プロローグ
ストックのあるうちはできるだけ更新しますが、途中のんびりになるかもしれません。
よろしくおねがいします。
豪華なシャンデリアが、会場内で奏でられる優美な音楽を反射するようにきらめいている。そんな中、音楽を断ち切るように、上座で1人の男が声を上げた。男の後ろには女が1人と男が更に4人いる。
「ルエーガー公爵令嬢ローザ!お前との婚約は今日限りで破棄する!」
ローザと呼ばれた令嬢に一気に視線が集まる。彼女の周りから人々が一歩引いた。
会場内では、音楽も話し声もピタリと止み、このやりとりを見ている。令嬢の顔はみるみる青くなった。
叫ぶ男の腕に胸を押しつけるように、この会場で1番きらびやかで露出したドレスを纏った女が、男に続けて言った。
「ローザ様、私、怒ってなんていません。ごめんなさいって一言言ってもらえればそれでいいんです!」
「ああ、クラーラはなんて清らかな心を持っているんだ…身も心も美しいなんて…それに比べてお前は!」
「ルエーガー公爵令嬢、すぐに自分の罪を認めなさい。」
「お前のやったことは全部知ってるんだ!か弱いクラーラは限界まで我慢して、ようやっと俺たちに話してくれたんだ。」
「貴方など、この国の貴族の風上にもおけない!クラーラこそが未来の王妃だ!!」
女の言葉を皮切りに、後ろの男たちも次々まくし立てる。
女は最初に叫んだ男の言葉に感激したように、涙を浮かべ、すがりつく力を強くした。男は愛おしそうに女を抱きしめる。その女の胸には巨大なアクアマリンをあしらった首飾りが煌めいている。
「陰口やクラーラへの暴言だけでなく、階段から突き落として怪我をさせるなど!」
「こんな怪我、すぐに治りますわ…。」
「こんなに心優しいクラーラに陰湿ないじめをするなど!お前は未来の王妃に対する不敬罪で死罪だ!」
公爵令嬢は細かく震えていたが、最後の男の言葉で、糸が切れたようにその場に倒れた。
後にこの会場にいた令息は「王太子によるかつてないほど愚かな三文芝居だった」と当主に報告した。
これがリンダブルグ最大の醜聞と言われるようになる婚約破棄事件であった。