第8話『魔装具の力』
「まずはフィーアから使い方を聞いて、どの様な事が出来るのか確かめるんじゃな、一通り確認出来たのなら実際に一度使って、己が持つ魔力で魔法を発動させる感覚を体験して貰うからの?」
ギュンターは真面目な口調でそう言っているが、やっぱり背を向けたままこちらに顔を見せない。
若干肩が揺れているので、笑いを堪えている様に見える。
『初回使用の為、自動で椿様のイメージから検索後、最も理解し易い表示内容に変換、自動表示を行います』
また頭の中からフィーアの声がしたと思ったら、目の前に何かが出てきた。
【固有名・佐倉椿
種族名・地球産人間種
職種・魔装式魔法少女(異世界人)
状態・平常 魔装具同調中
魔装LV・総合一 杖一 攻撃魔法一 防御魔法一 身体強化・弱一
力・九十五
頑丈・九十
速度・百
魔力・八百
魔力倍率項目・異界の者十 肉体適応二 変身演出三 変身五
総倍率・三百五十
総魔力値・二八万】
「なんだコレ……」
空中に半透明の画面が現れた。
如何にもなステータスウィンドだが、倍率と総魔力だけ場違い感が強い。
「倍率が三百五十倍って他の3人と同じ位なのか?」
「三百五十じゃと!」
「えっ! ワタシ達は二百倍だったわよ!」
ギュンターと桜が大きな声を上げて近寄ってきた、楓ちゃんや紅葉ちゃんも驚きの表情を浮かべているし、少し離れた所に居るキリエも表情は余り変わらないが耳や尻尾がピンと立っている。
「倍率の内容を教えてくれないかの? それで何が違うか分かる筈じゃ」
倍率の内容は、多分見たまんまの倍率項目って所を言えば良さそうだ。
「えーと、異界の者で十倍、肉体適応で二倍、変身演出で三倍「それじゃ!」」
「ワタシ達は変身の時の倍率は二倍だったのよ」
かなり嫌な変身シーンをやらされたけど、その分少し倍率がいいらしい。
倍率が一ヶ所だけ二から三になるだけで、凄い違いが出ている。
「魔力はどの程度になっておるんじゃ?」
魔力って言うと、恐らく単純な魔力ではなく、総魔力値の方の事だと思う、どれだけ高いのか知るのが怖い気がする。
まぁ言うけど。
「総魔力値は二八万だな」
「二八万とな? 明確な数値が出ておるのはいいが、そう言えば世界が違う性か桜君達のも感覚的に女王様よりも高い事しか今一分からんかったんじゃが」
「ワタシ達は魔力がメーター表示だったり、色だったり、擬音だったのよ」
何となく予想はしてたけど、やっぱり伝わらないらしい、最初に俺に分かり易い様に変換するとあったので、異世界人はこの世界とは違う様に表示されてるみたいだ。
「数値が出ておるなら、元の魔力はどの位なんじゃ? 恐らく魔装具の機能を使えば見ようと思えば、儂等の数値も見える筈じゃから、儂の魔力の数値も教えてくれれば、対比から判断出来る筈なんじゃが」
他人のステータスも見えるらしい、ギュンターを見ながら『ステータス出ろ』と念じて見ると。
【固有名・ギュンター
種族名・多種混血魔法種
職種・国家魔導師
状態・通常
魔導師LV・総合四十五
魔力値・二千四百】
本当に出た、流石に自分のと違って情報量は少ない。
「俺の魔力が八百で、ギュンターは二千四百って表示されてるぞ」
その言葉を聞いてギュンターは目を瞑り、しばらく無言のままだったが、目を開けると。
「女王様は儂の倍に届かぬ程度で椿君は儂の三分の一ならば、恐らく女王様は四千位じゃろう、女王様も以前の襲撃の際に魔装具を使われたが、倍率は十倍程度じゃった、つまり魔装具を使った女王様でも四万位じゃな」
「あら? 椿ちゃんの魔力を聞いてから椿ちゃんを見直したら数値で表示されたみたいね……ワタシの魔力も数値に変わってるわ、基礎魔力五百五十に総魔力十一万ですって」
「あっ……私もです! 魔力が六百で総魔力が十二万です」
「ホントだ! 僕は五百で十万だったよ!」
全員が近くに集まってきた、みんなの魔力を聞く限り俺の魔力は異世界組の中では一番高く、総魔力値に至っては一番多い楓ちゃんの倍以上になってる。
チートな感じなのは嬉しいけど、あんな変身シーンをさせられた上に、こんな姿じゃ素直に喜べない。
「他の三人もそうじゃが、椿君は今後の戦いでは主力になりそうじゃの」
馬鹿魔力の魔法使いが主力、つまり魔砲少女ですね、分かりたくありません。
某魔砲少女は好きだが、実際に魔砲少女になりたいとか全く思ってなかったよ、格好いい魔法剣士とかが良かった。
「おっと、少々脱線してしまったの、他にも色々見れる筈じゃが、実際に魔法を使う為に始めから使える初期魔法がある筈じゃから探してみてくれんかの?」
そう言うとみんな少し離れた。
最初に出たのがステータス画面みたいだったので、何となくメニュー画面が出る様に念じてみると。
【魔法 スキル ステータス 強化比率 設定 改造 変身】
それっぽい画面が出た、改造だけは黒字で他は黒枠に白地になっている。
他は後で確認する事にして、魔法の項目を頭の中で押す様に念じてみた。
【ウサギさんアタック】
表示された画面の大きさの割に、表示されたのは一つだけだった。
空欄が多いのでまだ使えるのが一つだけなんだと思う。
しかし、唯一使える魔法がこんな名前だと他の魔法も録な名前じゃ無さそうだ。
とりあえず、ウサギさんアタックを先程と同様に頭の中で押す様に念じる。
すると、また体が勝手に動き始めた。
「ウサギさんウサギさん、僕と一緒に戦って欲しいぴょん」
『ぴょん』と言うと同時に頭の上に手を乗せ、その場で跳ね首を傾げた。
なんだコレ、心の底から恥ずかしい。
魔法はちゃんと発動したらしい、何かが流れ出ていく感覚がして、体から白い魔力らしきモノが溢れ足元に集まっていくのが見えた。
魔力らしきモノが止まり、足元に半透明の白い兎が現れた。
兎は俺を見上げて首を傾げている。
「……え? もしかしてこれだけ?」
兎は俺の周りを跳ね回っているが、それだけで特に何も起こらない。
呆然としていると。
「どうしたんじゃ? 目に見える標的が無いとやりにくいのかね?」
呆然としているのを見て、ギュンターが近寄ってきた。
「いや、名前にアタックとか付いてるのに、コイツ何もしないんだけど」
ギュンターの方に顔を向けて足元で跳ね回る兎を指差した。
「疑似精霊召喚魔法の様じゃからの、どうして欲しいか伝えねば何もせぬのは当然じゃろう?」
呆れた様に言われた、そんな事知らんがな。
命令とかしないと意味がないって事らしい、何かめんどい。
とりあえず、適当に遠くを指差して言ってみた。
「あの辺を攻撃!」
兎は俺を見上げて首を傾げるだけで、全く動かない。
「動かないけど?」
ギュンターの方に顔を向け再度兎を指差した。
ギュンターも首を傾げる。
「おかしいのぅ、伝え方が違うんじゃないかの?」
伝え方、そう言われて頭に浮かんだのは召喚した際の台詞。
もしかして、あんな感じに言わなきゃ駄目なんじゃ……
『攻撃命令を伝えるには呼び方から動き、そしてお願いと言う形で伝える必要があります、更に語尾にぴょんを付けるのは必須ですプフッ』
フィーアの声が聞こえた、やっぱりアレを元にしないとダメらしい、最後明らかに笑っているが気にしない事にする。
「う、ウサギさんあの辺りを攻撃して欲しい……ぴょん」
手を頭に当て兎の耳の様にして、微妙に詰まりながらも遠くを指差して言うと、兎の目が光った。
キュピーン ググッ ピョーン
兎が身を屈めると、指差した方向に高く跳び上がり飛んでいく。
遠くに見える兎が着地すると思ったその時。
轟音が鳴り響き大爆発した。
やっぱり地の文は難しい