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第55話『各々の課題』


 楓ちゃんは拗ねた様子で近付いて来た。

「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか……」

「振り向いて至近距離に顔があったら普通は驚くに決まってるだろ!」


 と言うか、振り向いた後に飛び退く前に若干固まったけど、その時にただでさえ近いのに顔が徐々に近付いて来ていた気がする。


 飛び退いて無かったら、そのまま唇を奪われてたかも知れない。

 勿体ないと思わないでも無いが、そのまま暴走されたら困る、初めてがこんな姿な上、ある意味で野外のこんな所で人に見られながらとか、そんな初体験は絶対に嫌だ。


「それで、俺はもう大丈夫だけど、残り2人に手助けが必要か見てなくていいのか?」


 俺がそう言うと不思議そうな表情で首を傾げられた。


「紅葉は余裕を持って避けてるので心配いらないみたいですし、桜さんも攻撃はちゃんと防いでいますので、桜さんが自分で倒すのを諦めない限り出番は無いと思いますよ?」


 そう言われて見てみると、紅葉ちゃんは突っ込んで来るキマイラを避けて横っ腹に拳や蹴りを叩き込んでいる。

 桜は盾で受け流し、隙あらば盾で殴って攻撃していて、2人共危なげなく戦っていた。


「椿さんが一番見てて心配になる戦い方でしたよ?」


 グサッと来た…………まぁ確かに4人の中で一番身のこなしが拙いとは思ってたけど、唯一後衛の中で近接戦の経験殆ど無い素人同然だし。


「あっ、紅葉が終わったみたいですね」

「あぁ、結局素手で倒すのは諦めたのか」


 楓ちゃんの言葉を聞いて紅葉ちゃんの方を見ると、丁度キマイラの側面から矢を放ち脳天を貫いてる所だった。


 離れた位置で横たわり、矢が頭部以外に胴体にも何本か刺さっている所を見る限り、横っ腹を殴り飛ばした後に矢を放ったらしい。


「む~、やっぱり殴るだけじゃ倒しにくくてダメみたいだね~」


 しかめっ面で紅葉ちゃんがこっちに歩み寄ってきた。

 不満そうな表情なので、やっぱり格闘で倒したかったんだろう。


「紅葉はすぐに手や足を出そうとするから、紅葉の課題は弓を使った戦い方に慣れる事ですね」


「拳1つでやるのがいいんだけどな~……」

「そんな我が儘言わないの」


 何だろう……楓ちゃんが保護者に見えてきた。

 でも紅葉ちゃんの言う事も分からないでもない、俺も武器持って戦いたいわ、何だよ魔法少女って、せめて魔法使いにしろよ。


「私は今までの相手なら大丈夫そうですけど、堅い相手と戦うにはもっと炎が使える様にしないと」


「どんなのか実際に見ないと分からないけど、スライムみたいな液体状の魔獣も剣だけだとダメかもな」


「それ僕はどうしようも無いと思うんだけど」


 あぁ……途方に暮れた様に呟いた紅葉ちゃんの言葉で考え付いたが、現時点では物理攻撃が効きにくい種類の相手が出て来たら、楓ちゃんが魔法で焼く以外は俺位しか相手出来る奴が居ない。


 桜は言うまでもなく、紅葉ちゃんも弓は魔法も物理寄りだし、楓ちゃんも実際には斬撃系なので範囲は狭い。

 菊次郎爺さんは分からないけど、俺以外は物理寄りなので物理攻撃の効きが悪いと、俺がメインで戦うしかなくなるかも知れない。


「俺は魔獣の攻撃をもっとちゃんと避けられる様に身体強化を伸ばそうと思ってたけど……長所の魔法を伸ばした方がいいかもな」


「その方がいいですよ! 椿さんは私が守りますから! …………お姫様を守る王子様って言うのもいいですよね……」


 聞こえてる聞こえてる、誰がお姫様か。



「あぁもうっ! 全然倒れる気配無いじゃないのっ!」


 その時、桜の方から叫ぶ様に大きな声が聞こえた。

 やっぱり盾がメインの桜じゃ全然有効打にならない様で、割と時間が経っているが桜が相手してるキマイラは見る限り結構ピンピンしている。


「ちょっと誰か……っ……とどめ刺してくれないかしら!」


 跳び掛って来るキマイラを盾で弾き飛ばしながら、桜はこっちへ大きな声で呼び掛けてきた。


「じゃあ、俺がやるかな」


 桜の救援を受けて、早速魔力弾を浮かべて準備し始めた。

 とどめを刺すだけなので、作った魔力弾は魔装具の時に作れる通常の魔力弾、多分さっきまでのより倍以上の威力の魔力弾だ。


「ちょっと下がってろよー!」


 桜に一声掛けて魔力弾を飛ばす。

 飛ばした後に動かしやすくする為に魔力の線を伸ばした有線式の特別製だ。


 キマイラは飛んでいった魔力弾を横に跳び避けるが、有線式の魔力弾は飛ばした後も方向転換が出来るので、キマイラに向けて動かすと、避けて油断してたのかあっさり当たって吹き飛んだ。


 流石に高威力版の魔力弾でも1発じゃ仕留め切れないのか、ボロボロになりながらも立ち上がろうとしてたので、更に文字魔法で加速させた魔力弾を2発程撃ち込むと光の粒子を飛び散らせながら消えていった。



「ごめんなさいね、助かったわ、アタシじゃ仕留め切るのは無理みたいね、ちょっと時間が掛かり過ぎるわ」


 桜も合流して、早速反省会を始めた。

 桜は一応まだ余裕はあったらしいが、他の3人が終わってるのにまだまだ仕留め切るのに時間が掛かりそうだったので、諦めて声を掛けてきたそうだ。


「アタシは新しい攻撃方法が出来るまでは防御役に徹した方が良さそうね」


 全員課題点がある上、チームワークが取れるとは言い難いので、今回は恐らくボスが居るであろう最後のフロアの手前までにしておいた方が良さそうだ。


 実際はボスを倒すだけなら何の問題も無く倒せはすると思う、4人で魔装具の魔法を使って戦えば一階層のボス程度であれば余裕だろう。

 桜が攻撃を防ぎ中~遠距離で楓ちゃんに紅葉ちゃん、そして俺の3人で自重無しに最大の威力で攻撃したら簡単に倒せる。


 でも、力押しで倒しても後々苦労するだけにしかならない。

 ココは魔装具用の施設何だから、幾ら魔力の強化率の高い俺達の魔法でも簡単に倒せない魔獣が出て来ても不思議じゃない。


 そんな魔獣が出て来た時に、魔力の高さに任せた魔法で力押しをしてたら、あっさり負けてしまうだろう。


「多分、次が最後って訳じゃ無いと思うんだが、次のフロアは全員で協力して戦ってみた方が良さそうだよな」


「アタシは賛成ね、1人じゃ引き付けるのが精々で倒そうとしても日が暮れちゃいそうだわ」


 俺の提案に、いの一番で答えたのは桜だ、流石に攻撃力が足りないのに1人で戦うのは問題だと思っていたらしい。


「私もそれで構いません、椿さんを守るのは私の役目ですから」

「僕は1人でやりたいけど、さっき弓使わないとダメって言われたばっかりだからいいよ、1人でやってるとついつい手が出ちゃいそうだし」


 全員賛成の様だ。

 紅葉ちゃんはちょっと不満がありそうではあるけど、さっき言われた事からすると仕方ないと思ったみたいだし。

 楓ちゃんは何か違う様な気もするが、実際一番攻撃が当たりそうなのは俺なので否定出来ない。


「魔装具の魔法を使えばボス相手でもやれるだろうけど、火力が大き過ぎで訓練にはならないだろうから、一階層は魔法を使わずにボスを倒すのを目標に、次のフロアでちゃんと協力してやれるか確認してからボスに挑戦するか考えよう」



 3人共、割と自覚があるのか、納得した様子で俺の提案に乗ってきた。


 今日中にボスまで行きたい所だけど、ちゃんと協力してやれるか不安だ。

 特に紅葉ちゃんとか。

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