第57話『連係と言うより、視野の広さが問題?』
二番目のフロアに戻って来た俺達は、早速項目の中から出現を選択して魔獣を出すと、一度目と同じ様にミノタウルスとケンタウルスが出て来た。
が、何やら一度目とは違い、通路はそのままで閉鎖されず、2体の動きも若干違いがあって、出て来てすぐに目線を会わせると2体が横に並び戦闘体制に入った。
今までは敵意はあっても余り知能を感じさせず近付いたら突っ込んで来るだけだった事を考えると、二度目からは全く違う事になる様だ。
菊次郎爺さんが先に二度目の相手をしてたが、あっさり仕留めてたので、全く分からなかったし、最初のミノタウルス一体の時は余り違いが分からなかった。
多分、二回目からは協力する様になっているか、もしくは多少は前回を教訓に学ぶ様になってるのかも知れない。
戦闘そのものは、チームワークの練習の為に威力を抑えた為か、それとも魔獣同士で協力してる部分があったからか、結構苦戦した。
前衛で敵をえていた楓ちゃんと桜が、何度か敵の攻撃を食らったりしたのだ。
ミノタウルスの相手を抑えている最中に、背後や側面からケンタウルスの攻撃を受けたり、逆にケンタウルスを相手してる方がミノタウルスの攻撃を食らったりと、もう片方から意識を逸らしている所に攻撃して来て不意を突かれている。
今の俺達では、決め手となる力押しの部分を封じると二体でさえ不覚を取る程度と言う事らしい。
流石に二体ですら完勝出来ない状態で空を飛び回るキマイラ四体を相手にしても連係の練習にならない可能性が高いので、このまま続けて同じ相手で練習を続けた。
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何度か二体を相手に練習を続けて、不意打ちを食らう回数を減らし、更に俺や紅葉ちゃんが不意打ちを妨害して攻撃を食らわず仕留め切る頃には日が暮れる様な時間帯を過ぎた様で、菊次郎爺さんから声が掛かった。
「最低限は成果も出たようじゃし、そろそろ戻らぬか? 日の光は見えぬがもう日が沈むであろう刻限は過ぎているぞ」
菊次郎爺さんに言われて、 確認してみると既に20時になっていた。
この機能の時間を見たのは此処に入った後だから、外がどの位暗くなってるか分からないが、元の世界と同じなら真っ暗になっている様な時間だ。
「もうこんな時間だったのね、早く戻らないと心配させちゃうかしら?」
「って、僕達まだご飯食べてないよっ! 早く戻らないと!」
紅葉ちゃんはそう口にして、駆け出した。
「もうっ! 戻るならみんなで一緒にでしょ! 待ちなさいったら!」
駆け出した紅葉ちゃんに大きな声を出しながら楓ちゃんが後を追い、出て行く。
脱出の機能を使えば早いんじゃ……とは思ったが、チュートリアルから再度やり直しになった場合、地味に面倒なので歩いて出口に向かった。
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修練迷宮の入口に出ると、楓ちゃんと紅葉ちゃん、そして何故かレンが居た。
「んっ……やっと来た……」
「あれ? 何でレンだけ残ってるんだ?」
周りを見渡す限り、キリエや宮子は見当たらない。
その事に首を傾げていると。
「最後……必要……教える為……待ってた」
何やら最後何かをする必要があって、それを説明する為に残ってたらしい。
こんな小さい子を遅くまで待たせてた事に、若干罪悪感を感じる気がする。
「入った時……同じ……次入る時……必要」
そう言って指差す先には、入口の先に見える台座が……ちょっと戻ってやって来いと。
「まだ……稼働したまま……記録と停止……必須」
まだ遺跡が動いたままで、記録の保存と機能の停止が必要らしい。
使い終わったらちゃんと止めろって事だな。
「んじゃ、ちょっと行って来るわ」
【No.004__認証しました__現在一階層挑戦中です。
データを保存して終了しますか?。
Y/N】
入った時と同じ様にすると、何かゲームのセーブ画面みたいな文章が表示されたので、さっさとYESを選択する。
【データ保存中____保存しました。
お疲れ様でした__次のご利用をお待ちしています】
どうとも言い難い文章を表示して、機能を停止したらしく、周囲にある魔方陣の光が消えた。
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「お待たせ、終わったよ……アレ? レンは?」
戻って来ると、レンだけ見当たらない。
「あの子なら、椿ちゃんがちゃんと止めたのが分かったのか、少し前に帰ったわよ」
おぅ、確認したら即行帰るのかよ。
まぁ、夜も遅いし、レンみたいな子供を引き留める気は無いけど。
「そう言えば、今日貯まった分の魔力とか見てないな……まぁ後でいいか夜ご飯が先だな」
「ごっはん~、早く帰ろうよ~」
紅葉ちゃんが我慢出来ないと言わんばかりに急かすので、修練迷宮を出て城に早く戻る事にした。
勿論、途中で変身は解いたぞ。
あんな格好好き好んで見せびらかしたくないしな。