第84話『アレ? 結局回避の練習になっていましたか?』
派手にぶっ飛ばされ宙を舞ったが魔力を纏っていた為、割と簡単に着地出来た。
今まで以上に吹き飛ばされたものの、思ったよりダメージは無い。
魔力を纏っているにしても、多分感覚的には楓ちゃんの攻撃よりも威力は無い気がする。
等と考えていたら再度ぶっ飛ばされた。
着地しては若干の間を空けてはぶっ飛ばされ、また着地しては少しの間を空けただけでぶっ飛ばされる。
そんな繰り返しを延々と続けられたが、菊次郎爺さんの攻撃は愚か姿さえ視認出来ない状況が続く。
無駄に無駄の無い無駄に凄い技術で、宙を舞う程にぶっ飛ばされ続けても結構ダメージは無い。
無いが……何度も繰り返しぶっ飛ばされ宙を舞う性で目が回って来た。
全く視認出来ず察知も出来ないので、まず先に吹き飛ばされた時に体がクルクル回る事をどうにかする事を優先してみた。
ぶっ飛ばされてはクルクル回りながら宙を舞う事を繰り返す事、十数回。
菊次郎爺さんの姿さえ見えないのは変わらないが、徐々に宙を舞う際の回転が少なくなってきた。
目先の目標は無回転で吹き飛ばされる事だ!。
……目標が激しく低い事は気にしてはいけない、俺はあんな規格外な奴の領域に入れる訳無いやん。
何とか無回転で吹き飛ばされる事に成功した。
そして成功したついでに、どうやって吹き飛ばされているのか宙を舞っている時の視点で見る事が出来た。
空高く舞い上がってる時なので、攻撃が当たった瞬間は分からないし、距離も離れているのでくっきりは見えないが、菊次郎爺さんが掌底を突き出している姿が視界に映った。
空中は勿論の事、着地した後も目を離さなかったのに、菊次郎爺さんが消えたと思った瞬間ぶっ飛ばされてた。
幾度も繰り返して目を慣らそうと、アレが見えるまでとか実際無理じゃね?。
素で『はっ!消えグハッ!?』みたいな感じで、姿を見失ったと認識してる途中でぶっ飛ばされてたぞ。
勿論、ある意味気が抜けていた瞬間だったので、視界はグルグルと回りながら宙を舞った。
頑張った、何十回と吹き飛ばされる中で菊次郎爺さんは俺が着地してから同じタイミングで仕掛けて来る事に気付き、体でタイミングを覚え込ませた。
なので、攻撃は全く見えないながら攻撃の瞬間に力を抜き、吹き飛ばされる距離が短くなったのだ。
多分、菊次郎爺さんが威力を出さない為に発勁に近い形で、打ち込まず押し込む力しか込めて無い為、脱力状態では手応えが伝わり難くなって飛距離が落ちたんだと思う。
まぁ、着地までの時間が短くなった性で、ぶっ飛ばされるペースが上がったのは予想外だったけど。
「ふむ、少々意図してない形ではあったが、流しで及第点を出せる位にはなった様じゃな」
脱力状態による威力の軽減を繰り返していると、菊次郎爺さんが攻撃を止めて合格らしき言葉を投げ掛けて来た。
「むしろ、全然見えない攻撃を受けたり迎撃したり回避出来る訳無いだろ」
結局、最後まで菊次郎爺さんの攻撃は愚か、移動する過程さえ視認する事が出来なかった。
「見えずとも心を静め感覚を研ぎ澄ませば、自ずと分かる筈なんじゃが、お主にはまだ早かったかのぅ」
そんな武の真髄みたいな事、常識的な範囲で多少かじった程度の俺が出来る訳無いだろ。
そう言えば楓ちゃんと紅葉ちゃんは……。
「あはははっ! すごいね~全然当たらないよっ!!」
「椿ちゃんに降り掛かる危険は私が全部斬り捨てるんですっ!」
楓ちゃんの周囲を残像が残る速度で走り回り、四方八方から矢を放つ紅葉ちゃんと、それを1つ残らず斬り落とす楓ちゃんの姿が。
何かレベルが違い過ぎるんだけど。