周囲モニター上を激しく動く。

 キュウベイのいる自軍母艦の位置。そこから放たれる魔導弓の射角。そこから割り出したカラスの軌道を先読みすると、ウシワカは支援射撃と息を合わせ、一気にシャナオウを加速させる。


「トモモリ、後ろ!」


 魔導弓を弾いた直後に、すぐ背後まで迫ってきたシャナオウに気付いたトキタダが、警告を発する。


「なんだと!」


 トモモリもそれを確認すると、すぐに神鏡を後方に移動させ魔導砲撃を試みるが、もう遅かった。


「いいやああーっ!」


 ウシワカの咆哮と共に、セイバーで打ち砕かれる神鏡。

 そしてガラ空きになった背中に向け、シャナオウがセイバーを大上段に振り上げる。


 勝負あり――相手が並の魔導武者であったなら、結果はそうなっていただろう。

 だがカラスを駆るのは平氏最強の魔導武者、(たいらの)トモモリである。


 歴戦の猛者である彼はこの状況下で、最良の対応策を瞬時に判断した。

 カラスは逃げるのではなく――その動きを止めたのであった。


 推進力が霊力とはいえ、シャナオウの飛行機能は航空機のそれと同じである。航空機にブレーキはない。

 対してカラスは魔導力で飛んでいるため、その動きはパイロットの意のままであった。


「うわーーーっ!」


 結果として、シャナオウはカラスの巨大な背面にぶち当たる事となり、その衝撃にコクピットのウシワカとベンケイは悲鳴を上げた。


 カラスの追撃は止まらない。ヨロヨロと降下していくシャナオウに向け、トモモリは機体を反転させると、その上からプレスをかける様にかぶさり、海上に向け加速を始める。


 その先には源氏軍の空母が――サブローやカイソンたちが乗る、ウシワカの母艦があった。

 そこにシャナオウを高速で激突させて、破壊しようというのである。


「クソッ、逃げられない!」


 上からの加速Gで、身動きの取れないシャナオウに焦るウシワカ。


 迫る空母の甲板。母艦に機体を叩きつけるという、奇しくもアントクを撃破したのと同じ手で、今またウシワカも葬られようとしていた。


Act-09 神造兵器VS神造兵器 END


NEXT Act-10 魔導武者ならざる者


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