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テイオスの剣  作者: C:drive
忘れじの遺跡
14/36

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 マルタの発する言葉はただちに効果を発揮した。ぴしりと音を立てて木目には次々に亀裂が入っていく。それが左手から全身に及ぶのはそう遅くはなかった。ギーレイの全身は破砕音とともに今にも崩れようとしている。


 しかし、いち早く異変を察知したのは他ならぬマルタ自身だった。魔法によって命じたのは強制的な成長、決して亀裂が走るような自壊の命令は行っていない。急な成長に耐えられずやがて自壊することはあるが、すぐさま自壊するはずはないのだ。次に察知したのはマルタの魔法の特性を良く知るココだった。走る不安を打ち消すようにメイスの先をギーレイに向けて魔力を放つ。

「<火炎>!」

 魔力は火球に変じてギーレイを襲った。巨体を覆う火は亀裂の入った体を直ちに打ち砕き、辺りに赤黒い木片が飛び散る。


 炎は燃やすものを失って自然と消えていた。ギーレイの体に走っていた亀裂はもうない。足元には大小様々な木片が落ちていて、しかしギーレイは傷一つなく立っていた。マルタが亀裂を入れココが打ち砕いたと思っていたものは本体ではなく鎧のようなものだったのだ。木製の鎧を身に纏っていたギーレイはそれを剥がされたことによって一回り小さくなっていた。灰色の体色にでこぼことしたその姿はどう見ても木製人形ではない。大型ギーレイは石人形だった。


 ギーレイは小さくなったことで動きが良くなったようだった。その動きの一つ一つが石臼を動かしたような音を鳴らし、左手は縄から抜けて自由になっている。木剣はマルタの魔法によって砕けたものの、ただ腕を全力で振り回すだけで人を殺すには十分だった。小さくなったとはいえグリューズよりも大きいという事実に変わりはないのだ。マルタがふと上を向くと、重りを捨てて速さを増した拳の振り下ろしがマルタを狙っている。


 間一髪、またもマルタは助けられた。ロゼのしなやかな腕がマルタを引っ張ったのである。知識と魔法には自信があるマルタだが、こと力仕事となると並以下であるのが玉に瑕だった。抱え込まれる形でロゼの胸に抱かれたマルタはほっと息を吐く。

「いつまでくっついてるのよ」

「ああ、助かったよ。でも僕じゃあ避けられそうにないからもう少し頼むよ」

 少し離れたマルタはにこりと笑ってロゼの腕にしがみついた。ギーレイを倒す決定打を持っていないロゼは仕方ないと息を吐いて離さないようにマルタを強く掴む。

「しょうがないわね。あんたの足になってあげる」

 強気に言いつつもロゼは心で安堵し、失いつつあった自信を取り戻していた。マルタのことを理解できない怪物のように見ていたが、自分と同じように短所を持っていると知ったからだ。しがみつく少年のようななりのマルタの軽さに驚きつつも、どこか優越感をロゼは感じていた。

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