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第83話『回避訓練スパルタ式、第3段』



 紅葉ちゃんが、これ以上矢の数を増やせないと聞いて菊次郎爺さんは考え込んでいたが、唐突に手を叩き声を上げた。


「おぉっ! そうじゃ、避けずに対応する訓練に変えればいいんじゃ」



 ちょっと待て、避けずにって回避の練習じゃ無くなってるんだけど。


「次からは矢を避けずに対処する練習じゃ、失敗しても治してやるから魔法で防いでも構わんぞ」



 手で受けるより魔法の方が出来そうだが、普通にやりたく無いわ。

 地味に頭狙われる事が多いのに、魔力弾で防ぐとかやってたら失敗した時に頭部爆破とか恐ろしい事になってしまう。



 事前に構えておくしか……と、両手を頭の高さまで上げた構えをしていると、両手の隙間を縫う様に菊次郎爺さんの手が入り込んで来てデコピンされた。


「頭部を守るのは間違っておらんが、最初から頭部以外の守りを捨てていては訓練にならんじゃろう。

 何より無手の者以外が相手では、そんな構えでは無駄死にするだけじゃ」



 だから、手を出す前に口で言うだけでもいいんじゃないっすかねっ!?。

 確かに素手同士で戦う訳じゃないのに、格闘技っぽい構えをしても付け焼き刃程度の実力じゃ意味無いだろうけどさ。


 防御すり抜けて悶える威力のデコピン叩き込み必要は無いでしょうよ。

 何となく痛く無ければ身に付かん、とか間違ってない様で根本的には間違ってそうな事を言いながら、再度デコピンされそうだから言わないけど。



 とりあえず、またデコピンされるのは嫌なので一度腕を下げた。

 流石に手を下げた状態じゃ防げない気がするので、菊次郎爺さんを見ながら徐々に腕を上げてみた。




 手を肩より上に上げるとデコピン、更に格闘技の様に手を前に出した形で構えてもデコピンされたので、手を胸の高さで肘を曲げてコンパクトに畳んだ構えに落ち着いた。

 普通に言葉で注意してくれればいいのに……五発位デコピンされたわ。



「準備は済んだ様じゃな、そろそろ始めるぞ」



 菊次郎爺さんはそう言うと、いきなり拳を目の前に寸止めしてきた。

 急だったので目を瞑ると、額に衝撃が走った。


「当てぬと言っておらんかったか? ……む? そう言えば言ってはおらんか、儂は直接攻撃はせぬから目を瞑らずしっかり見ておらぬと防げるモノも防げぬぞ?」



 唐突に飛んで来る拳に目を瞑らずにいろとか、無茶振りじゃねぇか。

 と思うものの、絶え間無く拳や蹴りが目の前に何度繰り出され、時折矢が飛んで来て受ける所か避ける暇も無く命中する。



「目を瞑らない様にせぬと、何時まで経っても防ぐ事が出来ぬぞ」


 菊次郎爺さんはそう言って、何度も繰り返し攻撃して来るが、ぶっちゃけ頑張って目を瞑らない様にしようとするが、拳や蹴りの風圧も相まって目を開けていられない。


 さっきから本当に難易度高過ぎやしないかね、ここまでスパルタな訓練は望んで無かったんだけど……。






 それから飛んで来る矢を受ける事数十回、多少は目を瞑らない様に出来つつあるが、風圧が強過ぎて薄目でしか開けられず、朧気に飛んで来る矢は見えるものの、ぼんやりとしか見えないので手を動かそうとする前に矢が当たり防ぐ事が出来ない。


 一度朧気に見えた矢に手を翳したが、割と適当な所に翳した為か普通に手をすり抜けて矢が当たった。

 どないしろと。








 何度も矢が当たる内に閃いた、風圧で目が開けられないなら魔力を使って風圧を防げないかと。


 目に魔力を集め目を魔力でコーティングするかの様に覆うと、風圧に負けずしっかりと見る事が出来た。


 むしろ、最初は見え過ぎて迫り来る拳がくっきり見えて、つい眼を瞑ってしまい普通に矢が当たってしまった。




 最初は失敗したものの、次からはしっかり眼を開けたままでいる事が出来た……だからと言って、すぐに矢を防げる訳も無く命中したが、頭部に当たる瞬間までしっかり見る事が出来た。


 魔力を目に集めると地味に動体視力も上がるらしい、矢が飛んで来る様子まで結構見えた。

 次は体の動きが追い付けばな~、と思いつつ脳天に矢が激突した。





 何度も脳天に矢を受けつつ、全く反射神経が追い付かない事に悩んでいたが、よく考えると目に魔力集めるだけじゃなく全身に纏えばいいじゃん、と思い付きやってみたら。


 あっさり飛んで来る矢が掴めた。

 今までの苦労はいったい……。





 一度成功させると、次々に矢を掴み更には菊次郎爺さんの攻撃も多少避け気味に対応していたら。

 菊次郎爺さんの攻撃を避けた瞬間、頭部に衝撃が走った。



「防ぐ事が出来る様になったのはよいが、少々調子に乗っておる様じゃな」


 全く認識出来なかったが、菊次郎爺さんがデコピンしてきたらしい。

 菊次郎爺さんが分かりやすくデコピンした体勢のままだったので分かったが、それが無ければ何が当たったのかさえ分からなかった。



「しかし、何かしらのコツは掴んだ様じゃな、最後の仕上げと行こうかの」



 菊次郎爺さんがそう言った後に、本格的に構え始めた。


「威力は加減してやるから、逸らし受け避け打ち落とし、何でも構わんから対応出来たら合格じゃ」


 次の瞬間、全身に魔力を纏っていたにも関わらず、菊次郎爺さんが動いた瞬間も分からずに、俺の視界は宙に舞った。

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