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神造のヨシツネ  作者: ワナリ
第12話:決戦ダンノウラ
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Act-01 心象風景――源ウシワカ


 (みなもとの)ウシワカ。

 源氏の先の棟梁、(みなもとの)ヨシトモの娘にして、現棟梁ヨリトモの妹。

 そればかりか女帝ゴシラカワ、その母タマモノマエの血も受け継ぐ、数奇な星の下に生まれた少女。

 

 平氏の圧政に苦しむ民を救いたい。

 彼女が戦いへの道を選んだ理由は、ただそれだけだった。

 

 それからウシワカはその大いなる力と共に、目的のためには手段を選ばない戦いぶりで、時には自分を愛してくれた者たちさえ、迷わず葬り去った。


 だが彼女の中に矛盾はなかった。

 天才戦術家の合理性というものは、余人には理解できないものなのかもしれない。

 

 戦争に正しい答えがあるのだろうか。

 多くの人と人が戦えば、多くの人が死ぬ。しかも理不尽に。


 ならばその要所だけを突けば、犠牲は最小で済むではないか。

 そんな単純な思考に過ぎなかった。


 だが世の中は方便である。

 悪辣な手段も、体裁というベールでそれを包まなくてはならない。


 それを政治と呼ぶのなら、ウシワカの生き方にはそれが皆無であった。

 同時に十五歳の少女に、そんな処世術を求めるのは酷であったろう。

 

 時代に求められ、表舞台に躍り出た悲しき少女。

 ウシワカをそう理解していたのは、母であるゴシラカワ帝と、幾多の戦いの中で盟友となったツクモ神ベンケイだけだったろう。


 姉であるヨリトモは、妹を理解できずその存在に恐怖した。

 またそれを理解できなかったウシワカは、誰よりも純粋無垢だったのかもしれない。

 

 そしてウシワカは終焉の海、ダンノウラに辿り着いた。


 ――よくやった。


 ヨリトモがイチノタニ戦後に、かけてくれた言葉。


 その一言だけで、ウシワカは戦えた。

 だがウシワカは何も伝えなかった。その機会を天は与えなかった。


 いつも心の内にあった――自分が果てても、後の世は姉に託す事ができるという思い。


 ――だから私は、お姉ちゃんのために精一杯戦うよ。


 それを口に出していたならば、何かが変わったのかもしれない。

 

 無垢なる狂犬――みなもとのウシワカ。

 どこまでも純粋な心とは、突き詰めれば残酷に至るのかもしれない。


Act-01 心象風景――源ウシワカ END


NEXT Act-02 心象風景――源ヨリトモ


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