第77話『増えた原因』
毎度の事ながら、話がなかなか進まないです。
無茶苦茶蓄積魔力が増えてた。
フィーアに確認しようにも、魔装具を使う予定が無い時は機工士の宮子の所でメンテナンスやらバージョンアップをしたり、エネルギー供給や節約の為に休止状態になったりしてるらしいので、ここには居ない。
一応パートナーと接する機会を増やす為に、何もする事が無く必要となる要素は会話と言うコミュニケーションが殆どになり、パートナーが睡眠を取る為に大半は休止状態でいられる夜から朝までの時間帯は戻って来るので、夜になれば原因を聞く事が出来る。
ただ、今の時刻は昼は過ぎたけど、外はまだ明るく夜まで数時間は掛かるだろう。
ちょっと微妙な時間帯だな……ゴロゴロと過ごすには長い上に激増した理由が気になって仕方がないし、ちょっとした練習をするのも同じく気になって集中出来ない。
折角蓄積魔力が増えたんだから色々取ってみるのも、原因が分からない段階ではちょっと躊躇われる。
「増えたのが俺だけじゃないかも知れないし、先に他の4人に聞いてみるか」
暇な時間を有効活用する為にそう思い立ち、自分の部屋から出て誰かに聞きに行こうと歩き出した。
が、途中で致命的な事に気付いた。
『他の4人の部屋に行こうにも場所知らねぇじゃん』
そう、今まで自分の部屋から食堂と練習場を行き来する位で、他に行った記憶があるのはギュンターの仕事部屋と謁見室、後ついでに街に出る城門位しか覚えてないのだ……あぁ、そう言えば風呂もあったか。
誰かに聞こうにも、慌ただしく動き回る人を引き留めるのは気が引けるし、それ以外で暇そうな人は見当たらない。
そうだ、ホミュに聞こう。
そう思い付いたものの、居る場所は知らないので呼び出し用のベルがある自室に戻らないといけない。
何の為に部屋の外に出たんだろうか、と少し落ち込みつつ部屋に戻った。
「な、何か御用でしょうかっ!」
部屋に戻ってベルを鳴らしてホミュを呼ぶと、凄く緊張した様子のホミュが部屋の中に入って来た。
そう言えば、呼ぶの初めてだわ、初仕事なんだから緊張するわな。
「いや、大した用じゃないんだけどさ……他の4人の部屋に行こうとしたんだけど、場所分かんなくて困ってたんだよ」
「あれ? 桜様と菊次郎様のお部屋はお隣ですよ?」
マジか、隣なのに今まで一度も廊下で遭遇した事無いんだが。
「楓様と紅葉様は男性と女性の部屋が近いのを嫌がる場合を考えて、このお部屋の反対側にあります」
結構この城広いのに反対側って……地味に時間掛かりそうだな。
「あ~、とりあえず桜の方から行ってみるわ」
ぶっちゃけ菊次郎爺さん部屋で大人しくしてそうな印象無いし。
「楓様と紅葉様のお部屋はご案内する必要があると思いますので、桜様と菊次郎様のお部屋も一緒にご案内しますね」
助かるよ……助かるんだが、何故返事を返す前に引っ張る。
ホミュに引っ張ら……引き摺ら……連れられて隣の桜の部屋に着いた。
割と俺の部屋の扉と桜の部屋の扉の間が離れてた、まぁ室内は結構広かったしな。
「あら? 椿ちゃんじゃない? アタシの部屋に来てくれるなんて、どうしたの? もしかして寂しくてアタシに会いに来てくれたのかしら?」
そんな事実は無い。
桜に蓄積魔力が増えてるか聞いてみると。
「増えてるかって? アタシは全く増えてないわよ? 飛んで来る攻撃を防ぐ事しかしてないからかしら? 迷宮の中じゃ攻撃してなくても増えてたのに変よね」
桜は戦闘そのものには全然参加出来ない配置に居たとは言え、全く増えて無かった様だ。
ある意味予想通りだが、情報としては役に立たない。
少なくとも、侵略者の機械兵は戦闘参加で蓄積魔力が手に入る部類では無いらしい。
次は菊次郎爺さんの部屋に向かった。
「……む? 何用じゃ?」
菊次郎爺さんは部屋のど真ん中で座禅を組み瞑想していた。
菊次郎爺さんにも同様の事を聞いてみると。
「ふむ、目に見えて増えておるな……移動中に見掛けたのを、幾らか仕留めた以外は負傷者の治療しかしておらぬ筈じゃがのぅ」
菊次郎爺さんは結構増えているらしい。
本人の認識の範囲では、倒した数の割にかなり蓄積魔力が増えてる感じの様だ。
回復系なだけに、回復魔法を使うだけでも増える可能性がありそうだ。
次は紅葉ちゃんの部屋に向かう。
「あれ? 椿じゃん、どうしたの?」
紅葉ちゃんはベッドに寝転がった姿で出迎え……いや表現的にはまだしも、実質上で言えば出迎えられては居ないな。
他の二人と同様の事を聞くと。
「あ~、普通に矢を飛ばしたんじゃ効かなくてさ~、魔法で倒しまくったんだけど魔法使いまくった割に殆ど増えて無かったよ~」
機械兵を沢山倒した割に蓄積魔力は余り増えてないらしい。
しかし、桜と違い全く増えて無い訳では無い様だ。
最後に楓ちゃんの部屋に向かった。
「椿さんが来てくれるなんて……今お茶の準備をしますので座って待っていて下さい!」
何やら歓迎してくれたが、別に少し聞きたい事があるだけなので止めた。
他の3人と同じ事を聞くと。
「あぁ、私は結構倒したと思うんですけど、余り増えてはいませんでした。
恐らく機械の様な無機物は、殆ど魔力が含まれていないのではないでしょうか?」
機械兵をかなり倒したが、楓ちゃんも紅葉ちゃんと同じで倒した数の割には増えて無かったらしい。
数百は倒した筈なのに、蓄積魔力が増えた量は四桁に届かない程度だったらしく、一体に付き一桁程しか増えて無い事は分かった様だ。
さて、自室に戻って来たものの、結局分かったのは機械兵を倒したから増えた訳では無さそうだと言う事。
巨大ロボみたいな奴も仕留めたが、機械兵から手に入る蓄積魔力が低いと言う事を考えれば、巨大ロボを倒した事は余り関係無さそうだと言う事。
そして、回復で蓄積魔力が増えるっぽそうではあるが、俺がやった行動の中に類似する蓄積魔力を収得する要素は無さそうなので、俺の蓄積魔力が激増した事とは関係無さそうなので、結局原因は不明のままだ。
「行き詰まった……フィーアが戻って来るまで待つしかないか」
全くの無駄では無かったが、結局フィーアが戻って来るまで待つ事にした。
フィーアが俺の部屋に戻って来て、蓄積魔力が激増した原因を訪ねると、あっさり答えが返ってきた。
「森を広範囲に渡って破壊した為に一気に増えたのでは? 無機物とは違い樹木も生命体の一種なので多少は大気中の魔力を吸収していても不思議ではありません。
椿様の破壊活動にも多少は意味があってよかったですね?」
地味に嫌味ぶっ込んで来るの止めてくんないかな。