第75話『手伝い探し』
女王様への謁見が終わり、みんなは訓練を後回しにして、また復興作業を手伝いに街へ出掛けた。
各自手分けして手伝いをしようと探すものの、被害が少なめだったのもあるのか、一夜明けて最低限片付き手伝いが必要無かったり、既に専門の所に頼んだ後だったりと手伝いが必要な所は残って居なかった。
菊次郎爺さんだけは、負傷者の手当てと言う仕事を見付けたが、残りは全員手伝う仕事を見付けられなかった。
「どうするんだい? 見る限りみんな今日は気になって訓練何て手に付かないのは目に見えてるから、手伝える事が無いからって訓練をする訳じゃ無いんだろう?」
「でも、何をやったら良いのか分かりません」
「ギルドで依頼をやるのも、何か違うよね……どうしよっか?」
街で手伝える事は無く、だからと言って訓練しようにも気になって仕方がないし、依頼を受けるのも訓練と大差無いものが多く、そもそもお金を稼ぐ為では無いので復興関係の依頼があっても受けにくい。
と言うか、討伐以外は初心者ランクなので受けられるかも不明だ。
「そこまで詳しく知ってる訳でも無いんだから、街の中を探索しながら手が必要そうな所が無いか見て回ってみるか」
別名観光、手伝い出来そうな所を探しながらであれば問題無いよね。
「裏路地の方は行ってませんでした、そっちの方ならあるかも知れません」
俺も路地には入って無い、と言うか1人で行くと土地勘ゼロだから迷いそうだった。
「あっちの高級住宅街みたいな方にも行ってないわよね? でも、余り必要そうな印象無いし面倒なタイプが居そう」
「まぁ、向こうは貴族や富豪が多いからね、きっと使用人に任せるか専門の職人に頼んでるさ」
やっぱり向こうの無駄に広かったり豪華だったりする家が建ち並んでる辺りは、貴族だとか金持ちが住むエリアらしい。
面倒な輩に接触する確率が段違いに高そうなので、凄く近付きたく無い。
とりあえず、今度は菊次郎爺さんを除いた5人で纏まって動く事になった。
と言うか、俺と紅葉ちゃんが迷いそうなので探索を兼ねて、みんなで裏路地の方まで探す事にしたのだ。
街を路地の中まで見て回ると、色んな人種が居たので俺はステータスを覗きながら……勿論バレるリスクもあるらしいので気になる相手だけだが、街を見て回った。
最初に目に付いたのはゴブリンに似た水色の河童。
【種族名・淡水系水棲種
状態・通常】
何か前より情報量が少ない……と思ったが多分変身してないからだろう、そもそも一番知りたい種族名が分かるので問題は無い。
と言うか、やっぱりゴブリンとは違うらしい、が根本的にゴブリンのステータス見てなかったので違いは分からない。
でも、ランベルトが全く気にしてないのでゴブリンとは違うんだろう。
他にも。
【種族名・白翼種
状態・通常】
パッと見天使の様な白い翼の人。
【種族名・水棲異種
状態・通常】
人サイズの二足歩行なカエル。
【種族名・獣人(首長種)
状態・通常】
二足歩行のキリン(首を含めて3メートル位)。
【種族名・吸血種
状態・弱体(微)】
何か普通の人っぽかったので見たら違った……よく考えると普通の人間を見ない気がする。
と言うか、弱体って吸血鬼なだけに日が出てる時間帯だと弱るんだろうか?。
ある程度見回ったが、手伝いが必要そうな所は特に見付からなかった。
ん? アレは城にも居た精霊っぽい奴だな。
【種族名・中級精霊(光)
状態・従属(呪)】
「この国って奴隷制あんの?」
状態が如何にも呪われてそうな上、よく見ると首輪に見えなくも無い布を首に巻いていたので、ランベルトに声を掛けた。
「そんな訳無いだろう? 三国共通で奴隷を扱うだけで無く所有するだけでも重罪だよ」
あれ? テンプレ的展開?。
「どう見ても奴隷っぽそうな奴が居るんだけど?」
「なんだって! 何処に居るっ!?」
掴み掛からんばかりの勢いで、と言うか肩を捕まれて酷く動揺した様子で問い詰められた。
「い、今向こうの角を曲がろうとしてるのがそうだよ」
「見失わない内に追うぞっ!」
肩を掴んだ手を放したと思ったら、次は腕を捕まれて走り出した。
「で、呪われてそうな感じで従属状態になってたけど、やっぱり奴隷なのか?」
「恐らく間違いない、そもそも人を従属させる様な魔法自体が違法だ」
こっそり後を追いながら確認してみると、奴隷の可能性は高いし違っても従属状態ってだけでも違法性があるのは確実みたいだ。
と言うか、ちょっと後を付けるには人数多過ぎじゃないだろうか?。
桜や楓ちゃんは、何となく分かってるのか俺達から更に離れて、二重尾行みたいに付いて来てるが、紅葉ちゃんがちょっとノリノリ過ぎる。
近くの家を駆け登り屋根伝いに追ってるけど、俺達よりも対象に近付いてる。
いや、割としっかり身を隠しながら尾行してるからいいんだけどさ。
精霊の子を追っていると、デカい家が建ち並ぶエリアに入った。
「こっちには貴族エリアしか無い筈なんだが、まさか富豪では無く貴族が関わっているのか?」
今一違いが分からないが、デカい家の中でも貴族ばかりが住む場所に入ったらしい。
「おっ、あの豪邸に入ってくぞ?」
「そんな……彼等が関わってるだなんて……」
精霊の子が豪邸に入っていくのを見て、ランベルトが顔を手で覆い俯いている。
知り合いなんだろうか?。
「アレは我がゴールド家の分家に当たる、シルバー家だ」
あぁ、だから色々と銀色で微妙に目に悪い家なんだな、被害にあったのか一部破損してるけど。