第6話『異世界人達』
イケメンは中性的な容姿に細マッチョな体でニコニコと笑いながらこちらにウインクしている。
女の子は箱入り娘なお嬢様タイプな子と、ボーイッシュで元気そうな子だ。
自分と同じ異世界人らしき3人の後ろから、更に続いて3人のフィーアの様な作り物めいた容姿の男女が入って来た。
少し背の高い穏やかな表情を浮かべ物静かな印象の青年、鋭い目をした冷たい印象の小さな男の子、そして笑顔で元気な印象の小さな女の子だ。
異世界人らしき3人が椅子に座ると、イケメンに男の子が、お嬢様風の女の子に青年が、ボーイッシュな女の子に女の子がそれぞれ後ろに付いた。
「椿君も座らんのかね?」
そう言われて視線を向けるとギュンターも座っていたので俺も椅子に座るとフィーアが俺の後ろに付いた。
「まずはアタシから自己紹介するわよ? アタシは桐島 桜よ、年齢は22歳でバーで働いてたわ、気軽に桜ちゃんって呼んでね? 後ろの子はドライって言うのよろしくね」
イケメンな男性は桜と言うらしいが、この口調にちゃん付けとかオネェ系みたいだ。
金髪のセミロングな好青年だ……見た目だけは。
ドライと言うのは俺にフィーアが付いている様に彼に付いているんだろう。
桜に紹介されても無言のまま軽く頭を下げている。
「私は篠崎 楓です。年は14歳ですが家の方針で学校には通わず自宅で家庭教師から教わっていました、至らぬ所があるとは思いますがよろしくお願いします」
「自分はアインと申します。お嬢様共々よろしくお願い致します」
楓ちゃんが頭を下げると、先程の桜とは違いアインは自分から自己紹介して頭を下げてきた。
楓ちゃんの呼び方と言いまるで執事の様に見える。
楓ちゃんは薄茶色の髪が腰に届きそうな長さで、背は高く無いしスタイルも普通な方ではあるものの、年が若い割に成熟した体つきをしている様に見え年不相応な気がする。
「次は僕だね! 僕は相川 紅葉だよ、年は16の高校生で格闘技を色々してたんだ! 強い相手と戦えると思って来たんだけど……何か思ってたのと違うんだよね」
「あたいの紹介もしてよ! あたいはツヴァイ、よろしく!」
何か2人とも元気一杯な感じだ。
紅葉ちゃんは赤髪の短髪で、俺より背が高くスレンダーな女の子だ。
何か気になる事を言ってるけど、先に俺の自己紹介を済ませてからにした方が良さそうだ。
「俺は佐倉椿だ、年は27で……えーと、フリーターだな、こっちはフィーアだ、よろしくな」
「椿様がされずとも挨拶位、自分でしましたが?」
フィーアから憎まれ口が出てきた、何で俺の所だけこんな性格なんだろうか?
「ふむ、自己紹介も済んだ事じゃし、椿君の魔装具を試すのを先に済ませておきたいのじゃが、それでいいかの?」
「「「はーい」」」
ギュンターが促すと全員から賛成の言葉が出た。
一部意味深な視線を感じるのが気になる。
「では大規模魔法用に移動するぞ」
ギュンターが席を立ち歩き出すとみんなも席を立ち付いて行く。
一度外に出て大きな扉の前に着くと、扉の中心に普通の大きさの扉があった。
ギュンターが懐から紙を取り出すと、紙が扉に吸い込まれる様に消え普通の大きさの扉が勝手に開いた。
「最初は使う事が決まっておるから許可証があるが、次にお主らが使う時は自分で儂か宰相のサヴァン君に頼むんじゃぞ、まぁ小規模や中規模ばかりでしばらくは使わんじゃろうがの」
そう言うとさっさと中に入っていった。
ついでに言っただけで、しばらく使う事が無いから今の所は余り気にしなくていいと言う事なんだろう。
中に入ると先程の小規模とは違い、大きな扉と同じ広さの通路が広がっている。
通路の先には明るい大きな空間が見える。
通路を抜けると見渡す限りの平原が広がっていた。
建物の中の筈なのに地平線が見えるわ、空も普通に青空が広がっている。
後ろに振り返ってみると、通って来た通路以外は壁が無く、通路の左右には平原が、上には青空が広がっていた。
「ここは空間魔法が掛けられておるから、出入口の通路が損傷せぬ限りは外界には影響が及ばんのじゃ、故に如何に大きな魔法を使おうと問題無い様になっておる」
ポカーンと呆けていると、周囲から生暖かい視線を感じた、周りを見ると異世界組は『だよなー』と言わんばかりに見ているが、アンドロイド達は我関せずといった感じだ、唯一キリエだけは自慢気な表情で頷いている。
「では早速、魔装具を着けて貰おうかの」
ギュンターが懐から首飾りを取り出すと、こちらに差し出して来た。
首飾りを受けとると。
「それを着けると、まず使用者が力を使う事に適した姿に最適化されるんじゃ、本人が心から望まぬ姿には変わらぬから心配いらんぞ……多分」
逆に心配になる言葉を聞いて、異世界組の方に視線を向けると。
「僕はあんまり変わってないからなー」
そう言いながら視線を逸らす紅葉ちゃん。
「えーと……私は元の姿より成長しただけなので」
楓ちゃんは成長したらしい、確かに年齢の割に大人な感じだから納得だ、それでもやっぱり目線は剃らして気不味そうだ。
「アタシもそこまで変わってないから大丈夫よ、……自分がなりたい姿なのかは別みたいだけど……」
桜は前半笑顔で言っているが、後半は目線を剃らし小声で呟いていた。
いや聞こえてるから。
「ほれ? みんなこう言ってる事じゃし心配無いぞ?」
安心させる為かギュンターは笑顔で促す……が目が泳いでいる。
少なくとも命の危険は無さそうだし、着けないと役立たずになると思い溜め息をついて、首飾りを着けた。
その瞬間、光を放ち体が変わり始めた。
ちまちまやってたら前回からかなり時間が経ってしまいました。
次は出来るだけ期限を1週間と定めて、1週間以内に更新しようと思います。
次の話で、ある意味この話の最も特徴的な、プロローグ該当部分に入ります。