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「自転車に乗りたい」

 ヒメモスが朝起きて、最初に発した言葉だった。

 ノボルは昨日観た映画の影響だな、と苦笑いを浮かべた。

 ――怪我しなきゃいいが……。まあ、大丈夫か。

「うぅん……それじゃあ買いに行くか?」

 ヒメモスは喜んで頷いた。

 二人は近所の大型スーパーに着くと、一万円で売っているママチャリを購入した。

 その帰り道、河川敷でヒメモスはノボルに支えられて自転車に乗った。ヒメモスはふらふらと身体を揺らしながら、自転車をゆっくりと漕いでいく。

「わ、わ、わ」

 ヒメモスは揺れる度に声を上げた。何度も横に倒れそうになった。

 ノボルは困ったような笑顔を浮かべて、息を一つ吐いた。

 ――こりゃあ手を離したら倒れるな……。しばらくは一人では乗れないな。

 その後、ヒメモスは満足したのか自転車を降りた。

「もういいのか?」

「……うん」

「はぁ、しょうがないな」

 ノボルはそう言うと、自分が自転車に跨り、ヒメモスに後ろの荷台に乗るように言った。荷台にはノボルの外套が畳んで敷いてある。ヒメモスはおずおずと荷台に跨った。

「よし、それじゃあ行くぞ。しっかりつかまっていろ」

 ノボルは自転車こぎだした。昼の河川敷を二人は走っていく。風が颯爽と二人を吹きつける。

 ノボルが後ろのヒメモスに声をかける。

「どうだぁ、気持ちいいだろう?」

「うん! すごく気持ちいいよ!」

 ヒメモスは風の音に遮られないように大声で答えた。

 二人はそのままアパートへ向かって走っていった。




 アパートに着いた二人は、昼食を取る。いつものスーパー弁当だった。昼食を終えた二人は部屋でくつろぐ。

 ふと、ノボルが口を開く。

「午後、どうしたい? どっか行きたいか?」

 ヒメモスは読んでいた文庫本を閉じるとノボルの方を向いた。

「うぅん……えぇとね、本屋」

「うへぇ、またか? この前買った本はもう読み終えちまったのか?」

「うん、大体は」

「そうか、ならしょうがねぇな」

ノボルはソファから立ち上がると外出の支度を始めた。同様にヒメモスも支度を始める。

「よし、行くか」

「うん!」

 二人は部屋を後にした。





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