第95話『レンの魔法講座』
22日目
何故か五人全員集められた上に、レンが教師役で魔法の練習をする事になった。
レン本人曰く。
「……彼女を参加させるのは……今の練習形式じゃダメって言われた……他に手が空いてる人が居ないから指導役を引き受けた……本当は早く研究したいけど頑張る……」
とまぁ、不純な動機でレンが教師役として魔法の練習に参加するらしい。
ミーシャは色々手続きがあるので、参加出来るのは数日後になるんだとか。
ちなみに、単純に警備上の理由もあって、教師役が居ない時はミーシャは参加出来ない……と言うか城内に入れないらしい。
流石に城内で俺達しか居ない状況の中に部外者を入れるのは通常は不可能なのだが、付き添い兼監視としてそれなりの地位の人が居ればギリギリ大丈夫と言う、ゴリ押しな理由付けをした様だ。
早速授業? が開始した訳だが、最初は魔力弾の使い方の講義から始まった。
魔力弾を作り出し後に対象にぶつける手段を分類すると大体六つ。
・俺がやってる種類で魔力弾を直接操作する誘導型。
・魔力弾を直に飛ばす投合型。
・文字魔法で魔力弾に直接効果を付加して飛ばす付加型。
・文字魔法の効果を間接的に使った特殊型。
・そして、上記四種を複合させた混合型。
・最後にそれ等のどれにも属さない方法を別種型。
以上の六種に別れるらしい。
特徴としては。
誘導型は操作性に優れ応用性は高いが、持続的な魔力消費が必要な上に高い魔力制御が無いと威力が下がり途中で集中を乱すと、そのまま飛んで行きすぐに霧散する欠点がある。
投合型は魔力弾を作る魔力だけなので消費は少ないものの、魔力弾をどれだけ上手く作り込めるかによって高い威力になるか、逆に目標に当たる前に霧散して消えるかを左右される。
欠点は直接当てるので射程距離が狭い事と命中率にバラつきがある事。
付加型は魔力弾に加え文字魔法の分の魔力が必要だが、文字魔法の内容次第では威力や弾速が最も高い魔力弾になる。
欠点は文字魔法の発想次第で応用性が決まるものの、現時点では直射以外では余り意味のある応用範囲が無い事。
特殊型は魔力消費は付加型と同じ部分があるが、大抵の場合は属性魔法を合わせた魔法を主体とした方法を使う場合が多いので、こちらの方が消費量が増える代わりに広範囲攻撃になる。
欠点は魔法攻撃に追加攻撃として足す方法が殆どなので、狙って当てる事が難しく無駄になる物が多い事。
混合型は組み合わせる物によっては特色が変わるが、大体魔力消費が多めになり必要な技術も高くなる。
別種型は上記のどれにも分類されない方法全てに当て嵌まる為、これと言って定まった特色は無い。
例として上記の亜種に分類される方法があり、誘導の亜種で作り出した魔力弾を罠として活用する地雷や、特殊の亜種で風の魔法で上空に打ち上げ魔力弾を降らせる方法等が存在する。
「……魔力弾を良く使ってるから……魔力弾の説明から先にした……でも、まずは属性魔法や文字魔法を使った……普通の魔法から練習する……」
レンはそう口にすると、普通の魔法の説明を始めた。
属性魔法や文字魔法を使った普通の魔法は、属性魔法によって性質を定め文字魔法で発動させる形を作り出す方法を基本としているらしい。
単純に属性魔法だけでも、火属性で魔力弾を作れば火の玉になるし、魔力を変形させれば火の槍も作れはするが、魔法の強度が低くなり易い。
逆に文字魔法で火の玉や火の槍を作ろうとすると、変換の際に魔力が大きく消費され必要な魔力量が多くなり過ぎる。
故に通常の魔法を使う際の基本的な構成は、属性魔法で属性を文字魔法で現象を形作る、と言う様な構成で成る。
更に、火の槍であれば文字魔法で槍の形にする前に槍の形状に近い魔力弾を作れば消費魔力が減り、強度も高くなり易い。
尚且つ、火の槍に回転を加える様な事をする場合も、事前に少しでも回転をさせながら文字魔法を使えば、より回転速度が増し威力が上がるらしい。
つまりは、0の状態から文字魔法で効果を出すよりも、静止状態から文字魔法で動かすより魔力のロスが減り効果が上がるし、属性がより濃い魔力弾の方がより強いものになるんだとか。
属性魔法でより濃い属性を付けられていれば、文字魔法でより強い意味合いの効果を足せば消費魔力を抑えつつも、火であれば火力が、水であれば水量が、風であれば風力が、土であれば硬度や質量等が上げ易くなる。
「……文字魔法は……元からあるモノを増幅する使い方が……一番高い効果を得易い……同じ撃ち出すと言う意味でも……思いっ切り投げたモノと止まったモノじゃ……同じ速度を出すにはその分を補うだけの魔力が必要になる……」
つまりは、効果を足す分だけ魔力を消費するので、出来るだけ文字魔法を通す前に工夫して余分な魔力ロスを減らしましょう。
と言う事らしい。
「儂が考えた方法はどれになるんじゃろうか?」
「……? ……どんなの? ……」
「ふむ、儂の気と魔力と言うものは全く混ざらない様じゃから、こうやって……」
レンの言葉を聞くと、菊次郎爺さんが魔力弾を浮かべ。
「こうするんじゃっ!」
魔力弾を思いっ切り殴り飛ばした。
殴り飛ばした魔力弾はもの凄い速度で飛んで行き、着弾地点で轟音と共に土砂を巻き上げた。
「…………投合型に近い……けど亜種に分類されると思う……だから別種型……普通に殴ったら飛んで行く前に壊れる筈……どうやったの? ……」
「気を纏って殴っただけじゃ、気は魔力に混ざらず反発する様じゃからの」
とある漫画に出て来る拳で砲弾ブッ飛ばす爺さんを思い出すな……。
威力も大砲ブッ放したみたいな状態だし、まさかあの役に立たなかった魔力と気の融合がこんな形で再利用されるとは、予想外にも程があるわ。