末の契り
なんであの女はこんな事をするのか。
なんで自分に得など無いそんな事を。
ああ、なんでこんな体に。
膨れていく腹が私は怖い。
この子を産むのが怖くて仕方ない。
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白波の かかる憂き身と知らでやは
わかにみるめを恋すてふ 渚に迷ふ海女小舟
浮きつ沈みつ寄る辺さへ 荒磯集ふ芦田鶴の
啼きてぞともに 手束弓
春を心の花とみて 忘れ給ふな かくしつつ
八千代ふるとも君まして
心の末の契り違ふな
※運営からの警告があったため、ムーンライトノベルスに移行しました。
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【末の契り 訳】
遊女とは辛い悲しい身の上とはかねて知っていました。若布や海松布を求めて渚にさまよう海女の小舟のように浮きつ沈みつ漂いつつ、寄るべき岸とも頼む人を待っている現在の境遇です。
波の荒磯に群れ集う鶴が鳴いている。自分も一人わびしく泣きたいが、考えれば心は気の持ちようだ。気持ちを大きく強く、希望を持って春の訪れるのを待てば、やがては花の咲く時期のあることであろう。
こんな気持ちの私を忘れないで欲しい。心の内に秘めつつ、いつまでも君の健やかな事を祈っています。あなたも私と心の奥で約束したことを、違わないでください。