第87話『ミーシャとの約束』
校舎の陰でひっそりと1人飯しているミーシャを見付けて、一通りミーシャの言い訳を聞き流し、落ち着いた所で以前の約束の話を聞いた。
「あぁ、属性魔法を教えるって奴ね、平日は授業があるから夕暮れ前辺りからしか無理だけど、休日は大抵空いてるわよ……誘ってくれる相手も誘う相手も居ないし……」
最後にボソッと呟いた内容が重いよ、と言うか聞きたく無かったよ。
「で、また知らない顔ぶれだけど、誰よコイツ等?」
「顔見知り? ギル関係で一度顔を合わせただけだから、友人とは言えない程度の仲だね」
実際片方は割と馴れ馴れしいけど、大して仲良くする程一緒に居た時間があった訳でも無いし。
「え~、あたしはもっと仲良くしたいんだけどな~?」
「妥当な判断だろう、己はウィンだ、この馬鹿者はネオン、共に討伐を主体にしている」
「こっちは聞く前から何となく分かってたけど、何でアンタが人も魔獣も見境無しに魅了する男殺しと一緒に居るのよ」
ミーシャの口から思った以上に物騒な呼び名が出てきた。
以前ギルから聞いた呼び名より物騒……いやどっちも大差無いか? 何となく以前のイメージより物騒には感じるんだが。
「でも、この子には効いてないみたいなのよね~? もしかしてまだ精通前なのかしら?」
知らんがな、と言うか俺にもやってたのかよ、好みから外れてるのも理由の1つな気がするが、言わないでおこう。
「それで、貴女が男殺しの外付け良心? 思ったより普通ね」
「この馬鹿者と共に行動する際、行き過ぎだと感じた時に止めていたら何時しか呼ばれる様になった不本意な名称だ、逐一止めていたら己が面倒なのだ、故に毎回止める訳が無い」
ミーシャが興味津々に覗き込んで来るのを、ウィンが苦々しい表情をしながらネオンに目を向けた。
相当苦労させられたんだろう、ウィンがネオンに向けた目からは、かなりの非難の念が込められている様に感じられる。
それに対してネオンは……。
「ウィンったら目が怖~い、別に無理矢理してる訳じゃないんだからいいじゃないのよ~」
全く悪怯れる事無く、笑いながら返していた。
と言うか、魅力してるって割には無理矢理と言える状態じゃない訳か、欲望を増幅させるとかそんな感じであれば無理矢理じゃないと言える可能性はあるけど、実際はどうなんだか。
「言い争いすんなら余所でやってくんない? あたしは昼休みの後に授業が残ってるんだから、長々と付き合ってらんないんだけど」
愚痴混じりの説教をし始めたウィンと、笑いながら全く気にせず聞き流しながら口を挟むネオンに割り込む形で、若干蚊帳の外になっていたミーシャが文句を言い始めた。
「あぁ、すまない外野である己達が邪魔をしてしまったらしい、この邪魔な馬鹿者と共に先に学校の門の前で待っていよう」
「ちょっと~引っ張らないでよ~、あたしも一緒に残る~」
ウィンは頭を下げて謝罪すると、文句を言うネオンを強引に引摺りながら先に校門に戻って行った。
その後、明日の学校が終わる時間に校門で待ち合わせする約束をして、結構短い時間でミーシャと別れ学校を後にした。
アレ? もしかして案内が済んだ後もあの2人と一緒に居るの確定なのか?。