第66話『クイーン戦が終わって』
「お~凄ぇわ、魔力が一気に三千も溜まってるよ」
ボスだとどの位手に入るのか確認をしてみたら、蓄積魔力が三千程増えていた。
内訳までは分からないが、次のスキルセットを習得するのに必要な量はクイーンだと約10回分……中級まではまだまだ遠いな。
「危なかったわ、クイーンのバッタ攻撃が直線だけで助かったわね、飛び回ってたらアタシじゃ防ぎ切る自信無かったわよ」
「効かないんじゃなくて、全部避けられて全く当たんなかったよ、僕もスキル頼りにしないでもっと当てられる様に練習しなきゃだね」
少し離れた所に居た2人がクイーンとの戦いの事を話ながら合流してきた。
「私もあそこまで当たらないとは思いませんでした、それにバッタが引き返して来て背後から奇襲を受けたら、直撃を受けていたかも知れません」
更にクイーンの死亡を最後まで見届けていた楓ちゃんも加わった。
それぞれ皆、クイーン戦で反省点があった様だ。
桜の場合、飛んで来るバッタが一直線に突っ込んで来ていたから防ぎ切ったが、旋回したりして軌道が変化していたら対応し切れず。
紅葉ちゃんは何度も矢を放っていたが、1つ残らず避けきられ直撃は愚か掠りもしなかった為、2人だけでは負けていた可能性が高いと思っていたらしい。
楓ちゃんも援護に入ったものの、相手のクイーンがミスでもしない限りは、決定打を与えられないままだったと反省している。
特に、バッタによる反撃は何とか回避していたが、旋回し引き返して来ていたら被弾していた、と視野の強化を考えているそうだ。
俺の場合は反省点と言うより、どの程度まで魔力を使うか、と言った感じだが恐らく魔装具で最も強化される魔力を主体にしてる上に、防御魔法があるので咄嗟に使えさえすれば接近戦の事を考えなくてもいいからだろう。
あえて言うのであれば、高い魔力を使わずにやれる手段を考える事だが、実際魔力を増幅する魔装具で省エネを鍛えるのは畑違いだから、考えなくてもいいとは思っている。
「ねぇ、今日はもう終わりにしない? アタシはちょっとクイーンの相手にしてたら疲れちゃったわ」
「僕は疲れてはいないけど、弓の練習がしたいな」
「私も疲れてませんけど、キリエさんに練習方法を相談したいです」
桜は疲労からだが、少々早いものの全員今日の所は終わらせて戻りたい様だ。
まぁ、2度目はより手強くなる印象なので今から、もう一度クイーンに挑戦するのは論外だし、他のフロアは魔力稼ぎのルーチンワークになりそうなので、終わらせてクイーン対策を考えた方が良さそうだ。
「じゃあ今日はもう上がるか……俺もちょっと新しい魔法を試し撃ちしとかないと色んな意味で不安だしな」
ちなみに新しい魔法は【大きなハリネズミ君】と言う、予想し辛い名称だ。
大きいハリネズミと言う時点で何となく、誰かと一緒に戦う際には使い難そうなイメージしか浮かばない。
と言うか、また工夫しても味方への被害が出そうで使えない気がする。
桜なんかは、積極的に使わない様にしてるだけで桜を中心にして戦えば十分使えるし、楓ちゃんと紅葉ちゃんは多少威力が高いので自粛しているが、効果範囲は広くなく直線なので使えない訳じゃない。
それに対して、俺の場合自分も含め味方への被害が出かねない程広範囲に影響が出るので気軽には使えない。
と言うか、多少広い程度の閉鎖空間では使える訳が無い。
「そう言えばそうよね、戻ったらまずは大きい練習場を借りて新しい魔法を試して見ましょう」
桜がそう締め括って出口の方へと歩き始め、他の2人 も桜の後を追い1人取り残され掛けた。
別にリーダーっぽい事してた訳でも無いし、リーダーだと思ってた訳じゃ無いけど、仲間を置いてくなよ。