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王太后のひとりごと

処理していた書類の山に一段落つけ、老齢の女性が1人小さくため息をついた。若い頃は赤みがかった茶だった髪も、年を経るごとに白いものが混ざり、今ではすっかり白くなってしまった。




部屋には誰にもおらず、先程呼んだ侍女が淹れていった紅茶からまだ湯気が立っていた。




次の書類が来るまで、少し休憩をしようと紅茶を口にする。




豊かな香りを楽しみながら、突然異国へと花嫁にプロポーズに旅立った息子に想いを馳せた。




壁に掛かる絵の中の、今は亡き夫に目を向ける。




多情な人だった。素晴らしい為政者である一方、英雄色を好むが如く、多くの女を愛し、沢山の子を成した。後宮はいつも多くの女たちで溢れ、あちこちで笑いさざめき、裏では蹴落とし合った。嫁いできた当初から数多くの側室がおり、他国の出だったために随分苦労したものだ。



案の定、夫が早々と病死すると、後宮内は大混乱となり、結局2人の息子を残して、側室の子たちや側室もほとんど亡くなった。もし宰相をはじめとする首脳陣がいなかったら、自分も息子たちも生きてはいなかっただろう。



そんな息子の1人も無事に即位したが、側室の1人に仕込まれた毒で生死を彷徨い、体に後遺症が残ってしまい、子を1人しか成せなかった。


健康に不安があっても、同腹の王子同士で対立し、再び国内を混乱させるわけにはいかないと、もう1人の息子は外交官となり、国に居つかなくなってしまった。





そうしてやっと生まれた孫の王太子も、何をとち狂ったのか、男爵令嬢などに惚れた挙句、醜聞を撒き散らして廃嫡になってしまった。






「何がいけなかったのかしらねぇ…」




ふと彼女は外に目を向けた。雪深かった祖国からは考えられないほど温暖で気候の良い国だ。





また、自分たちだけになってしまった。






女性に興味を持ってこなかった次男は、王位に就くことが決まった途端に婚約者を決めた。かなりあちらの国に有利ではあるが、現在はとにかく再び不安定になった国内を平定することが最優先だ。それで言えば、次男の選択は間違っていない。本来はしばらく内政に集中し、結婚は延ばすのも手だが、孫が廃嫡になり、国王にもう子が望めない以上リスクはあるが国外から王妃を立てるしかない。



だが、国王の執務室の大幅な改造工事や寝室の改装など、突然不可解なことをしだしたので、一抹の不安は残る。あの子に限ってはおかしなことにはならないはずだけど。

側室も自分の代は置かない、妃は1人だけにすると宣言し、段取りをつけてプロポーズに行ってしまった。






オーラリアの真珠。





隣国の公爵家の娘であり、才色兼備と名高い女性だ。調べさせた限り、誇張ではなく真実賢いようだ。隣国の王太子妃教育も受けていたそうで、一からまた婚約者を育てるよりも時間は掛からないだろう。





その輝きで、この国の闇を照らしてくれればいい。私にできることはもう、多くはないのだから。

評価、ブクマありがとうございます!

今日はもう一話、18時に更新します。


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