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誰にでもできる簡単なお仕事2

「ツェツィーリア様…」


「あなたはジルベスター殿下の二重密偵だった。ヴェルザー侯爵に従うふりをして、こちらに情報を流していた。だから、そのあなたの家族が敵に捕らえられているならば、殿下が救出部隊を出すのは当たり前でしょう?そうですわよね?殿下。」


「…ああ。」


「殿下!」


「セシリアにしてやられたな。マルク。」


マルクはその鳶色の瞳に涙を浮かべる。


「バーデン侯爵家の私の部屋に、ヴェルザー侯爵との密約の証拠があります!それと、ルエーガー公爵家からアンゼルム様を引き離し、ローザ様を捕らえ、隣国の公爵に渡す代わりにオーラリアに対抗する戦力を得ると言っておりました。東の国境に公爵家の兵を持ってくると!」


『わかりましたね?』


セシリアが影たちと話すためだけに使う言語で声をかけると、一度木を叩く音がした。

ジルベスターは外の騎士団長を呼ぶと、バーデン侯爵家の救出部隊の編成とヴェルザー侯爵の確保、東の国境への連絡とアンゼルムへの警告を指示した。


惚けた顔をしているマルクにセシリアは優しく語りかけた。


「すぐにご家族に会えます。場所は影が知っていますから。」


「両親は…私を引き取ってくれたときから覚悟はしていたでしょう…しかし…末の妹はまだ15歳なのです…どんなに感謝してもしきれません。王家を汚すこの身はいつでも神の御許(みもと)へと参りましょう。」


とうとうマルクの瞳から涙が流れた。


「二重密偵として立派に役割を果たしたマルクに、褒賞を与えこそすれ、罰するなんてありえませんわよね?ジル。」


「そのとおりだ。ましてやお前は私の異母兄に間(・)違(・)わ(・)れ(・)た(・)こ(・)と(・)を(・)利(・)用(・)し、元側室派を失脚させたのだから。」


「あなたは優秀な文官。これからも殿下をお支えしてちょうだい。」


マルクは今度こそ涙を流しながら床に額を擦り付けた。


「このマルク・ヤーナ・バーデン、ツェツィーリア様…いえ、次期国王陛下夫妻に生涯忠誠を誓います。この命、如何様にもお使いください。ありがとうございます!」


そう言って嗚咽を隠すように何度も感謝の言葉を言っていた。





丸一日ほどたった頃、マルクの家族が救出され、王城で内密に対面を果たした。高位貴族の家にしては珍しく仲の良い家族のようで、バーデン家は涙を流して再会を喜んだ。そこで改めてバーデン侯爵家は一族でジルベスターとセシリアに忠誠を誓い、マルクの出生はバーデン侯爵夫妻の実子であることが確認された。


ヴェルザー侯爵家については、勘(・)違(・)い(・)により政治不安を煽ろうとしたということで、当主と次期当主は内密に処刑、また伯爵家に降爵の上、10年に渡り直系は王都に入ることを禁止された。


これで元側室の派閥はその影響力が排除されたことになる。もともと元王太子が廃嫡された時点でほとんど力はなかったので、国政への影響はないに等しかった。逆にバーデン侯爵家からマルクの兄弟や従兄弟たちが出仕し、人手が増えたくらいだ。


ローザの誘拐もアンゼルムの万全の体制により不発に終わり、東の国境も元騎士団長の息子たちにより安全を確保された。元王太子も病(・)死(・)し、結婚式の後に公表されることとなった。セシリアたちの誘拐に加担さえしなければ命は長らえられたものを、彼は自分で自分の命を縮めたのだ。ローザには病死として話をするとアンゼルムが言っていた。彼女のためにはそれがいいかもしれない。







「覗きなんて次期国王陛下には相応しくありませんね?」


素敵な笑顔のセシリアにより、本棚の鏡には布がかけられたそうだ。

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