部屋からの脱出
扉が力強く叩かれる、扉の外にいるのは間違いなくゾンビ・・・
こんな状況だから、戦わないと私達は食べられちゃう。
でも、顔は皆知り合いの顔・・・怖い・・・怖いよ・・・
私は戦えないよ・・・だけど、その苦行を久美ちゃんだけに背負わすのも嫌だ・・・
「がぁ!」
扉がこじ開けられた! 扉の外から校長先生が入てきた!
い、いや、校長先生じゃない! 校長先生のようなゾンビだ!
「だらぁ!」
久美ちゃんが校長先生の様なゾンビが入ってきた同時に、頭に向かってモップを振った。
そして、殴られた校長ゾンビは地面に倒れた、それと同時に久美ちゃんが持ってたモップも折れた。
「く、折れた!」
「がぁ!」
「うわ!」
もう1人のゾンビが久美ちゃんに組み付いた! こ、このままだったら久美ちゃんが!
「久美さん!」
「わ、私は良いから! 加賀先生は晴を! こ、このぉ!」
「がぁ!」
「ぐ・・・ち、力強すぎ!」
久美ちゃんは必死にゾンビに噛まれまいとしているけど、このままだと力負けしちゃう!
な、何とか、何とかしないと・・・あ! モップ、折れているモップ!
丁度尖ってる・・・こ、これなら、これなら!」
「こ、のぉ・・・」
「う、うわぁ!」
私は折れたモップを拾って、そのゾンビに向かって突進した。
私の思ったとおり、モップはゾンビの横腹に刺さった、そして、久美ちゃんから手を離した。
「がぁう!」
「う、うぁ・・・」
い、今すぐ離れないと、で、でも足が震えて動かないよ・・・
ゾンビは私の方にゆっくりと手を伸ばしてくる・・・分かっているのに、動けない・・・
「晴さん!」「晴!」
「え?」
私は先生と久美ちゃんに腕を引っ張られて、その場から離れられた。
そして、3階に逃げることが出来た。
「あ・・・あぁ・・・」
「晴・・・ご、ごめん、守るなんて言ったのに、守られちゃうなんて・・・」
「う・・・うぅ・・・き、気にしないで・・・く、久美ちゃんは、悪くないよ・・・」
「晴、明らかに動揺しているよ、ごめん、本当にごめん」
「悪いのは、先生です・・・あの時、私が動けていれば、こんなことには・・・」
「先生も、き、気に、しないで下さい・・・こ、怖いですもん、し、仕方ないですよ・・・」
私は動揺しながら、奥の方の部屋に入ってみた。
「うわぁ!」
「へ、きゃう!」
「晴さん!」
「あ、あぁ! す、すみません!」
私は誰かに思いっきり頭を殴られた、う、い、痛いよ・・・
そして、少しだけ殴った女の子の顔が見えた・・・
あ、あぁ、確か1年生の・・・誰だったかな、ぼやけて見えない・・・
「晴!」
「な、何すんだよ! いきなり!」
「すみません! ゾンビだと思って!」
「あ、あなたは1年生の桃さん!」
「か、加賀先生! それに、あなたは久美先輩!」
「あ、あんたは剣道部の1年!」
「よ、よかった! 私の他にも人がいて!」
「それよりも! 晴を急いで治療しないと!」
「あぁ! すみません!」
私が目を覚ますと、頭には包帯がしてあった、でも、痛い物は痛いよ・・・
うぅ、まだ少しだけ頭がぼーっとするよ・・・
「晴、大丈夫?」
「あ、あぁ、久美ちゃん、うん、大丈夫・・・」
「そう、じゃあ、紹介するわ、この子は桃ちゃんよ」
「ど、どうも、久美先輩と同じ剣道部の桃です、さ、さっきはいきなり殴ってすみません・・・」
「あ、あはは、う、うん、良いよ、生きてるし・・・」
「本当に、すみませんでしたぁ!」
桃ちゃんはそう言いながら土下座した、何だか初めて土下座されたよ・・・
「ちょ、ちょっと、土下座までしなくても!」
「い、いえ、本来は踏み付けられても文句は言えませんから!
もう、何なら踏み付けちゃって下さい!」
「え? え? ど、どうすれば良いの!?」
「踏み付けてやれば良いわ」
「え、あ、うん、久美ちゃんが言うなら、い、行くよ・・・え、えい」
私は久美ちゃんに言われたとおりに桃ちゃんを踏み付けてみた。
すると桃ちゃんは何だか嬉しそうにしている。
「うぅ、小っちゃい足に踏まれるなんて幸せです!」
「な、何だか分からないけど、よくこんな状況でこんな幸せそうな表情になれるね・・・」
「こう言う子なのよ、変わってるでしょ?」
「ま、まぁ、うん」
「あぁ、幸せです!」
こんな状況でこんな幸せそうな表情が出来るなんて、どんな精神をしているんだろう・・・
と言うか、いちいち土下座から仰向けになってるし・・・あはは、よく分からないや。
「えっと、もうこれでいい?」
「あ、はい、もう満足・・・いや、満足しましたか?」
「え、えっと、まぁ、うん」
「それはよかったです!」
やっぱり分からないけど、この子のお陰で動揺が取れた気がする・・・
変な感じだけど、感謝しないとね・・・
「それじゃあ、挨拶も終わったし、学校から逃げ出す方法を考えようか」
「そうだね、このままだと食料が尽きちゃいそうだし」
「ですけど、グラウンドはゾンビが沢山ですよ?」
「うーん、何とか逃げ道を確保しないといけないね」
私達は何とか学校から逃げ出すための作戦を皆で考えた。
時間はまだ余裕がある、ゾンビ達が上がってくる前に何とか考えないと・・・