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前触れ

更新が開いてしまって申し訳ありませんでした。よろしくお願いします。

お茶会の後もセシリアには仕事がある。エルフリーデと手紙を交わし、また王城に招待する約束をして別れた。今日はいい収穫をした、と気分良く後始末の指示を出した後、影から調べさせていた内容の報告を受けて次の指示を出し、マルクを呼んでお茶会の前に詰めていた案を話し合う。今度は他の担当の文官も呼ぶ。


「ルース、これに関する資料があるかしら?」


「はい。こちらです。」


「マルク、ここの…マルク?マルク?」


マルクの反応がなく、呼びかけると、ハッとしたようにこちらを見た。顔色はもはや土色に近く、隈も濃い。


「マルク、あなたもうオーバーワークよ。命令です。医務室で3時間寝ていらっしゃい。」


「ですが…」


「いくらなんでもその顔色ではこれ以上効率の良い仕事はできませんわ。」


「ルース、今にも倒れそうだから、念のために医務室まで付き添って。」


「かしこまりました。」


そう言って彼を医務室に行かせる。他の文官たちとの話し合いを再開した。しばらく討論していると、ノックと同時にドアが開き、謁見に行っていたジルベスターが入ってくる。


「セシリア!「ちょうどよいところにいらっしゃいました。」」


セシリアは満面の笑みで自分からジルベスターに近づき、書類を手渡す。


「こちらは災害支援の追加の書類で、宰相様の許可が下りております。それと、高潮被害の大きかった地域の橋の架け替えに関する工事の認可証です。サインをお願いします。」


「あ、わかった。」


ジルベスターは言われるままに書類に目を通してサインをする。セシリアはそれを受け取り、文官に渡す。


「殿下、お疲れ様でございます。謁見はいかがでしたか?」


「ああ。やはり何かおかしいと。とんぼ返りになるが、騎士団を行かせる。」


「そうですか。こちらをどうぞ。」


そう言って、ジルベスターがサインをしている間に侍女に指示を出しておいた飲み物を勧めた。ジルベスターもセシリアに影響され、最近コーヒーを飲むことが多い。彼はミルクを少し入れて飲むのが好みだ。

ジルベスターはソファに座ると一口コーヒーを飲む。


「面白いことがあったようだね?セシリア。」


「どちらでお聞きに?」


「この部屋に来るまでにね。それで?」


「あらあら、耳がお早いことですわ。」


クスクスと笑いながらセシリアが座ろうとすると、すぐにジルベスターに捕まり、隣に座らせられる。ここ数ヶ月ですっかりそれが定位置になってしまい、もはやセシリアどころか周りの文官や侍女、騎士達まで慣れてしまった。


「私のはとこに当たるオイレンブルク侯爵令嬢とお友達になりましたの。ヒュンデル侯爵家令嬢ともいいお友達になれそうでとても楽しみですわ。」


コーヒーに口をつけながら心から嬉しそうに笑うセシリアに、思わずジルベスターも文官たちも見惚れてしまった。1番先に我に返ったジルベスターが文官たちを部屋の外に出す。


「ところで、オイレンブルク侯爵令嬢ともお話ししましたが、ある程度の身分や能力のある文官たちを増やした方がいいのではないかと思いまして。オイレンブルク侯爵令嬢のお知り合いに、貴族ですが文官として身を立てたいと希望なさる方が何人かおいでだそうですの。影たちに調べさせておりますので、その結果良さそうなら推薦させていただきたいのです。」


「そうだな。人の上に立てる人間が少ないから、そういった適性のある人材は欲しい。マルクとイェルクにも話を通しておこう。」


「ありがとうございます。それと、少し興味深い調査がありましてご相談を…」


そうしてしばらくジルベスターと話をしたあと、セシリアは王太后のもとへ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

sideジルベスター


ジルベスターはセシリアと別れ、イェルクを呼んだ。


「セシリアの才能は本当に素晴らしいと思わないか…?」


「何を色ボケたこといってるんです。と言いたいところですが、今回は同意します。オーラリアの真珠の真価は容姿ではなくその才能ですね。最初は容姿と家柄で選んだのかと思いましたが、今思えば最高の判断だったと思います。」


珍しく茶化すではなく至極真面目にイェルクが返してきた。


「私のだ。」


「おもちゃじゃないんですから。」


即座に返したジルベスターに、イェルクは呆れ顔で返した。


「オイレンブルク侯爵令嬢と『お友達』になったそうだ。」


「お友達ですか?」


「報告によると、オイレンブルク侯爵令嬢がセシリアに忠誠を捧げたらしい。」


さすがにイェルクも細い目を見開いた。なぜならオイレンブルク侯爵家はもともと王家とは距離があったからだ。政治面では良くても、多くの女たちを入れ、巨大化していた後宮を快く思っていなかった。先代侯爵の娘の1人が半ば無理やり後宮に入れられたのも大きかったようだ。その娘は一時期寵愛を受けていて、後宮の中で病死したが、実際には他の側室に暗殺されたのではと言われている。


「…それはすばらしい。これでルエーガー公爵家とオイレンブルク侯爵家が王家に、というよりもツェツィーリア様についたことになるわけですか…」


「どちらの家も大きな派閥を持っているからな。」


「今ツェツィーリア様に政変を起こされたら、我々は勝てないやもしれませんよ。」


イェルクが本気とも冗談ともつかないことを言って肩を竦める。


「それも悪くない…」


「やめてくださいよ。それで、報告の元側室の実家ですが、やはり何かをやっているようですね。」


ジルベスターがまた何か言い出す前にと強引に話題を変えた。


「何か、とは?」


「まだ不確定な情報ですが、まだ元王太子を国王にすることを諦めきれないようですよ。」


「まだそんなことを言っているのか…。予定を少し早めるか?」


「そうすると、国民向けには元王太子の死と言うことで喪に服すことにになります。」


「それはダメだ。結婚式は伸ばさない!」


「わかってますよ。いっそ先に病死してもらって、結婚式の後にひっそりと公表しますか?」


「そうだな。これ以上あの火種を抱えておくのは危険だろう。」


「ではそのように王太后陛下にもお話ししておきます。」


「それと、セシリアからの報告だが…」


その後、しばらくして元王太子は病死することになる。

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