2階の捜索
暗い階段を警戒しながらゆっくり、ゆっくりと上がっていくと、またさっきと同じ様な大きさの通路だった
でも、階段は上がったんだし、ここは2階の筈だ・・・
「道は同じなんですね」
「そうですね・・・なら、出口も同じ場所でしょう」
今度は出入り口を探すことにした、と言っても、1階と同じ場所にあったから探す必要は無かった。
でも、この扉を開けるのはかなり恐ろしい・・・ゾンビがいるかも知れないし・・・
私達は覚悟を決めて、ゆっくりと扉を開けた、そこには沢山のゾンビがいた。
と言っても、1階の方になんだけど、2階には殆どゾンビの姿は無い。
「あまりいませんね、ゾンビ」
「1階にはすごい数のゾンビがいるんですけどね」
2階にいるゾンビは、見たところ3体位しかいない、1階は何十体も居るのに・・・
「2階にはゾンビは上がってきにくいんだ、これなら少しは安心して探索出来る」
「でも、ゾンビはいます、警戒は怠らないようにしましょう」
「はい」
私達は何体か居るゾンビに警戒しながら、ゆっくりとこの建物に2階を探索し始めた。
「食べ物があれば良いけど・・・」
「そうですね・・・」
「先輩、2階は明るいんですね、不思議だなぁ」
「多分、ソーラーパネルから電気を作っているんですよ、基本的に大きな建物には付いていますし」
「そうなんですか・・・でも、何で2階だけ?」
「理由は分かりませんね、でも、明るいのは良いことです」
「まぁ、そうですね、暗いとゾンビを見つけるのが辛いですし」
私達はそんな会話をしながら、周囲を探索した。
「あ、食べ物あった!」
「本当ですか!?」
「はい、これ、少ないですけど」
私は近くにあった、ほんの少ししか無い缶詰を先生に渡した。
「確かに少ないですけど、大丈夫でしょう、それにしても、ここはデパートだったんですね」
「そうみたいです、まだ上の階がある見たいですよ」
ここがデパートだと気付いた理由は2階にそういう看板があったからだった。
階の案内とか、何をしているかというのを書いている。
どうやら、このデパートは5階まであるみたいだ、結構大きい。
私は学校の近くにデパートがあるなんて知らなかったよ。
学校から車で30分の距離しか無いのに、やっぱり家が反対だと分からないもんだね。
「なら、上の方にも行ってみましょう、そこに生存者が居るかも知れませんし」
「なんでそう思うんですか?」
「この当たりの食料がありませんから、この缶詰が残っている理由は恐らく
探索中にゾンビに襲われたからでしょう、だから、これをとらずに逃げた」
「だとするとこの階か上の階に居る可能性があるんですね!」
「そうです」
希望が見えた、ようやく他の生存者に会える可能性が出てきた!
私達は他の食べ物が無いか探しながら、この階をくまなく探してみた。
もしかしたら、この階に居るかも知れないと思ったからだ。
だけど、大声で叫ぶわけにはいかないし、探すしか無い。
そんな時、1カ所だけ不自然に開きっぱなしの部屋があった。
「誰か居るのですか?」
「もしかしたら、中にゾンビが・・・」
そんな事を思いながら、私達はゆっくりとその部屋に入ろうとした。
「きゃぁー!」
「部屋の中!」
私達がゆっくりと入ろうとしている部屋の中から、女の子の叫び声が聞えてきた!
私達はゆっくりと入るのを止め、急いでその部屋の中に入った。
そこには今にもゾンビに襲われそうな女の子が居た。
「あぁ・・・」
「こ、来ないで!」
「今、助ける!」
それを認識すると同時に、久美ちゃんは急いでその女の子に近寄っているゾンビを殴った。
不意打ちだし、部屋も広いし、ゾンビを倒すには問題ないくらいの威力があったんだと思う。
そのゾンビは久美ちゃんの一撃で、倒された。
「大丈夫!?」
「あ・・・あぁ・・・お、お父さん・・・」
「え!?」
「あ、あの、ゾンビ・・・私の・・・私のお父さん・・・」
そのゾンビは女の子のお父さんだったみたいだ・・・
「久美ちゃん・・・」
「ごめんなさい・・・私・・・」
「お、お姉ちゃん、泣かないでよ・・・悪かったのは私なの・・・お父さんにここから離れろって言われたのに
離れなかったから・・・だから、お、お父さんも・・・お姉ちゃんに、感謝してると思う・・・
だから・・・な、泣かないで・・・うわぁーーん!」
その女の子は泣くのを我慢するのが限界だったようで、久美ちゃんに抱きついて、泣き出した。
その泣いている女の子を、久美ちゃんも優しく抱き、頭をゆっくりと撫でている。
「うぅ・・・ひっく、ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい!」
「良いよ、今は泣いて良いから・・・」
「でも、ぞ、ゾンビ、が、来るから・・・もう、な、泣かない・・・泣かないもん・・・」
「強いんだね・・・じゃあ、ここから離れようか」
「うん」
「それじゃあ、あそこに居るお姉ちゃん達の方に行って、私は少しやることがあるから」
「分かった」
久美ちゃんに言われた女の子は、私達の方に歩いてきた。
そして、久美ちゃんはこの子のお父さんのゾンビの近くを探している。
多分、食べ物が無いかを探しているんのかな。
「よし、あった」
「久美ちゃん、ここから離れよう」
「分かったわ」
「待って、くれ・・・」
「え!」
「お父さん!?」
久美ちゃんに頭を殴られた女の子のお父さんが小さな声で話し始めた・・・
そんな、なんで? ゾンビになったんじゃ!?
「喋れるの!?」
「す、少し・・・だけ、あんたら、む、娘を・・・真由美を、守ってくれ・・・」
「約束するわ・・・」
「そうか・・・よろしく、頼む・・・、速く行ってくれ・・・もう、俺は・・・」
真由美ちゃんのお父さんはそう言い残すと、また目を瞑ってしまった。
でも、またすぐに目が開き、立ち上がろうとした。
「お父さん!」
「あぁ・・・」
「もう・・・駄目なのね・・・何で息を吹き返したのか・・・何で喋れたのか分からないけど・・・
もう、目を開けないで良い様に・・・今度こそ・・・さようなら、せめて、安らかに眠って・・・」
私は真由美ちゃんを抱き寄せ、何も見えないようにした、そして、耳をふさいで音も聞えないように。
もう、あの子にあんなのを見て欲しくないし、音も聞いて欲しくなかったから・・・
久美ちゃんのトドメは、ほんの一撃で終わった・・・
「・・・・・・せめて、安らかに・・・大丈夫・・・あなたの娘は・・・真由美ちゃんは私達が守るから」
悲しい静寂が訪れた、でも、心を痛めている暇は無い・・・
速くしないと、真由美ちゃんの声でこの場所に気が付いたゾンビが来るから。
「久美ちゃん」
「分かってるわ、速く逃げましょう」
私達は真由美ちゃんのお父さんを後にして、この場から逃げだした。
何で真由美ちゃんのお父さんはあんな状態で喋れたのか、分からないけど。
今はその謎はいい、今は、この子を守るために逃げないと行けない。